3番目に注目されたシーンは20時23分で、注目度77.57%。まひろと中宮・藤原彰子が初めて言葉を交わしたシーンだ。

まひろは道長の依頼で、彰子の住まいである藤壺に出仕して『源氏物語』を執筆することになった。しかし、藤壺での慣れない共同生活にまひろは消耗し、筆が進まない現状に思い悩む。このままでは自らに課せられた使命をまっとうできないと考えたまひろは、里に帰り、そこで執筆に励もうと決意する。まひろの考えを聞いた左大臣・藤原道長は、まひろ自身をも一条天皇の渡りの釣り餌としたい思惑もあり、頭を下げてまでまひろを引き留めたが、まひろの決意は固かった。

まひろが彰子のもとへ挨拶に向かうと、寒空の下、庭の前で1人たたずむ彰子の姿があった。「中宮様。藤式部にございます」と声をかけるが、彰子からの返事はない。「お寒くはございませぬか? 炭を持ってこさせましょう」と彰子の身を案じるまひろに、「私は冬が好き。空の色も好き」と、彰子の思いもよらない答えが返ってきた。「中宮様はお召しになっておられる薄紅色がお好きなのかと思っておりました」戸惑いながらも言葉をつなぐまひろに、「私が好きなのは青。空のような」と、彰子はか細い声で答える。その声はかなげではあるが、同時に芯の強さを感じさせる不思議な声だ、とまひろは感じた。

どうやら彰子は、まひろが思い描いていた人物像とは大きく違うようだ。「中宮様、このようなところでお風邪を召したらどうなさいます」と、1人の女房がにわかに現れ、口うるさく彰子に迫った。彰子はとたんに顔をくもらせ、黙り込んでしまった。

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「彰子さまがどんどん尊くなっていく」

ここは、彰子の意外な一面に視聴者の関心が集まったと考えられる。

上級貴族の娘たちに囲まれ、窮屈な毎日を送る彰子は、新しくやってきたまひろに他の女房たちとは違う何かを感じたのでだろうか。いつになく饒舌に自分のことを語る彰子に、まひろもまた何かを感じ取ったようだ。弟・藤原惟規(高杉真宙)に、彰子はうつけなのかと質問されたまひろは、自分がけなされたように不快に思い、即座に「奥ゆかしいだけです」と強く否定した。

SNSでも、「少しずつ自分のことを話す彰子さまから目が離せない」「彰子さまの『ないしょ』のときの笑顔が可愛いすぎる」「彰子さまはとんでもない大物だと思う」「彰子さまがどんどん尊くなっていく」「彰子さまとまひろの会話のシーン、本当によかった!」と、まひろと絡むことで新たな一面を覗かせる彰子に魅了された視聴者が続出している。

彰子を部屋の奥へと押し込めた女房は、左衛門の内侍(菅野莉央)と呼ばれる女性で、もともとは道長のもう1人の妻・源明子(瀧内公美)に仕えていた。内侍とは天皇の近くに仕えた女官で、伝言を仲介するなどの重要な任務を担っていた。『紫式部日記』によると、紫式部とは他の女房と比べて特に折り合いが悪かったようだ。

彰子に仕える女房衆は、出自などの関係で源倫子派と源明子派の2つに分かれている。倫子派に属するのが、藤式部、宰相の君(瀬戸さおり)、大納言の君(真下玲奈)、小少将の君(福井夏)。大納言の君と小少将の君は実の姉妹だ。

対して明子派に属するのが、宮の宣旨・左衛門の内侍・馬の中将の君(羽惟)で、藤壺は倫子と明子の代理戦争の場でもあるのだ。

左衛門の内侍を演じる菅野莉央は、アミューズに所属する埼玉県出身の30歳。現実の世界では、吉高由里子は事務所の大先輩に当たる。ドラマの中とはいえ、先輩の吉高をいじめるのは緊張するのではないだろうか。菅野は2007年の『風林火山』、2021年の『晴天を衝け』に続き3度目の大河ドラマ出演。出演回数では吉高より多い。彰子サロンでのまひろと左衛門の内侍は、今後どのような絡みを展開するのか非常に楽しみだ。