現在放送中の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)で柄本佑演じる藤原道長のもう一人の妻・源明子を演じている瀧内公美。劇中では、父・源高明が失脚させられた原因を作った藤原道長の父・藤原兼家(段田安則)を呪詛する鬼気迫る姿が話題になった。初の大河ドラマとなる現場で瀧内はどのようなことを感じ、作品に向き合っているのだろうか――。

  • 源明子役の瀧内公美

大河ドラマ初出演で反響の大きさ実感「多くの方からご連絡を」

瀧内が演じる源明子の父である左大臣・源高明は、藤原兼家の策謀により失脚。大宰府に左遷され権力を失ってしまう。後ろ盾を失った明子は、兼家の三男である道長と婚姻関係になり、兼家を呪詛する。藤原家への恨みが募る明子だったが、徐々に道長の優しさに触れ、少しずつ心変わりしていくという役柄だ。

瀧内にとって初となる大河ドラマ。「いままで単館系の映画への出演が多く、上映されても劇場で観ていただく機会が必然的に少なかったのですが、NHKの大河ドラマは全国民が視聴可能な作品なので、本当に多くの方からご連絡をいただきました」と反響の大きさに触れる。

明子は、鬼気迫る思いで夫である道長の父・兼家を呪詛する。瀧内は「結構『すごい役だね』とか『恐ろしい役だね』と言われます」と笑うと「でも第22回放送で、明子が道長さんに『殿にもいつか明子なしには生きられぬと言わせてみせます』とセリフがありましたが、殿“にも”というのがすごく気になって……。すごく奥行きが深い脚本で、捉え方で変わっていく」と、今後より多面的に絵が描かれていくであろう明子への期待を明かしていた。

そんな奥行きのある明子。最初に役柄を説明する資料をもらった際、『源氏物語』に登場する「六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)のようなキャラクター」と書かれていたという。瀧内は「私は日本舞踊を習っているのですが、演目に『葵上』というのがあるので、(六条御息所が葵上を恨む嫉妬深い役というのは)知っていたんですね。ですので怨念強い、妄想が止まらない面白い女性だなと思ってイメージしました」と語る。

呪詛シーンに向けて「動画の資料などを観て研究しました」

明子が兼家を呪詛するシーンは大きな話題になった。瀧内は「私はこれまで呪詛をしたことがないので」と笑うと「やり方が分かりませんでしたが、動画の資料などを観て研究しました。なかでもやはり『陰陽師』の印象が強いので、それをイメージしていったのですが、指導の先生が『自由でいいですよ』と言ってくださって。でも『自由に』と言われても自由が分からない(笑)。そのなかで、試行錯誤してオンエアされたような形になりました」と経緯を説明した。

自身が呪詛しているシーンを観たという瀧内。「ちょっと恥ずかしいですよね」と苦笑いを浮かべ、「物語全体で、貴族の方々は基本的にすごくたおやかじゃないですか。源倫子(黒木華)さんなんか、おしとやかに猫を愛でていたり……。そのなかで呪詛するわけで。ですが(花山院を演じた)本郷奏多さんが似たような形で経をあげているシーンを拝見して、客観視するととてもやりがいのあるシーンをやらせていただいたんだなぁと思いました」と茶目っ気たっぷりに語った。

激しい情念を持つ女性を演じている瀧内だが「役に入り込むということが一切ない」と語る。常に自分が演じる役が、作品のなかでどんな役割を担っているのかを客観的に見ているというのだ。

「道長を中心に倫子さんをはじめ、いろいろな女性がいる。明子は妾なのですが、他の女性に対して“負けられない”というのがまず軸として大事なのかなとは思っています。そのなかで、倫子さんは最強だと思っていて。出自もよく人を妬むことを知らない。それが逆に怖い感じなのですが、だからこそ強すぎる(笑)。自分はその逆側としていった方がいいのかなと思っています」

柄本佑を絶賛「ただそこにいるだけで成立する人」

物語が進むにつれて、道長に対する明子の気持ちも変化していく。瀧内は「道長さんは非常に優しい人であるし、旦那さんとしては素敵な人なのですが、明子が狙っているのは、パートナーが欲しいとかではないと思うんですよね」と解釈を述べ、「いまの時代では考えられないですが、いかに男子を産めるか、そして家の地位を上げていくか。好きかどうかより、そちらが強いのかなと。その意味で、正直私は、明子が道長さんに対してどう思っているのか釈然としない中、曖昧な気持ちで演じています。好きに見えたら好きなのだろうし……。視聴者のみなさんに委ねたいですね」と語った。

道長役の柄本とは、映画『火口のふたり』でがっつりと共演した関係性だ。瀧内は「佑さんは何も言わずに一緒にいられる人。全然会話などをしなくても成立する方なので、とても楽です」と評し、「佇まいがとても素敵。ただそこにいるだけで成立する人。でもそれができる人って、高い技術を持っている方なんだと思うんです。足し算、引き算、掛け算、そしてなにもしないという選択ができる人。本当にすごい方です」と絶賛する。

明子と自身の共通点を問うと「私は、子供はいませんが、明子さんが子供のことを大切にしているところは共感が持てます。私も自分の大切なものを守るためには戦いに行くことは厭わないので」と回答。瀧内自身も「私も物事ははっきり言うタイプ。分からないことは分からないし、おかしいと思ったら『それっておかしくないですか?』と言ってしまいます。もう少し大人の振る舞いができるようになりたいです」と笑っていた。

■瀧内公美
1989年10月21日生まれ、富山県出身。2012年に本格的に女優としての活動を開始して以降、数多くの映画やドラマ、舞台などに出演。映画『彼女の人生は間違いじゃない』(2017)で第27回日本映画プロフェッショナル大賞新人女優賞、映画『火口のふたり』(2019年)で第93回キネマ旬報主演女優賞、映画『由宇子の天秤』(2021)で第20回ラス・パルマス国際映画祭(スペイン)最優秀女優賞、第31回日本映画批評家大賞主演女優賞、第31回日本映画プロフェショナル大賞主演女優賞などを受賞した。

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