ツアー企画の経緯とこだわり、今後の予定は

ツアー終了後、クラブツーリズム鉄道部代表の大塚雅士氏に取材を行った。「185系で行く 品川⇔沼津 日帰りツアー」は、特急「踊り子」の現役時代に185系が熱海~三島間でJR東海区間に乗り入れていたことと、過去2回、東京~大垣間で夜行列車のツアーを開催(お座敷列車「華」を使用)した前例をもとに、JR東日本に申請し、承諾されたことで実現したという。

貸切列車の申請は年4回行われる。夏季の申請を行った際、当初は東京~沼津間で申請しており、実際には品川駅からの運行で許可が下りたものの、JR東海区間でも185系を使用できるとわかり、大塚氏らも驚いたという。会社間をまたぐツアーとなるため、旅行会社だからこその企画として、「売れる」と確信し、発表に至った。実際にこのツアーはSNS上で大きな反響を呼び、あっという間に満席になったという。

とはいえ、こうした依頼に対して鉄道事業者から許可が下りるかは、出してみないとわからない。JR各社だけに頼れない場合は私鉄の協力も仰ぐ。そのようにして、最近はほぼ毎週ツアーを開催している。

では、「時刻表に載らない」を実現するために、クラブツーリズム鉄道部が重視していることは何だろうか。1つ目は「通常ではありえない路線に乗る」こと。通常の旅客列車で全線完乗した人でも、貨物線に乗ることは基本的にできない。一般の列車で乗れない路線を経路に組み込むことで、マニア心をくすぐっている。2つ目は「引退する可能性のある車両を使用する」こと。鉄道ファンに人気の車両をツアー列車に使用し、ファンに喜んでもらえるツアーにしている。

3つ目は「往年の走りを復活させる」こと。今回でいえば、単に「修善寺踊り子」を再現しただけでなく、「185系の音も楽しんでほしい」というねらいから、極力アナウンスを少なくしていた。2021年に新幹線500系でツアー列車を運行した際には、「のぞみ」としての運行を終了した500系が13年ぶりに通過運転を行い、参加者らを唸らせたという。

ただし、ツアー列車の運行時間は、目安の時間こそ鉄道事業者に申請するものの、最終的には各社に任せている。ツアー自体のキャンセルも、コロナ禍の緊急事態宣言時を除いて一度も行っていない。通常の営業列車の合間を縫って、団体列車の時間を設定した鉄道事業者の労力に報いるべく、参加者が少なくてもツアーは必ず開催している。これがツアー催行率100%の数字にもつながり、参加者も安心して楽しめるようになっている。実際、どの参加者も思い思いに楽しんでいる様子がうかがえた。

最後に、ツアーを終えた直後の感想として、「お客様がルールを守って楽しんでいただいているからこそ、我々クラブツーリズム鉄道部は活動できています。今回の沼津もまさにその通りでした。本当にありがとうございました」と大塚氏。今後、開催予定のツアーについて、「10月以降も、クラブツーリズムでは185系を使用したツアーを開催する予定です。詳細はクラブツーリズム鉄道部公式Xをご覧ください」とコメントした。

  • クラブツーリズムは今後も185系を使用したツアーを開催予定だという

秋口の貸切列車の申請を行っている最中とはいえ、ある方面へのツアー運行は開催できる見通しが立っているという。9月以降の運行予定が発表されず、その後の動向が注目されている185系だが、団体列車としてはまだ運行される可能性が高い。今後の各社の発表を見ながら旅行の予定を立ててみてほしい。