小田急電鉄は3日、リニューアルして6月4日から運行開始する「もころん号」を報道公開した。5000形1編成(「5455」~「5055」)の外観全体にラッピングを施し、車内も「もころん」広告ジャックに加え、特定の箇所でラッピングを追加した。

  • 小田急電鉄5000形「もころん号」がフルラッピングでリニューアル。「もころん」も登場した

「もころん」は小田急線でのお出かけや沿線イベントを一緒に楽しみ、家族やこどもたちの笑顔を育むため、2023年8月にデビューした子育て応援マスコットキャラクター。旧デザインの「もころん号」は同年11月から運行開始し、沿線に子育てを見守る機運を醸成したいとの思いを込め、運転台から「もころん」が見守るようなデザインとなっていた。

旧デザインでの運行は5月31日に終了。今回のリニューアルで、前面のみのラッピングから、1編成の外観全体をラッピングしたデザインにパワーアップした。1~5号車(小田原・藤沢・唐木田方)は夕空を基調とし、側面上部に青色のラインを施した。実際に下り方面へ乗車すると、夕方には、夕日に向かって走っているようにも見られる。

  • 夕空を基調としたラッピングの下り方先頭車両(1号車「5455」)

  • 「もころん」の文字と、さまざまな姿の「もころん」

  • 1号車を2号車側から見た様子。このどこかに「隠れもころん」がいる

  • 3号車のフリースペース近くに「もころん」の紹介も

全車両にさまざまな姿の「もころん」を配置し、中央の客室窓下に「もころん」(奇数号車はひらがな、偶数号車はアルファベット)の文字をデザイン。大きく描かれた「もころん」や、本来の客室窓の横から顔をのぞかせる「もころん」などはわかりやすいが、思いがけないところにも「もころん」がいる。このラッピングのどこかに「隠れもころん」も存在するので、探すと面白いだろう。

1~5号車とは対照的に、6~10号車(新宿方)は朝の空を基調としたデザイン。上部にオレンジのラインを施した。新宿方面は小田急線で東に位置し、朝に日が昇る方角となっている。1~5号車・6~10号車でラッピングの基調が変わるため、境目となる5・6号車間で上部に配していたラインが斜めに下がり、隣の号車から色が変わって再び側面上部へ上がっていくようなデザインとなった。このように、基調となる2種類の色と、「もころん」の配置・ポーズの違いで、各車両さまざまなラッピングが行われている。

  • 新宿方先頭車両(10号車「5055」)から6号車まで、朝の空を基調にデザイン

  • 5・6号車間で色調が反転。上部のラインもここだけ斜めに下がっていく

内装はリニューアル前から引き続き、中吊り広告とドア横・荷棚上の広告スペースを「もころん」でジャック。中吊り広告に関して、奇数号車は雲のような形、偶数号車は四角形と、号車によって形が異なる。中吊り広告と袖仕切りは、外観と同様、小田原方は夕空、新宿方は朝の空を基調とした色に統一されている。座席の色は通常編成と変わらず、通常はオレンジ、優先席は青色となる。

その上で、「小田急の子育て応援車」(3号車)のフリースペースと、2~4号車間の貫通扉で、新たに「もころん」ラッピングが行われた。フリースペースは他の車両にも設置されているが、フリースペースの「もころん」ラッピングは、「子育て応援車」である3号車のみとなっている。貫通扉のラッピングは、扉の端から「もころん」が顔をのぞかせているようなデザイン。足もとにいるので、乗れた際には目を配ってみてほしい。

  • 「もころん号」の内装(写真は4号車)

  • 袖仕切りには、あの青いシルエットが…

  • 袖仕切りの左右で色が違う。ドア窓のステッカーも「もころん」仕様

  • 中吊り広告は奇数・偶数号車で形も2種類

  • 荷棚上の広告ジャック

  • ドア横の広告ジャック。荷棚上・ドア横ともにさまざまなデザインがある

前面展望が楽しむことができ、こどもたちを中心に人気の運転台後方(先頭車両の乗務員室・客室間の壁面)にも、新たな「もころん」ラッピングが行われた。このラッピングも、1号車は夕空基調、10号車は朝の空基調のカラーリングを採用している。リニューアル前から人気という、運転台への「もころん」ぬいぐるみの設置も続けられ、こどもたちのお出かけを見守るとのこと。

報道公開は喜多見車両基地で行われ、小田急が推進する「子育てしやすい沿線」への取組みについての説明もあった。昨今、問題となっている少子高齢化に際し、ファミリー世代に選ばれ、暮らしてもらえること、そして活気ある沿線をめざし、小田急は2021年8月に「子育て応援ポリシー」を策定。沿線の自治体・企業・住民と協力しつつ、子育てしやすい沿線をめざした取組みを進めている。

その一環として、2022年3月12日のダイヤ改正後、ICカードのこども料金を全区間一律50円に改定。これに合わせ、こども通学定期券や各種フリーパスの価格も引き下げた。通勤電車の3号車を「小田急の子育て応援車」に設定(東京メトロやJR線から乗り入れる車両は除く)し、親子の利用者を見守る協力を呼びかけている。その他にも、一部駅でのベビーカーシェアサービス、ベビーケアルームの導入、各種親子向けイベントなど、広く取り組んでいる。

  • フリースペースは3号車のみラッピングを追加。3号車前後の貫通扉から「もころん」がひょっこり現れる

  • 1号車の乗務員室後方は夕空基調。小田原方面らしく山もそびえる

  • 10号車は朝の空基調で、都市部のビル群が背景に

  • 運転士の隣で「もころん」も見守る

これらの背景があって、2023年8月に子育て応援を象徴するマスコット「もころん」が誕生。「子育て応援ポリシー」にもとづき、沿線に愛着を持ってもらうこと、沿線外の利用者にも、これを目的に来て楽しんでもらうことを目的に、同年11月から「もころん号」の運行を開始し、そして今回のリニューアルに至った。リニューアルは利用者からの反応も踏まえた上で、担当者間で検討し、実現したとのこと。

通常の5000形はステンレス車体に青いラインとブラックフェイスが際立ち、洗練された印象を受けるが、「もころん号」はかわいらしいフルラッピングの個性的な車両に見受けられた。「もころん号」の走行位置は、「小田急アプリ」にてリアルタイムで確認できるので、狙って見に行きたい、乗りたい場合の参考になるだろう。