激動の人生を歩み、25歳でこの世を去った定子を演じ切った高畑。

「時間でいうと10年くらいのところをこれだけ生き抜かせてもらうような役柄はそんなに多くない。これだけいろんなことが起こって、周りの環境も変わって、短いながらドラマティックな人生を歩んだ方だと思うので、私は生き切ったというか、最後までゴールテープを切ってパタッみたいな感覚で撮影を終えました」

そして、「本当に大変な人生」と定子の一生を振り返り、「ここまで大変なことになるのは時代だったり、位が高すぎた故だったり、本人がいろいろ理解できてしまう人だったからこそ苦しんだ部分も多かったのかなと思います」と解釈。「つらいシーンばっかり撮っていた時は、吉高さんに『大丈夫!? 顔やばいけど、どうしたの?』と言われて(笑)。それだけ(役に)持っていかれていたのだと思いますが、演じ終わった今は、定子さんをずっと見つめていたような感覚が残っています」と話した。

清少納言の『枕草子』の誕生が描かれたシーンも大きな話題を呼んだが、高畑は同シーンで文字の力や日本文学の素晴らしさを感じたという。

「『定子さんはそんなひどい人じゃない』と叫ぶより、文字の力というか、文字に残すことがこんなにパワーがあるのだと実感としてそこまでなかったのですが、『枕草子』が誕生するシーンを撮影し、そのオンエアを見た時に、こういう守り方があるんだなと実感として受け取れて、少納言に対して『なんてかっこいい女性なんだ』と思いました。『春はあけぼの』というくだりは私も学生時代に習っていましたが、その意味を感覚として受け取ってこなかったので、学んだ時間から何年も経って、自分がこの役をやることで日本文学って素晴らしいなと身に染みて感じられたのはすごくいい経験になったなと思います」

また、定子役が役者としてどんな経験になったか尋ねると、「いろんな役をやらせていただくたびに、それぞれの役からもらうものも大きいですが、今回は自分が学んできたものと自分の体感が一致した感覚がものすごく新鮮で、この年になってやっと日本の文化の美しさを知れたなと。そういうことを地上波のドラマで、日本でやれるのはすごく幸せだなと思いましたし、こういう作品を海外の方に見てもらえたらいいのにと思いました」と述べ、「かつて自分の中に染み込んでいた平安のなんとなくの知識と自分の感覚がハマってグッときた経験が初めてだったので、多少でも勉強しておいてよかったなと思いましたし、こういう作品に出演できたのは本当に幸せだったなと思います」としみじみと語った。

主演の吉高とは「先輩でも友人でもある関係性」だと言い、「ご本人の明るい人柄もあって、周りを楽にしてくれる人だなという印象があります。一緒にいるとふざけてしまう。それがハードな現場の中では息抜きになることもあるし、すごく寛大な人なので、そこに救ってもらえることが多いと思います」と吉高の人柄を称賛。「現場ではないところで会うといつもお互いふざけてしかないので、今回共演シーンが1シーンありましたが、お互い真面目にセリフを話しているのが笑えてきちゃうくらい、私も由里ちゃんも仕事場ではちゃんとお仕事をしているんだぞという不思議な感覚でした」と振り返った。

大河ドラマへの出演は、『軍師官兵衛』(2014)以来、10年ぶり2度目となった。

「大河に出るといつもつらい役だなと。前の時も子供を取られてしまう役だったので、いつか幸せになりたいなって思いました」と笑い、「難題に襲われる役もやりがいがあるので難しいですが……」と言いつつ、3度目の大河ドラマ出演の際には幸せな役を演じたいと話していた。

■高畑充希
1991年12月14日生まれ、大阪府出身。2005年、山口百恵トリビュートミュージカル『プレイバックpart2~屋上の天使』のオーディションでグランプリを獲得し、同舞台でデビューを飾る。以降、舞台から映像まで幅広い作品で活躍。2007年~2012年に舞台『ピーターパン』で8代目ピーターパンを務めた。2013年、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』に出演して注目を集め、2016年放送のNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』ではヒロインを務めた。近年の主な出演作は、ドラマ『にじいろカルテ』(21)、『ムチャブリ! わたしが社長になるなんて』(22)、『unknown』(23)、映画『浜の朝日の嘘つきどもと』(21)、『怪物』(23)、『ゴールデンカムイ』(24)、舞台『ミス・サイゴン』(22)、『宝飾時計』(23)など。現在Prime videoにて『1122 いいふうふ』が配信中。

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