テレビ画面を注視していたかどうかがわかる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、7月にスタートした夏ドラマについて、初回の注目度ランキングを作成し、人気の傾向を分析した。

調査の結果、7月クールは前4月クールに比較して、初回の注目度が軒並み高いという特徴が明らかになった。『マウンテンドクター』を筆頭に、前回4月クールでトップだった『アンチヒーロー』の65.2%を上回る作品が9本も登場し、それだけ夏ドラマへの期待が大きかったということを表している。

  • 『マウンテンドクター』主演の杉野遥亮

    『マウンテンドクター』主演の杉野遥亮

厳しい環境の中で成長していく物語に共感

個人全体の1位は『マウンテンドクター』(フジテレビ/カンテレ制作)で、注目度68.4%。知られざる「山岳医療」の世界をテーマにした完全オリジナルドラマで、長野県の信濃総合病院の山岳診療科がその舞台だ。

主人公・宮本歩を演じるのは、若手実力派俳優の杉野遥亮。山での過酷な医療活動を通じて成長していく歩の姿を、杉野が繊細な演技でどう表現していくのか楽しみだ。対照的な人物像を演じるのは、大森南朋。国際山岳医の資格を持つベテラン循環器内科医・江森岳人を演じ、歩との対立を通じて過去の自身のトラウマと向き合う姿を見せる。さらに、個性豊かな脇役陣の魅力も、ドラマを支える重要な要素となっている。

この作品の魅力は、彼ら山岳医による“MMT(マウンテン・メディカル・チーム)”が織りなす重厚な人間ドラマ。さらに、山岳という非日常的な舞台設定が、都会生活とは異なる価値観や人間関係を描き出し、視聴者をその世界に引き込んでいく。初回放送では、いきなり緊迫した救助シーンが描かれ、山岳医療の過酷さと医師たちの使命感を多くの視聴者が感じたことだろう。

視聴質という観点から注目したいのは、このドラマが72.4%という高い女性注目度を記録したという点。これは杉野演じる主人公が、山岳医療という命の危険と隣り合わせの厳しい環境の中で成長していく物語に、多くの女性が共感し、その奮闘にくぎづけになったことを示している。

また、前クール同枠で放送された『アンメット』の影響も一因かもしれない。こちらも医療現場を取り扱った作品で、その最終回の女性注目度が1位を獲得していたことから、この枠への女性視聴者の関心が引き続き高かった可能性がある。それに加えて男性からの注目度も6位と高く、総合的な注目度の高さがランキング1位につながる結果となった。

雄大な自然が織りなす絶景も魅力に

長野県松本市で撮影された雄大な山岳の景色も、物語の舞台装置として欠かせない要素。杉野は「山で撮影ができること自体、贅沢だなと思っていますし、その映像美を画面を通してテレビドラマでお届けできるのはすごくうれしいです」とコメントしている。プロデューサーの近藤匡氏(カンテレ)は長野県松本市出身であり、地元を舞台にしたドラマを作りたいという熱い思いが、この企画が生まれる発端にあったそうだ。

このような長野県の雄大な自然が織りなす絶景も、『マウンテンドクター』の大きな魅力となっていることは間違いない。美しい大自然の中で繰り広げられる命と向き合う医師たちの物語が、幅広い視聴層を惹きつけたのだろう。

SNSでは「内容が分かりやすくて骨太な作品」「トラウマをひとつ乗り越えた歩くんが山岳医になり、MMTのメンバーとどう関わっていくのか?気になります」という声が見られた。山岳医療という未開拓のテーマを背景に深い人間模様を描くこの作品は、今後も注目度を高く保ち続けることだろう。