声優業以外では、舞台女優としてステージ立つことが多い田中。不慣れな映像の仕事で感じた苦労も吐露する。
「演劇は約1カ月間稽古をするのでその間にいろいろと試せますが、今回の現場は2回くらい稽古をしたらすぐ本番に。もし自分が突拍子もないことをやってしまったら、相手役の方に迷惑をかけてしまいますから。例えば、花江さんと久しぶりに会ったシーンで『泣く』と台本にありまして、見ている人を笑わせたいと思って大げさに泣こうかなとも思いましたが、それでNGを出す勇気はなかったので試せませんでした(笑)」
17週からの再登板で、改めて稲のコミカルなキャラクターがわかってきたという田中は「稲さんはすごく陽気な人なんだなと。でも、最初の方ではあまり感じてなかったので、もう少し、序盤でもそういうコメディエンヌ的な片鱗を出しておけば良かったなとは思いました」と後悔も口にする。
「私の中では、17週からの稲さんは以前とちょっと印象が変わりましたが、きっと後半の稲さんの方が正解だったのかなと。最初は真面目で昔気質の人であり、女の幸せというものをちゃんと考えている人だと思いました。本当はすごく頭のいい人で、トラちゃんの思いもわかっているけど、この時代だからと諦めている。もしかしたら法律の勉強もしたかったかもしれないと感じました。でも、新潟へ行ってからは逆に、稲は愉快な人だなと感じ、役作りが変わりました」
さらに「舞台はずっとやり続けているので、ある程度の自信はありますが、映像の演技は慣れてないので、久しぶりに映像の現場に入ると、順番通りに撮らないので戸惑ってしまう。そういう意味では、舞台が一番“役者のもの”かなという気はします。演出側は本番になると、自分がどんなに嫌だと思っても役者を止められないけど、映像は撮り直せますから。でも今後も、もっと映像の仕事をやっていきたいです。まだ、新人です! みたいな感じなので」と笑う。
他にも声優の仕事と比べて、相手役とのテンポ感の取り方に苦労したと明かす。
「声優の仕事はブレスの位置が決まっています。自分が自然にしゃべるよりも合わせていく仕事だから、それが癖になっているのもマズいなと感じました。アニメや洋画の吹き替えにしても、自分ではない人のしゃべる“間”に合わせて入れていくので、自分の“間”を知らないのが声優の仕事です。だから稲役で、“間”がわからないまま台詞を入れてしまい、『しまった!』と思ったことが2、3回ありました」