ビデオカメラを渡された街の人が“こどもディレクター”となって、自分の親に「聞きたいけど聞けない」疑問を取材したVTRを紹介する中京テレビ・日本テレビ系ドキュメントバラエティ番組『こどもディレクター ~私にしか撮れない家族のハナシ~』(4月3日スタート、毎週水曜23:59~)。特番時代からスタジオでVTRを見守り続けてきた斎藤工は「“他人事が我が事になる”不思議な番組」と表現し、自身も映像制作を手がける立場だからこそ、受け取るものが多い様子だ。

そんなこの番組の魅力や向き合う姿勢を、企画・演出の中京テレビ・北山流川氏(『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』)と、監修の元テレビ東京・上出遼平氏(『ハイパーハードボイルドグルメリポート』)へのリスペクトとともに語ってくれた――。

  • 斎藤工

    斎藤工

SNSと対極的なものにカメラを向けている

今回のレギュラー化に際し、「もちろん毎週楽しみに受け止めてほしいんですけど、偶発的に出会うのにふさわしい番組でもあるなと同時に思っているんです」という斎藤。

その真意を、「途中から見て登場人物を一から理解しなくても、自分の“前とこれから”につながってしまう感覚があるんです。この“他人事が我が事になる”タイミングがどこなのか分からないんですけど、そうなっていくんですよね」と述べた上で、「初めてナタデココを食べたときのような、ちょっと類を見ない味わいなので、“1回食べてみて!”と声を大にして言いたいと思います」とアピールする。

特番では、スタジオのシソンヌ・長谷川忍が、VTRの親子の物語と自分自身を重ね、両親に思いを馳せて涙していたが、まさに“他人事が我が事になる”を象徴する場面だった。

そうした貴重なVTR素材を撮影してくれる“こどもディレクター”たちに対し、「SNSによって他人と接続できることが簡易的になっていると思うのですが、この番組はSNSとは対極的に最も普段見せなくないようなものにカメラを向けているじゃないですか。それによって次の一歩に進むという大きなメッセージがあるので、襟を正して向き合いたいと思います」と気を引き締めた。

  • 斎藤工とYOU

    初回ゲストのYOU(右)と

「僕らが味付けを加えすぎないことが大事」

VTRにナレーションが一切入っていないというのがこの番組の大きな特性だが、「本当に見つめてくれる視聴者の方がたくさんいると思うので、ノイズにならないことのほうを優先すべきだと思います」と、自分が過剰に説明や補足を入れないことを意識。

また、「編集やテロップという部分の演出をテレビのプロフェッショナルの方たちが仕上げているところに、また特性があると思うんです。“こどもディレクター”の皆さんから受け取った言葉を(企画・演出の)流川さんたちが大事に仕上げていると思うので、僕らがスタジオで味付けを加えすぎないことが大事だと思います。バラエティの収録としては、逆説的な運行が成り立つというか、それしか成り立たない番組だと思います」と捉えている。

一方、VTRを受けたゲストとのトークは、それぞれが自身の体験も交えながら、ここでしか明かされない話が出てくることもあるだけに、「普段ならシンプルすぎて聞けないような質問も、このスタジオならできるんです」とのこと。

VTR明けの精神状態を、「体から邪気が出てきたというか、サウナの後みたいな感覚になるんです(笑)」と表現し、「それくらいVTRを見つめる時間というのは、自分と向き合ってる時間なんですよね。鏡を見ているような感じがあるので、それをゲストの方と共有することで、視聴者の方ともつながることになると信じています」と期待した。