40代ともなると、会社で役職に就き、責任ある立場で働いている人も多いでしょう。キャリアを重ねて充実したビジネスライフを送れる年代ですが、一方で、「もっとやりがいを感じられる仕事に挑戦したい」「家族との時間を大切にしたい」と、会社員でいることに悩み「脱サラ」を検討する人も少なくありません。

そこでこの記事では、40代で脱サラする場合のメリットとデメリットを解説するとともに、脱サラ後の独立方法や40代での脱サラに失敗しないためのポイントもご紹介します。

■40代での脱サラのメリット

会社員としての経験を長く積み、家庭では、一家の大黒柱になっている人も多い40代。そんな40代が脱サラするメリットは、どのような点にあるのでしょうか。

長年の経験を生かして起業できる

40代は、長年の会社勤めで得た知識や経験、管理能力が備わっている年代であり、これらを生かして起業するには非常に良いタイミングといえるでしょう。気力や体力も充実していますし、リタイアまでにも時間があり、独立するのに有利な条件が揃っています。

特に、脱サラ後もこれまでと同じ業種で独立すれば、なおさら知識や経験を存分に発揮できるでしょう。

受ける案件や仕事量を自分で決められる

独立すれば、今後は仕事のあらゆる面を自分で決めていくことになります。どの案件を受けるのか、どのくらい働くのかなど、全てにおいて自分に決定権があります。

好きな仕事だけ引き受ける、たくさんの仕事を受注して高収入を狙う、といった働き方もできるでしょう。会社で管理職に就いていた人も、独立して働いたほうがより裁量の大きさを実感できるはずです。

本当にやりがいのある仕事ができる

40代で脱サラする理由として、「やりがい」を挙げる人は多いようです。会社で働いていると、自分の意見は言えても、それが採用される時ばかりではありません。上司や他のメンバーが決めたことを仕方なくこなしていく場面も多いでしょう。

独立すると、全てを自分でこなす大変さはありますが、自分で決めた仕事を成し遂げた時の達成感や充実感は大きくなるのではないでしょうか。やりがいがあるからこそ、次の仕事へのモチベーションにもつながるでしょう。

家族やプライベートの時間を優先できる

脱サラして自分で仕事のスケジュールを調整できるようになると、家族やプライベートの時間を優先することも可能です。「家族との時間をもっと確保したい」「もう少しプライベートを優先しながら働きたい」と考える40代の人は多いのではないでしょうか。

独立しても、全ての時間が自分の思い通りになるわけではありませんが、会社員時代と比べて融通が利く点は大きなメリットでしょう。

■40代での脱サラのデメリット

脱サラにはメリットがある一方、もちろん、デメリットも存在します。以下に挙げるデメリットを把握し、そのうえで脱サラを検討しましょう。

厚生年金や福利厚生、ボーナスなどを手放す

脱サラして会社員でなくなると、会社で加入している厚生年金を抜け、福利厚生や各種手当、ボーナスなどを手放さなければなりません。

また、会社員の場合、業務によって病気になったり、障害を持ったりした場合に給付が受けられる「労災保険」、失業した時に給付が受けられる「雇用保険」がありますが、脱サラすると、原則としてこれらを受ける権利がなくなります。

そのため、将来の老後資金を自分で多めに貯めたり、病気やケガで働けなくなった時のために貯金や保険で備えたりする必要があるでしょう。

収入や社会的信用が不安定になる

脱サラすると、会社員の時とは違い、毎月安定した給料がもらえるわけではありません。頑張った分だけ収入が増える可能性はありますが、取引先の都合などで仕事量が減ってしまうこともあるでしょう。

また、会社員でなくなると、社会的信用が低くなり、住宅ローンを組んだりクレジットカードを作ったりすることが難しくなる場合も考えられます。特に、脱サラ後は収入が不安定になるため、マイホームの購入については退職前によく検討しておきましょう。

経理業務や税金の支払いを自分でしなければならない

会社員でなくなると、税金の管理や支払いの負担も増えます。会社員であれば、会社が年末調整や、税金・社会保険料の支払いを代わりにしてくれますが、脱サラ後は、これらを全て自分でしなければなりません。

脱サラ後に支払う税金には、所得税や住民税、消費税、個人事業税などがあります。これらの税金を正しく納税するためには、日々帳簿を付けて売上や経費を管理し、自分で確定申告を行います。

独立すると、直接収入につながる業務をこなすだけでなく、それにともなって経理業務が必要になることも知っておきましょう。

■脱サラ後の主な独立方法は4つ

40代の人に限った話ではありませんが、脱サラを成功させるには、自分に合う方法で独立することが大切です。主な独立の方法として、以下の4つをご紹介します。

1.個人事業主

脱サラして独立するには、まず「個人事業主になる」という方法があります。個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を営む人のことです。手続きは法人と比べて簡単で、税務署に「開業届」を提出すれば、個人事業主として事業をスタートできます。

「脱サラした後は、個人事業主で働くか、法人を設立するか」で悩むかもしれませんが、最初から大きな売上が見込める場合を除き、はじめは個人事業主から始めるのがいいでしょう。法人を設立するには、手間もお金もかかるためです。また、所得が低いうちは個人事業主のほうが税金の面で有利になる、という理由もあります。

まずは個人事業主として独立し、売上が伸びて所得も高くなってきたら法人化すると、金銭面でも負担が少ないでしょう。

2.法人

2つめは、「法人登記をして法人化する」という方法です。法人を設立するには、登記や定款などの作成が必要ですし、事業開始までの費用も合同会社で10万円程度、株式会社で25万円程度かかります。開業届の提出だけで済む個人事業主と比べると、手続きが煩雑で費用もかかる点がネックになります。

ただし、税金の面では、売上が伸びて所得が高くなると、法人のほうが有利です。個人事業主の場合、「累進課税」が適用され、所得が高くなるほど高い税率が課されます。最も高い場合だと、所得税、住民税で50%を超えてしまいます。

一方、法人の場合はある程度税率が決まっていて、法人税と法人住民税を合わせておよそ30%前後です。赤字になっても最低7万円の税金はかかってしまいますが、売上が多くなれば、法人化したほうが得になる可能性があります。

また、法人は個人事業主と比べて、社会的信用度が高くなるというメリットがあります。新規契約を結ぶ際や事業資金の借り入れをする時は、法人のほうが有利になりやすいでしょう。

3.フランチャイズ

3つめとして、「フランチャイズに加盟する」という独立方法もあります。フランチャイズとは、フランチャイザーと呼ばれる本部とフランチャイズ契約を結び、経営に必要なノウハウや商品、サービスの提供を受け、その代わりにロイヤリティ(フランチャイズ利用料)を支払うシステムのことです。

フランチャイズは、コンビニや飲食店、学習塾、ハウスクリーニングなど、あらゆる業種で取り入れられています。

フランチャイズのメリットは、経営やその業界が未経験でも、本部のサポートを得ながらスムーズに独立できる点です。また、自分で一から起業するより資金が抑えられるケースが多く、本部の持つ知名度やブランド力を活用し、早いうちからビジネスを軌道に乗せることも可能です。

一方、ロイヤリティの支払いが負担になる場合もある点、経営の自由度が低い点はフランチャイズのデメリットといえるでしょう。

4.事業を継ぐ

脱サラ後の独立方法としてはあまりなじみがないかもしれませんが、「事業を継ぐ」という選択肢もあります。

事業を継ぐ方法としては、前経営者のもとで働いていた役員や従業員が後継者となる「社員承継」、また、外部の第三者から後継者を募る「第三者承継」などがあります。

また、あくまで親が事業者である場合に限られますが、脱サラして家業を継ぐことも一つの方法です。

個人事業主や法人設立、フランチャイズのほかにもこのような独立方法があることを知り、興味があれば検討してみましょう。

■40代での脱サラに失敗しないためには

脱サラのリスクは、決して小さくありません。いざ脱サラしてから失敗して後悔しないよう、事前にできることは必ず確認しておきましょう。最後に、40代での脱サラに失敗しないためのポイントをご紹介します。

会社に悪い印象を与えず退職する

会社を退職する際は、できるだけ悪い印象を残さないことが大切です。退職について上司と揉める、引継ぎを適当に行って評判を落とすなど、悪い印象のまま退職してしまうと、社内だけでなく業界内でマイナスなイメージが広がる恐れがあります。

特に、脱サラ後に会社員時代と同じ業種で独立する場合、悪い評判がたっていると順調なスタートは切れないでしょう。反対に、上司や会社と良好な関係を保ったまま退職すれば、仕事を回してもらえることがあるかもしれません。

「どのような形でも退職すれば同じ」とは考えず、少しでも良い印象を残して退職することを心がけましょう。

計画的に貯金し、生活費を見直しておく

脱サラ後は収入が不安定になりますので、退職前から計画的に貯金しておきましょう。まず、独立してもすぐには充分な収入が得られないことも踏まえ、3ヶ月~半年程度の生活費を確保したいところです。また、独立すれば傷病手当金などの給付もなくなりますので、病気やケガをした時の生活費、医療費も備えておきましょう。

さらに、事業が軌道に乗るまでの当面の運転資金も必要です。これらの資金がどの程度かかるのかあらかじめ計算し、計画的に貯めていきましょう。

そして、独立後に収入が不安定になることを考えれば、今から生活費を見直し、支出を抑える工夫が必要かもしれません。生活費をコンパクトにしておけば、その分独立後のプレッシャーも軽減されるでしょう。

クレジットカードの作成を済ませ、住宅の購入を検討しておく

先ほどもありましたが、脱サラして会社員でなくなると、社会的信用が下がり、クレジットカードの作成や住宅ローンを組むことが難しくなります。そのため、会社員のうちに、クレジットカードを作成しておき、住宅など高額な買い物も検討しておくと安心です。

税制の理解を深めておく

独立すると、経理業務や税金の支払いを自分で行うため、税制への理解は欠かせません。個人事業主になったり法人を設立したりした時はどのような税金を支払うのか、確定申告はどのように行うのか、あらかじめ知っておきましょう。

いざ独立すると、事業を軌道に乗せるために忙しく、税制の理解まで手が回らないという状況も考えられます。会社員のうちに税金や、日々の売上管理の方法などについても把握しておきましょう。

■脱サラのデメリットも理解し準備万端で臨もう

40代は、これまでに得た知識や経験を生かして脱サラするのに向いている年代といえるでしょう。一方で、長年会社で働いてきたキャリアや安定を手放し、独立することにはリスクもあります。

脱サラを検討している場合は、脱サラのデメリットもよく理解するとともに、独立に失敗しないよう準備万端で臨みましょう。