少子化対策の財源確保を目的に、公的医療保険を通じてお金を集める「子ども・子育て支援金制度」。児童手当の拡充などに充てられる本制度ですが、税金ではなく社会保険に上乗せで徴収されること、子育てをしない人や低所得者層も支払うことには疑問の声があがっています。「子ども・子育て支援金制度」とはどのような制度で、自身はいくら支払う必要があるのでしょうか。制度の概要や、年収別の支払額などをまとめました。

  • 年収別「子育て支援金」支払額をチェック

■「子ども・子育て支援金制度」とは

「子ども・子育て支援金制度」とは、少子化対策の柱となる児童手当の所得制限撤廃や支給期間延長などの財源を確保するため、公的医療保険に上乗せして徴収する制度です。社会全体で子育て支援の費用を負担することから、子育て世帯であるかどうかに関わらず、独身の人や子育てが終わった中高年層にも負担が発生します。

「子ども・子育て支援金」の徴収は2026年4月1日から始まり、2026年度は6,000億円、2027年度は8,000億円、2028年度以降は1兆円を集める計画です。

■自分の年収なら月の拠出額はいくら?

「子ども・子育て支援金制度」についてこども家庭庁は、支援金の国民1人あたりの負担額は、制度が確立する2028年度に月450円になるという試算を発表しました。しかし、これは支援金を支払わない子どもも含めた人数で割った平均額です。

実際の負担額は、加入している医療保険の種類や所得額などによって異なります。2028年度時点では、大企業による健康保険組合で月850円、中小企業が加入する協会けんぽで月700円、公務員などの共済組合で月950円となる見込みです。また、自営業者が加入する国民健康保険は1世帯あたり月600円、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度は月350円となります。

このうち、会社員や公務員など「被用者保険」に加入する人が拠出する金額は、収入に応じて決まります。こども家庭庁がまとめた年収別の拠出額は、以下の通りです。

  • こども家庭庁の発表をもとに作成

<2026年度(初年度)>

・年収200万円…月額約200円
・年収400万円…月額約400円
・年収600万円…月額約600円
・年収800万円…月額約800円
・年収1,000万円…月額約1,000円

<2027年度>

・年収200万円…月額約250円
・年収400万円…月額約550円
・年収600万円…月額約800円
・年収800万円…月額約1,050円
・年収1,000万円…月額約1,350円

<2028年度>

・年収200万円…月額約350円
・年収400万円…月額約650円
・年収600万円…月額約1,000円
・年収800万円…月額約1,350円
・年収1,000万円…月額約1,650円

2028年度には、年収200万円の人は年間4,200円、年収400万円の人は年間7,800円、年収600万円の人は年間1万2,000円、年収800万円の人は年間1万6,200円、年収1,000万円の人は年間1万9,800円の負担増となる計算です。

こども家庭庁は、今後賃上げが進んだ場合、全体の報酬額が増えるため、年収別の拠出額が少なくなることも想定されるとしています。一方で、加藤鮎子こども政策担当相は、負担額が「将来上がる可能性もある」と国会で認め、見通しについてはあいまいさが目立っています。

■今後の子育て支援の予定は

政府は、こども政策を強化する「加速化プラン」を掲げており、新たな財源として年3兆6,000億円の財源を確保する方針です。そのうちの1兆円を、この「子ども・子育て支援金制度」でまかなう計画ですが、その財源により今後の子育て支援はどのように変わるのでしょうか。

加速化プランの主な支援策としては、以下のようなものが予定されています。

<児童手当(2024年12月支給分から実施予定)>

・所得制限の撤廃
・対象を18歳まで広げる
・多子世帯への増額

<育休・時短勤務(2025年度から実施予定)>

・男女ともに育休時の手取り額を維持
(両親ともに14日以上育休を取得した場合、最長28日間は手取り収入が減らないよう育児休業給付を引き上げる)
・時短勤務への給付

<出産費用・保育など(2024年度から3年間で具体化予定)>

・出産費用の保険適用
・保育所を利用する要件を緩和
・住宅ローン金利の優遇

このほか、高等教育に関しては、奨学金の対象者拡充(2024年度から実施予定)や、大学などの授業料無償化(2025年度から実施予定)などが予定されています。

■「子ども・子育て支援金」の徴収は2026年度から

「子ども・子育て支援金制度」は、少子化対策のための財源を公的医療保険に上乗せして徴収する制度です。専門家からは、「本来は税で対応すべきもの」との意見がありますし、負担額のあいまいさに対しても不満の声が聞こえます。2026年度から徴収が始まるという本制度について、今後も注視していきましょう。