配信作品にも負けない“生っぽい質感”の創出

――9話ラストが「初めての試み」だったとのことですが、ほかにも、これまでもドラマをプロデュースしてきた米田さんが『アンメット』で初めて挑戦していることがあれば教えてください。

たくさんありますが、「ALEXA35」という、とてもいいカメラを使っていることもその一つです。本来、民放連ドラでなかなか使えるようなものではなく、映画でも最高峰レベルの機材で。「一番いい画を撮るために何ができるか」とスタッフィングとともに模索するなかで、Yuki Saito監督(ドラマ『おっさんずラブ』など)をはじめとするいろいろな方のつながりをたどって、Yohei Tateishiさん(映画『OUT』など)という映画畑で活躍されている撮影監督や、ALEXA 35というカメラにたどり着くことができて。

――予算は大丈夫だったのでしょうか。

日々ハラハラしています(笑)。

――(笑)。なかなかない色味や風合いになっていると素人の私でも感じるのですが、ALEXA 35を使うことで、どんな画が撮れるのでしょうか。

今回の作品においては、他のカメラでは撮れない、生っぽい質感が生まれて、『アンメット』の世界観を手助けしてくれています。カメラを活かす照明がないと宝の持ち腐れになってしまうのですが、照明部には、川邊隆之さん(映画『シン・ゴジラ』など)という方に来ていただけました。まさに体験したことのないスタッフの座組で、こんなすごい方々が、まさか民放連ドラの中でも、決して大規模な予算とは言えないカンテレのドラマに参加してくださるなんて、と。見たことのない画がたくさん撮れて、配信のウインドウに並んでも負けない作品になったと思います。

――きょう17日には、10話が放送されます。見どころを教えてください。

ゲスト患者を迎えるのは10話が最後なのですが、脳腫瘍のなかで最も悪性の強いグリオブラストーマを患う、『アンメット』では初めて命に期限のある患者さんとミヤビが向き合っていきます。患者さんご夫婦の思いと、ミヤビの気持ちがリンクするエピソードになっているので、ミヤビの医者としてのあり方、三瓶との関係性に注目していただければと思います。

――ありがとうございます。24日公開の後編では杉咲さんや若葉さんはじめ、キャストの皆さんの魅力についてくわしくお話をお伺いします。

  • カンテレ 米田孝プロデューサー

■カンテレ米田孝プロデューサー
2004年4月、カンテレ入社。事業部、制作部、営業部を経て、現在はコンテンツ統括本部 制作局 制作部 部次長を務める。代表作にドラマ『僕たちがやりました』(17)、『健康で文化的な最低限度の生活』(18)、『まだ結婚できない男』(19)、『竜の道 二つの顔の復讐者』(20)、『エ・キ・ス・ト・ラ!!!』(20)、『エージェントファミリー ~我が家の特殊任務~』(21)、『恋なんて、本気でやってどうするの?』(22)など。

■『アンメット ある脳外科医の日記』第10話あらすじ
一過性健忘の症状が現れ、突如、三瓶(若葉竜也)が誰だか分からなくなってしまったミヤビ(杉咲花)。今回は軽い発作で済んだが、大迫(井浦新)は三瓶にミヤビの病状をくわしく伝えたうえで、手術するにはあまりにも危険だから絶対に手を出すなよ、と釘を刺す。数日後、絵描きの柏木周作(加藤雅也)が公園でてんかん発作を起こし、丘陵セントラル病院に運ばれてくる。最悪性の脳腫瘍を患う周作は、できる治療はすべて受けてきたうえで、もはや手の施しようがない状態。やがて周作は、徐々にこれまでの記憶も失い始め、妻・芳美(赤間麻里子)のことすら分からなくなっていく。その姿に、ミヤビは自分もこの先、何もかも忘れてしまうのだろうかと不安に駆られて……。一方、三瓶は大迫の元で見た、より精細な脳のMRI画像を思い出していた。ミヤビの記憶障害の原因は、決して人がメスを入れてはいけない領域“ノーマンズランド”にあり、無理に手術をすれば命に関わる状態。しかしこのまま放っておいて再発すれば、同じ結果を招く。ならば手術にかけるしかないのか…葛藤しながらも手術の練習に没頭する三瓶に、ミヤビはある決意を口にする。