テレビ画面を注視していたかどうかがわかる視聴データを独自に取得し、分析するREVISIOでは、4月にスタートした春ドラマ最終回の注目度ランキングをまとめた。1位はTBS系日曜劇場『アンチヒーロー』だったが、このクールの人気傾向を分析していく。

  • 春ドラマ注目度1位の『アンチヒーロー』長谷川博己

    春ドラマ注目度1位の『アンチヒーロー』長谷川博己

世帯視聴率も1位獲得

大盛況のうちに幕を閉じた『アンチヒーロー』。「正義の反対は、本当に悪なのだろうか…?」という問いかけから始まったこのドラマは、初回から最終回まで視聴者をくぎづけにする展開で話題を呼び続けた。

注目度のデータを見ると、その人気ぶりが一目瞭然。初回の個人全体注目度が65.2%で1位を獲得。そのままの勢いで最終回でも1位を維持しつつ、数値も69.2%まで上昇した。この4ポイントの上昇は、ドラマの展開が視聴者を引き込んでいった証と言えるだろう。男性注目度は71.8%で1位、女性注目度も66.5%で5位と、性別を問わず高い支持を得ている。世帯視聴率も1位を獲得し、まさに4月クールのドラマでトップを飾る作品となった。

主演の長谷川博己演じる明墨正樹は、犯罪者の証拠がそろっていても無罪を勝ち取る“ダークヒーロー”として描かれ、従来のヒーロー像を覆す斬新な設定で多くの視聴者の心をつかんだ。

最終回の見どころは、何と言っても法廷シーン。明墨を証拠隠滅罪に問う裁判で、野村萬斎演じる東京地検の検事正・伊達原泰輔との対決が展開された。飯田和孝プロデューサーは「最終回の法廷シーンは38分38秒あり、法律ドラマの勝負所として重要でした」と語っている。85分の放送時間中、半分近くを占めたこの法廷シーンは、まさに見どころ満載の迫力ある内容となった。

SNSでの反応も熱狂的で、「続編絶対やろ」「アンチヒーロー最終回おもしろすぎた…」といったコメントが多数寄せられた。さらに、終了後も「アンチヒーローのない日曜寂しい」という声が上がるなど、視聴者の強い愛着が感じられる。

『アンチヒーロー』の人気は、テレビ放送だけにとどまらない。TVerやNetflixでもランキング上位に食い込むなど、配信サービスでも好調な結果を記録。特に若い層からの支持が高く、テレビ局が重視するコア視聴率でも民放春ドラマのトップを走り続けた。

悪と正義が交錯する緊迫した展開、迫真の法廷シーン、そして豪華キャストの熱演。これらの要素が絶妙に融合し、『アンチヒーロー』は2024年前期ドラマの最大の話題作に。その人気と高い注目度を考えると、続編の可能性も十分にありそうで、今後の展開にますます注目が集まりそうだ。

  • ※上記期間での最終回放送を集計
    ※対象ドラマは4月クールに放送されたプライム帯(21時~22時30分までに放送開始)のドラマを中心にピックアップ(すべてのドラマが対象となっていない)
    ※注目度は小数点第二位で四捨五入
    参考:2023年上半期におけるドラマジャンルの個人全体の平均注目度は58.7%

『アンメット』初回13位から2位まで上昇

2位には、フジテレビ系で放送された『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ制作)がランクインした。この作品は記憶障害を抱える脳外科医・川内ミヤビ(杉咲花)の成長と奮闘を描いた医療ヒューマンドラマ。講談社『モーニング』で連載中の同名漫画(原作・子鹿ゆずる/漫画・大槻閑人)を実写化したもので、過去2年間の記憶を失い、今日のことも明日には忘れてしまうミヤビが、患者を救いながら自身も再生していく姿を丁寧に描いた。

最終回では、ミヤビの命を救うため、婚約者の三瓶友治(若葉竜也)をはじめとする医療チームが総力を挙げて難手術に挑む。8分間のタイムリミットがある緊迫した手術シーンは、視聴者をくぎづけにする迫力だった。

特徴的なのは注目度の推移。初回放送時は13位と決して高くなかった注目度ランキングが、最終回では2位へと上昇して終幕を迎えた。また男性注目度が10位と上位にランクインしなかったものの、女性視聴者の間での人気が特に高く、女性注目度は1位を記録。この差も同作品の特色と言える。

これにはドラマの内容が深く関係していると考えられる。医療ドラマでありながら、ミヤビと三瓶の静かで深い愛情表現が、特に女性視聴者の心をつかんだのではないか。最終回では、ミヤビと三瓶のキスシーンや「愛してる」といった直接的な表現が描かれなかったが、むしろそれにより2人の愛の深さが伝わってくるという評価が多く見られた。

  • 『アンメット ある脳外科医の日記』杉咲花

SNS上でも大きな反響を呼び、視聴者からは「大事なシーンほどBGMや効果音を控え、役者の演技で勝負していた点が素晴らしい」「杉咲花さんのナチュラルな演技にメロメロ」「続編を期待しています」などの感想が寄せられた。世帯視聴率は5.0%で9位だったが、SNSでの盛り上がりを考えると、見逃し配信やSNSでの話題性など、従来の視聴率だけでは測れない人気があったと推測される。

『アンメット ある脳外科医の日記』は、医療ドラマの新たな可能性を示した作品と言えそうであり、視聴者の心に深く刻まれる感動と、医療現場のリアリティを両立させた本作は、今後のドラマ制作にも大きな影響を与えることだろう。