『別冊少年マガジン』(講談社)で11年半にわたり連載された諌山創氏原作の漫画『進撃の巨人』は、人間の捕食を繰り返す巨人と人類の戦いを描いたダークファンタジー作品です。

「人類が巨人に食べられる」という衝撃的な世界の物語ですが、作中には通常種と奇行種の2タイプに分類される「無垢の巨人」や、特別な能力を有する「九つの巨人」が登場しました。

本記事では、『進撃の巨人』に登場する巨人の種類、九つの巨人の能力や特性、無垢の巨人の特徴などを紹介します(本記事はネタバレ要素を含みます)。

巨人とは

作中における巨人とは、人間に近しい姿をしており、知性や生殖器官を持たず、人間を食らうことだけを行動原理として動き回る3メートル以上の巨体のことを指しています。

人間がいない環境下で100年以上生きていたことから、生命維持のために人間を食べているわけではないのは明らかですが、発生原因や繁殖方法などは不明。全容の大半が謎に包まれたままの生命体として登場しました。ただ、物語が進むにつれ、実は巨人の正体は人間であることが判明します。

九つの巨人とは

「九つの巨人」とは、人類で初めて巨人化能力を手に入れたユミル・フリッツの死後、九つに分割された彼女の力を継承した巨人たちのことです。「始祖の巨人」「進撃の巨人」「超大型巨人」「鎧の巨人」「女型の巨人」「獣の巨人」「車力の巨人」「顎の巨人」「戦鎚の巨人」の9体で、ユミルの子孫であるエルディア人(通称:ユミルの民)しか継承できません。

巨人化能力を継承した人間は、巨人の力を手に入れる代償として継承から13年で寿命が尽きます。自らの意志で巨人化・人間化が可能な九つの巨人は、知性と固有能力を有した特別な巨人です。

『進撃の巨人』の巨人の種類一覧

上述のように、『進撃の巨人』には始祖ユミルから受け継いだ特別な能力を有した9体の巨人が登場します。ここからは、その9体の巨人たちが持つ能力や、歴代の巨人の力の継承者たちを紹介します。

始祖の巨人

特徴 始祖ユミルの死後、歴代フリッツ王とレイス家により継承されてきた巨人。ユミル・フリッツ直系の子孫が始祖の巨人を継承すれば、エルディア人と全巨人の支配や記憶の書き換え、人体構造の操作などが可能
身長 13メートル
歴代の保有者 ウーリ・レイス→グリシャ・イェーガー→エレン・イェーガー

すべての巨人の頂点に立つ始祖の巨人は、ユミルの民と全巨人を支配し、意のままに操ることが可能です。さらに、記憶の改ざんや人体の構造を変えるなどチート級の能力も所有しています。しかし、これらの能力は始祖であるユミル・フリッツの血を継承する人間にしか発揮できません。

また、始祖の巨人の能力による影響を受けるのはエルディア人のみで、他民族や他国民の支配は不可能です。ただし、記憶や身体構造を守れたとしても人類が太刀打ちできないことに変わりはありません。

進撃の巨人

特徴 いつの時代も自由のために前へ前へと進み続けた巨人。記憶の共有が可能で、過去を知るだけでなく、次世代の継承者の記憶から未来を知ることもできる
身長 15メートル~
歴代の保有者 エレン・クルーガー→グリシャ・イェーガー→エレン・イェーガー

進撃の巨人の特性は、ほかの継承者の記憶を共有できること。巨人化能力を継承した者は、前の継承者を捕食することで彼らの記憶を取り込みますが、進撃の巨人だけは次世代の継承者の記憶、つまり未来も知ることができます。

しかし、継承者が希望する記憶を自由に見られるような便利な能力ではなく、一方的かつ部分的に未来の記憶が送り込まれる感覚に近いようです。さらに、未来を変えることは絶対にできません。ほかの巨人とは異なり、戦闘面に直結しない珍しい能力です。

獣の巨人

特徴 生物の姿や特性を受け継ぐ巨人。ジークが継承したことで初めて特殊な力が発揮されたが、本来は目立った能力や取り柄はない。どのような生物を模した巨人になるかは、継承者により異なる
身長 17メートル
歴代の保有者 トム・クサヴァー→ジーク・イェーガー

前任者のクサヴァーは羊、次の継承者であるジークは猿を模した巨人となりました。突出した能力はなく、さほど評価されていませんでしたが、ジークに流れる王家の血により無垢の巨人を月夜でも行動させられるようになっています。また、ジークの脊髄液を取り込んだユミルの民を、叫びにより無垢の巨人へ変えることも可能です。

継承したのがジークでなければ無垢の巨人に干渉できなかっただけでなく、猿以外の生物を模した巨人になっていたかもしれません。

超大型巨人

特徴 規格外の巨体であらゆる物を踏み潰す巨人。ほかの巨人の機動力には劣るものの、破壊力は桁違い。筋肉を燃やして放出する熱風は周囲に人を寄せつけず、対人戦を不得意とする欠点をカバーできている
身長 60メートル
歴代の保有者 ベルトルト・フーバー→アルミン・アルレルト

俊敏な動きはできませんが、身体からは常に高熱の蒸気を放出しており、立体起動装置による人類の接近を許しません。意図的に熱風の威力を上げることも可能で、接近した人間を丸焦げにするほどの火力があります。しかし、熱風の放出には筋肉の燃焼が必要になるため無限には使えず、持久戦には向きません。

一蹴りで巨大な壁を壊せる超パワーもさることながら、巨人化する瞬間に放たれる爆風もまた、一瞬で広範囲を破壊できる立派な武器です。

鎧の巨人

特徴 マーレの盾となる鎧の巨人は、全身を硬質化したまま動き回ることが可能。巨人共通の弱点であるうなじも硬い皮膚で覆えるため、防御力の高さはトップクラス
身長 15メートル
歴代の保有者 ライナー・ブラウン

鎧のように硬い皮膚は、調査兵団の武器である超硬質ブレードの攻撃にも耐えられます。そのため急所を守りながら自由に戦えますが、関節部分の硬質強度の弱さが欠点です。

硬質化の硬さには限度があり、技術力の向上により新たに導入された雷槍には苦戦していました。とはいえ、硬質化に特化した鎧の巨人が壁に体当たりすれば、扉など簡単に破壊できます。

女型の巨人

特徴 ほかの巨人の一部を取り入れることで、その巨人の能力が発現しやすい特性を持つ汎用性の高い巨人。この特性により女型の巨人は「部分的な硬質化」「水晶化」「無垢の巨人を呼び寄せる叫び」などの能力を発揮させている
身長 14メートル
歴代の保有者 アニ・レオンハート

調査兵団との戦いの際に見せた、肉体の一部の硬質化や小規模な叫びの能力は、過去にほかの巨人の一部を取り込んだことで発現できるようになりました。捕獲されたアニが自身の身を水晶化して守れたのも、同じ理由です。

レベルは下がるものの複数の巨人の能力を使えるようになるため、戦闘スタイルが豊富で実戦に向いています。さらに、アニが女型の巨人を継承したことで、汎用性の高さに格闘技術が上乗せされました。

顎の巨人

特徴 強靭な顎と爪が特徴的な小柄な巨人で、素早い動きや小回りが得意。鋭い爪は相手を攻撃するだけでなく、壁や建物を登る際にも活用でき、強襲に適している
身長 5メートル
歴代の保有者 マルセル・ガリアード→ユミル→ポルコ・ガリアード→ファルコ・グライス

硬質化をも砕く強靭な顎と爪、機動力の高さが強みの巨人。小柄な体格を生かした強襲を得意としていますが、攻撃は「かみ砕く」「引っかく」と単調で、攻撃力が特別高いとは言えません。

また、ほかの巨人に比べると防御力がやや劣るため、混戦や長期戦よりも不意打ちが狙える短期決戦の方が向いています。

車力の巨人

特徴 長期間の巨人化が可能な持続性を備えた、四足歩行型の巨人。長距離移動に適しているため、武器や物資の運搬も担当している。自らが武器を背負い移動すれば、移動式兵器としても活躍可能
身長 4メートル
歴代の保有者 ピーク・フィンガー

2カ月もの長い期間、巨人の姿を維持できるほど持続性が高い巨人。物資の運搬や仲間の救出など、サポート的な立ち回りを得意としています。

防御力はそこまで高くないものの、巨人化解除後すぐに再び巨人化でき、継承者本人がやられない限り何度でも繰り返し変身できる特性を持ちます。また、巨人の姿のまま人間の言葉を話せるため、意思疎通も可能です。

戦鎚の巨人

特徴 マーレの最高権力者であるタイバー家が代々継承する巨人。硬質化の応用により戦鎚や槍、弓などの武器の創造が可能。ほかの巨人と異なり、継承者はうなじ以外の場所から巨人を遠隔操作できる
身長 おおよそ15m
歴代の保有者 ラーラ・タイバー→エレン・イェーガー

硬質化能力を応用して生み出すさまざまな武器は、鎧の巨人をも上回る硬度を誇ります。ただし、武器や物質を生成するにはエネルギーの消耗が激しいようで、持続性は低いです。

特筆すべき特徴は、継承者が巨人のうなじにいる必要がないこと。急所外にいる継承者本体を硬質化の能力で守ることで、戦鎚の巨人の能力を狙う敵を欺きながら、能力者を保護できます。

無垢の巨人とは

無垢の巨人とは、ユミルの民が巨人化した姿を指します。九つの巨人とは異なり知性がない無垢の巨人は、「通常種」と「奇行種」の2種類に大別できます。九つの巨人のようにうなじから人間が出てくることはなく、急所をやられると巨大な肉体は気化するように消滅します。

通常種

無垢の巨人の大半は通常種に分類されます。生きた人間を捕食することだけを考えて行動する巨人で、人間以外の生命には一切の興味を示しません。脅威的な再生力と生命力を有しており、肉体の一部を損傷する程度の攻撃は無意味。絶命させるためには、急所であるうなじを確実に削ぎ落とすしかありません。

奇行種

予測不能な行動を起こす巨人は奇行種に分類されます。たとえば、近くにいる人間を無視して遠くの集団に襲いかかったり、人間を捕食せずに物陰から観察したり。その行動は、人間の理解の範疇を越えており、予測できません。独特の行動をとるため捕獲や討伐が難しく、壁外調査の脅威となる存在です。

漫画『進撃の巨人』とは

諫山創氏が手がけた漫画『進撃の巨人』は、巨人の謎に迫ろうとする人類と、巨人の力をめぐる戦いの物語です。2009年から2021年までの約11年半にわたる連載で延べ34巻を刊行し、累計発行部数は2024年時点で1億2,000万部を突破。アニメ化や実写映画化もされ、一大ブームを巻き起こした作品です。

巨人を駆逐するために調査兵団に入った青年エレン・イェーガーが、巨人を追う過程で世界に隠された秘密を暴いていく……というストーリーとなっています。

「人が巨人に食べられてしまう」というインパクトのある物語設定と謎が謎を呼ぶ展開は、国内外の漫画好きの間で大きな話題を呼びました。また、人類最強の兵士・リヴァイなど、作品中に登場する多くの個性豊かなキャラクターたちも、人気を後押ししました。

『進撃の巨人』の巨人の種類をまとめて紹介しました

『進撃の巨人』に登場する「無垢の巨人」は巨人化したユミルの民のことで、「通常種」と「奇行種」の2種類に分類されます。無垢の巨人とは異なり、知性や固有能力を持つ特別な巨人が「九つの巨人」です。

連載当初は、正体不明の巨人との戦いが描かれていましたが、物語が進むにつれ巨人の正体や目的が明らかになり、さまざまな能力が披露されています。また、徐々に戦いの規模は大きくなり、人間の手には負えない大惨事が繰り返されていきました。

巨人の種類や能力を把握して見返すと、より内容が理解しやすくなるはずです。ぜひ本記事を参考に、漫画・アニメ『進撃の巨人』をもう一度振り返ってみてはいかがでしょうか。

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