成功を目指して独立しても、残念ながら、事業に失敗して廃業してしまう人も一定数いるものです。独立起業を考えている人にも、「失敗するリスクが頭をよぎってなかなか行動に移せない」という悩みがあるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、独立起業に失敗する主な原因や、失敗する人に共通する考え方をまとめました。さらに、どうすれば失敗を防げるのか具体的な対策もお伝えしていますので、独立起業を検討している人はぜひご参考にしてください。

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■独立起業に失敗する主な原因4つ

独立起業した人の多くは、一大決心をして事業を始めたことでしょう。しかし、中小企業庁によると、約2割の人が独立してから5年以内に廃業してしまうそうです。では、独立に失敗する主な原因とは何なのでしょうか。

1.事業計画を綿密に立てていない

独立起業に失敗した人の中には、「事業計画をきちんと立てていなかった」という人が多くみられます。独立するには、どのようなビジネスモデルで事業を展開するのか、投資はどのタイミングで必要かなど、中長期的な視点で事業計画を立てなければなりません。

事業計画を綿密に立てず、勢いややる気だけで独立してしまうと、不測の事態が起きた時にうまく対応できませんし、事業運営の中で何に注力すべきなのかもわからないままでしょう。結果として生産性が悪化し、事業がうまくいかなくなる可能性もあります。

2.資金計画に甘さがある

独立して事業を行ううえで、資金計画は非常に重要です。事業計画を立てたら、それをもとにした資金計画も必ず立てましょう。

資金計画では、独立に必要な初期費用だけでなく、開業後にかかる人件費や広告費なども考慮します。それに、事業がうまく軌道に乗るまでの運転資金や生活費も考えなければなりませんし、万が一、計画通りに進まなかった場合の余剰資金も必要でしょう。

資金計画をしっかり立てておかないと、資金不足に陥るなどして事業が立ち行かなくなる可能性が高くなってしまいます。独立起業には予想以上のお金がかかることを念頭に、慎重に資金計画を立てましょう。

3.初期投資が多すぎる

資金計画を立てることはもちろん重要ですが、そもそも初期投資の費用が多すぎると、資金調達が難しくなります。また、何とか開業したとしても、初期投資の分を回収するのに長い時間がかかってしまうでしょう。

初期投資に資金を費やしすぎると、運転資金まで不足し、事業がうまく回らなくなることもあります。その結果、運転資金の借り入れを繰り返して返済できないといった事態にならないよう、初期投資の費用はよく検討しましょう。

4.集客力や営業力が不足している

たとえ優れたビジネスプランや世の中に役立つ商品、サービスのアイディアを持っていても、その商品やサービスが売れない限り、利益を得ることはできません。商品やサービスを売るのに集客力や営業力は不可欠で、これらが不足していると、どのようなビジネスでも事業を成功させるのは困難と言えます。

これまでに営業職を経験した人なら、営業のノウハウや人脈などを生かせるかもしれません。一方、営業経験が乏しい人は、独立するにあたって集客や営業の方法をよく学ぶ必要があるでしょう。

■独立起業に失敗する人の考え方の傾向とは

独立起業に失敗する人には、考え方の傾向にも共通点があります。特に多くの人に見られる傾向は、以下の5つです。

1.経営的な視点が欠けている

会社員と経営者では、仕事をするうえで必要な視点や考え方が異なります。会社員の場合、会社という組織に所属していますが、その会社には、すでに人材や設備、資金、取引先、これまでの実績という経営資源がそろっている場合がほとんどでしょう。

そこでは、自分に与えられた仕事をこなすことが、「仕事ができる」とみなされたり、評価の主な対象になったりします。

一方、経営者は「仕事をこなす=仕事ができる」とはなりません。経営者は一から経営資源を積み上げていく必要がありますし、仕事を獲得して利益を生み出さなければならないからです。

もし、会社員時代に会社から評価されていても、考え方を変えないまま独立してしまった場合、事業を成功させることは難しいでしょう。経営者には、経営的な視点が不可欠です。

2.独立自体が目的になっている

そもそも起業や独立とは、「ビジネスで世の中の課題を解決したい」「自分らしい働き方を実現したい」といった想いから志すものでしょう。しかし、「会社を辞めたいから独立する」「とにかく独立できればいい」など、独立自体が目的になってしまっている人も少なくありません。

独立が目的になると、単に独立するために時間や労力を費やしてしまい、開業後のビジネスに身が入らなくなる可能性があります。また、ビジョンも明確ではないため、いざ起業しても思うような成果を挙げられないまま終わってしまうかもしれません。

3.やりがいばかり優先してしまう

「会社員時代にはできなかった、自分が本当にやりたい仕事をやろう」という想いで独立する人もいるでしょう。また、自分が起業することで、一人でも多くの人の役に立ちたいと考える人もいるはずです。

そうした情熱は素晴らしいですが、仕事のやりがいを優先しすぎてしまい、収益性やお金の管理を疎かにしてしまうのは考えものです。その結果、生活がままならなくなって不本意な仕事を引き受けることになれば、本末転倒でしょう。

やりがいは大事ですが、経営者として収益とのバランスを考えることは欠かせません。

4.リスクに対して鈍感である

ビジネスをすれば、常にリスクがついて回ります。しかし、リスクに対して鈍感だと、自分にとって不都合なことを見逃したり、過小評価したりしてしまいがちです。それが積み重なれば、経営が悪化して廃業に追い込まれるなど、取り返しのつかない事態につながることもあるでしょう。

ビジネスを成功に導くには、経営上のリスクを予測して未然に防ぐ方法や、発生したとしても被害を最小限に抑える方法を知っておきましょう。このように、リスクに鈍感にならず、正しく向き合いながらビジネスを展開していくことが大切です。

5.性格が独立に向いていない

独立起業に失敗してしまう人の中には、そもそも性格が独立に向いていなかったという人も見受けられます。たとえば、何かあるとすぐ人のせいにしてしまう、他責の傾向がある人です。自分でビジネスを行う以上、自ら経営判断を下してその責任を負う必要があります。うまくいかない時、これを取引先や従業員のせいにしてしまっては、事業を長く続けることは難しいでしょう。

また、ネガティブ思考だったり、目の前のことに一喜一憂してしまったりする人も、独立には向いていない性格と言えます。ビジネスをしていれば、経営がうまくいく時ばかりではありません。経営者には、経営が下降局面にある時でも、気持ちが引きずられることなく的確な判断を行うことが求められます。

■独立起業に失敗しないためにできる対策

独立に失敗してしまうリスクを少しでも減らすには、あらかじめ対策を講じておくことが重要です。ここでは、特に力を入れたい対策を4つご紹介します。

1.まずは副業から始めてみる

独立起業の失敗を防ぐには、まずは副業から始めてみることが非常に有効です。副業であれば、たとえ事業がうまくいかなくても、本業からの収入があるため、生活が立ち行かなくなる心配はありません。その結果、気持ちに余裕をもって思い切って事業に取り組めるでしょう。

それに、副業として試しておけば、理想と独立後のギャップに苦しむことも避けられるはずです。本業をやめて独立するタイミングを見計らうためにも、まずは副業で小さく始めてみるといいでしょう。

2.事業計画・資金計画はしっかり立てておく

先ほどもあったように、独立起業に失敗してしまう人には、事業計画やそれに基づく資金計画の作り込みが甘かった…というケースが少なくありません。事業計画や資金計画は自分のビジネスの指針となるものですので、時間をかけて慎重に作成しましょう。

それとあわせて、充分な資金を確保しておくことも大切です。ギリギリの資金では、心に余裕がなくなるだけでなく、事業展開の障壁になることもあります。自己資金だけで足りない場合は、金融機関からの借り入れや助成金・補助金の利用なども検討しましょう。

3.独立起業の目的を明確にする

独立起業すると、経営者としてさまざまな判断を迫られる局面が訪れます。その時、判断の基準になるのは、自分はなぜ独立したのかという「独立の目的」でしょう。

また、ビジネスをしているとうまくいかないことに直面する機会も多いですが、その際、「自分はなぜこの仕事をしているのか」に立ち返ると、それが事業を進める原動力になってくれることもあるはずです。

独立自体を目的にするのではなく、「なぜ独立したのか」を明確にすることで、自分が目指すべき道が見えてくるでしょう。

4.自分自身を客観視する

独立起業の失敗を防ぐには、自分自身を客観視して「現在地」を確認することも大切です。独立するためにビジネスやその準備に没頭するのは良いですが、時には立ち止まり、自分に足りないものを冷静に見極める機会も必要でしょう。

特に、経営者としての視点や集客力・営業力は独立に欠かせません。独立に必要な力を身につけるため、何をすべきか、どう補うべきか考える時間も持つようにしましょう。

■失敗を防ぐために、できる限り対策を講じておこう

金融機関などから借り入れをしている場合、事業に失敗してしまうと、借金が残り経済的な窮地に立たされることもあります。また、生活のために再就職を考えたとしても、うまくいくケースばかりではない点も知っておきたいところです。

もちろん、失敗することばかり考えては何も行動できませんが、独立に失敗してしまう原因を把握しておくことは非常に大切です。自分にできる限りの対策を講じたうえで、成功を目指して全力でビジネスに打ち込みましょう。