阪急電鉄は21日、大阪梅田駅にて、京都線の座席指定サービス「PRiVACE(プライベース)」と新型特急車両2300系の出発式を行った。取材後、筆者も「PRiVACE」を利用し、大阪梅田駅から京都河原町駅まで京都線を往復した。

  • 阪急電鉄の新型特急車両2300系がデビュー。6時15分、統括駅長の合図で京都河原町駅へ向けて発車した

「PRiVACE」は阪急電鉄で初という座席指定サービス。京都線を走る特急系種別(特急、通勤特急、準特急)を対象にサービスを提供し、新型特急車両2300系と、9300系の一部編成に専用車両1両を連結する。サービス開始時点では、1時間あたり2~3本を運行し、2025年度に1時間あたり4~6本をめざす。「PRiVACE」の車内は横3列(1列+2列)のリクライニングシートを基本としており、プライベート空間を重視した。

2300系の一般車両はセミクロスシート車(ドア間に転換クロスシート、車端部にロングシートを配置)とのこと。車体前面は窓ガラスに曲面を取り入れたデザインで、疾走感を表現。車内は車いすスペースを拡大するなどバリアフリー設備を充実させ、乗務員室後方のレイアウトも変更した。

  • 阪急電鉄の関係者らによるテープカット

  • 運転士に花束が渡された

運行開始当日、5時46分に2300系が大阪梅田駅2号線へ入線。8両編成のうち、大阪梅田方4両目に「PRiVACE」車両を連結している。出発式では、運転士に花束が渡され、阪急電鉄専務取締役の上村正美氏ら関係者によるテープカットを実施。6時15分、「PRiVACE」車両を連結した2300系は京都河原町行の準特急として発車し、大阪梅田駅を後にした。

「PRiVACE」運行初日の様子は

出発式の取材後、筆者も早速、「PRiVACE」を利用。往路は大阪梅田駅を8時台に発車する準特急に乗車した。駅の入線放送に耳を傾けると、従来の放送に続いて「大阪梅田方面から4両目は座席指定車両です」と案内される。「PRiVACE」の乗車位置付近に、「PRiVACE」の予約状況を表示するモニターも設置された。阪急電鉄によれば、7月21日午前分の予約は朝6時の時点でほぼ満席とのことだった。

  • 大阪梅田方4両目に連結された「PRiVACE」車両

  • 「PRiVACE」の車内(7月8日の試乗会にて撮影)

「PRiVACE」車両の乗降扉は中央部の1カ所のみ。運行初日ということもあり、扉付近ではアテンダントに加え、社員も乗客を出迎えた。アテンダントと社員は、「PRiVACE」が座席指定車両であることを伝え、座席位置を案内していた。

今回、予約した座席は2列席の窓側。大阪梅田駅を発車する時点で、筆者が着席した区画において約8割の座席が埋まっていた。その影響もあってか、他路線と接続する十三駅や淡路駅から乗車する人は思ったほど多くなかった。

車内を見渡すと、肘掛けに設置されたコンセントで充電しつつ、スマホを操作する乗客が目立つ。飲食する乗客の姿もあった。プライベート空間を重視した「PRiVACE」では、座席上部が頭部を覆うような形状となっており、2列シートの中央に大きめのパーテーションも設置されている。そのおかげもあって、乗車中は周りの乗客のことがほとんど気にならなかった。

  • パーテーションが目立つ「PRiVACE」の座席(7月8日の試乗会にて撮影)

  • 座席に合わせた窓割が特徴(7月8日の試乗会にて撮影)

筆者が乗車した準特急は淡路駅を発車した後、茨木市駅、高槻市駅、長岡天神駅、桂駅の順に停車。アテンダントと社員は停車するたびに、「PRiVACE」車両へ乗ってきた人に向けて、この車両が座席指定車両であることを伝えていた。それを聞いて、慌てて隣の一般車両へ移る場面も散見された。このあたりは慣れの問題だろう。

準特急は特急が通過する西院駅や大宮駅にも停車する。これらの駅でも、「PRiVACE」の予約状況を表示するモニターが設置されてあった。終点の京都河原町駅まで、大阪梅田駅からの所要時間は50分弱。最終的に、「PRiVACE」を利用した人の多くが全区間を乗り通した様子だった。

ところで、以前に京阪電車の座席指定車両「プレミアムカー」を利用した際、アテンダントが案内放送を行い、車内でグッズ販売も行っていた。一方、阪急電鉄の「PRiVACE」では、乗車・降車時にアテンダントが扉付近で乗客への挨拶を行うが、走行中のグッズ販売等はなし。「PRiVACE」は車内放送も一般車両と共通となっており、アテンダントによる案内放送は行っていないようだった。個人的な感想だが、「PRiVACE」の案内放送をアテンダントが行うことで、ソフト面での特別感を出してもいいような気がする。

  • 肘掛けにテーブルが収納されている(7月8日の試乗会にて撮影)

  • 「PRiVACE」車両は中央部の乗降扉を境に2つに区分されている(7月8日の試乗会にて撮影)

「PRiVACE」を利用する際、乗車する区間の運賃に加え、座席指定料金として500円が必要。座席の予約・購入は専用サイトから行う。会員登録を行った上で予約・購入すると、ポイントが付与される。会員登録では、阪急阪神ホールディングスが提供する「HHcrossID(エイチエイチ クロスID)」を取得する。会員登録は少々面倒に感じるかもしれないが、「HHcrossID」は阪急阪神HDグループのあらゆるサービスに対応するため、IDを持っておくと便利。「PRiVACE」の予約自体は、座席を指定することもでき、レイアウトもシンプルで、使いやすいと感じた。

京都線でサービスを開始した「PRiVACE」は、シンプルな座席指定車両ではあるが、阪急電鉄らしい上質な車内空間となっていた。プラス500円の価値は十二分にある車両と言って良いだろう。