2番目に注目されたのは20時40分で、注目度77.63%。まひろが道長からのうれし過ぎるご褒美に感動するシーンだ。

まひろが執筆した『源氏物語』は、左大臣・藤原道長の期待に応え一条天皇の心をとらえた。また、まひろが物語の解説をすることによって、中宮・藤原彰子も『源氏物語』に興味を示し始める。道長の思惑は見事に当たった。「褒美である」ある日、藤壺の自室でまひろは道長から黒塗りの小箱を渡された。「は…?」「ふっ…」まひろの気の抜けた返事に道長は満足げである。「これからも、よろしく頼む」状況が飲み込めないまひろだが、部屋から出ていく道長を一礼して見送った。

道長が去ると、まひろはとりあえず小箱を開けてみた。そこには扇が入っていた。扇を結ぶひもをほどき、ゆっくりと広げる。するとその瞬間、まひろの頭の中には、はるか昔の淡い思い出が鮮明によみがえった。扇には、幼いころ河原で出逢ったまひろと道長の姿が描かれていた。「鳥が逃げてしまったの。大切に飼っていた鳥が」「鳥を鳥籠で飼うのが間違いだ。自在に空を飛んでこそ鳥だ」若き日の2人だ。扇にはあの日、大空に飛んで行ってしまった鳥も描かれている。まひろは、道長もまたあの日の出来事を、今も胸に残していることを知った。

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「道長の愛が深すぎる」

このシーンは、懐かしい名シーンの再利用にテンションが爆上がりした視聴者が、思わず画面を注視したのではないか。

まひろが書きあげた『源氏物語』は一条天皇だけでなく、彰子の興味をも惹きつけた。道長にとっては期待以上の成果を得たと言えるだろう。その感謝の意味を込めて、幼い頃の思い出を描いた扇をプレゼントするという道長のロマンチックな行為に、ネット上では、「まひろちゃんの小鳥が扇で見つかるなんて胸キュンな伏線回収!」「オーダーメイドで絵師に依頼したのか」「あんなことされたらメロメロになっちゃう」「道長の愛が深すぎる」「扇に描かれた少女の着物の柄、まひろと同じ蝶だ」と、絶賛する声であふれた。

扇は平安時代では重要なアイテムだった。貴族のステータスをあらわす装飾品として、持ち主の地位や家柄の高さを示す役割があった。高貴な女性は顔を隠すことで控えめでつつましい態度を取ったが、その際に扇を使って顔を隠すしぐさは、『光る君へ』でも頻繁に描かれている。他にも詩やメッセージを書いて相手に贈ったりという、コミュニケーションツールとしても使われた。

直接思いを伝えるのがはばかられた時代に、貴族たちは扇を通じて思いを意中の相手に伝えていた。さらに儀式にも使用され、式次第などが記されていたようだ。まさに扇は装飾品としても実用品としても、当時の貴族たちには欠かせないマストアイテムだ。

今回、道長が贈った扇は正確には檜扇(ひおうぎ)と呼ばれる。その名の通り、薄い檜(ひのき)の板を糸でつなぎ合わせて作られた扇で、板の上部はひもで補強されており、要(かなめ)という部品でまとめられ、さらに金・銀箔や飾り金具で美しく彩られている。厳島神社や佐多神社に伝わる檜扇は、国宝や重要文化財にも指定された貴重なものとなっている。