忠相役に共感するところは、「命の重さや、人が幸せであることをひたすら願うというところ」だという。

「たとえ物がなくても人って幸せなはず、という価値観です。時代劇では、友情や親子の愛情、恩義が描かれますが、やはり心の底からの思いというものは、贅沢なものを全部抜いて、一番大事なことだよねと言っている気がします。忠相は悪をバッサリいきますが、時には、温情で情状酌量の大岡裁きをしたりもします。そういう温かいところがいいですね」

相違点については少し考えたあとで「忠相はかっちりしている王道の人ですが、僕はあそこまで優等生ではないです。でも、今回は真っ当な感じの役にしようと努めました」と語った。

高橋演じる忠相の熱い眼差しも非常に印象的だが、高橋自身も「真っ直ぐに人の心の奥を見るということを心がけています。もし、いなければ想像すること、その人の心の中を真っ直ぐに見る目でいようとは思っていました」と目の演技のこだわりも明かす。

「僕は目が小さいですから」とおちゃめに言ったあとで「かといって、いろんな表情を出そうと思い、顔全体で表情を作るという芝居は、忠相においてはちょっとハマらなくて。今は自分的にはまだそういう段階じゃないと思うので、目の演技としては真っ直ぐに見ることを選択しました」と言う。

令和のSNS時代に時代劇『大岡越前』を放つ意義についても「今はSNSの発達で、はっきりした答えを求めたがる傾向にある気がします。物事を感覚的に受け止めているから、見えないものや、上手く言葉や形にできないものが認められにくくなっている。物事が部分的にフィーチャーされて持ち上げられがちですが、人間はもっといろんな面を持っているし、言葉にできないものが素敵だなと思っているので、そういうことを伝えていくことが時代劇を作る意義なのかなと思います」と持論を述べる。

さらに、「江戸の人たちが幸せに楽しく暮らしていたという文献をよく目にします。いろいろなことが整備されていなくて恐ろしかったところもあるかもしれないけど、その分、自由でおおらかな時代だったとも言えるかなと。そんな空気もドラマから伝わったらいいなと思います。何よりも時代劇好きな方に見ていただきたいし、僕も時代劇は家庭で見るというイメージがあるので、多くの方に楽しんでいただきたいです。新作時代劇がなかなか作られにくくなってきている時代なので、この作品は大事にしていけたらいいなと思い僕も参加させていただきました。本当にものすごく光栄です」と熱く語った。

「もし続けられるものならばいつまでも頑張りたい」

撮影を終えた高橋は「できることはやり切ったと思っていますが、終えてみて振り返ってみると、自分の中ではすでに課題が山積みです」と襟を正す。

「もっともっと奥深く、彩り豊かな作品にしていける要素はまだまだあるなと。今回やってみての発見もたくさんあったので、それらも自分の中に溜まってきています。また次に演じられるかどうかは、見てくださる皆さん次第なので、たくさん宣伝していただいて、広めていただけるような楽しいドラマになっているといいなとも思います」

高橋といえば、『サラリーマン金太郎』、『特命係長 只野仁』など、様々な人気シリーズで主演を務めてきたが、『大岡越前』も新たな1本になるかもしれない。

「こんなに大きい役が、そうなってくれたらうれしいとは思いますが、僕自身も大岡忠相を演じられたこと自体がまだ信じられないような感じで、ずっとチャレンジャーのような気持ちでいます。もちろん撮影はすごく楽しかったし、有意義でしたし、もし続けられるものならばいつまでも頑張りたいなとは思っています!」

■高橋克典
1964年12月15日生まれ、神奈川県出身。1993年に「抱きしめたい」で歌手デビュー。その後、俳優として本格的に活動を始め、ドラマ『サラリーマン金太郎』(TBS)、『特命係長 只野仁』(テレビ朝日)などヒットシリーズの主演を務める。近年の出演ドラマに、『正直不動産』シリーズ(22~24)、『舞いあがれ!』(22~23)、『警視庁追跡捜査係-交錯-』(23)、『大奥』(24)、映画『20歳のソウル』(22)、『世界の終わりから』(23)、『劇場版マーダー★ミステリー 探偵・班目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血』(24)、『明日を綴る写真館』(24)などがある。

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