放送中のテレビドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS、金曜夜10時)にカッコいいバイクが登場している。磯村勇斗さん演じる“ムッチ先輩”こと秋津睦実が乗るホンダのバイクだ。どんな機種なのか、ホンダの昔のニュースリリースを探して調べてみた。
バイクの登場シーンを振り返る
『不適切にもほどがある!』は宮藤官九郎さんが脚本を手掛けるテレビドラマ。阿部サダヲさん演じる小川市郎が1986年(昭和61年)の日本から現代にタイムスリップし、昭和丸出しの言動で周囲を振り回しつつも、コンプライアンスでガチガチになった現代人たちの悩みをなぜかあざやかに解決(?)してしまう痛快社会派コメディだ。個人的な感想だが、東京から岩手県に「空間」を移動して本来の自分を取り戻していく天野アキを描いた『あまちゃん』と、昭和から令和に「時間」を移動しても自分らしさを貫き通す市郎を描いた『不適切にもほどがある!』は、対になっている作品のような気がしないでもない。とにかく、どちらもすばらしいドラマだ。
劇中には市郎の生きた昭和の終わりごろの雰囲気を感じさせる人物、音楽、アイテムなどが続々と登場してくる。そのひとつが、ムッチ先輩のバイクだ。
『不適切にも』の第4話では、市郎の娘である高校生の純子(河合優実さん)が、周囲から放っておかれる自身の状況に悩み、ムッチ先輩のもとを訪れる場面が出てくる。「誰かのバイクでどこかに行きたくなっただけ」という純子を後ろに乗せ、ムッチ先輩が走らせるのがホンダの「CBX400Fインテグラ」だ。いつもは強がっている純子が本心をのぞかせる同シーンには、グッときた人が多かったに違いない。そのあとの部屋のシーンでの先輩と純子のやり取りには、爆笑した人がかなりたくさんいたはずだ。
ちなみに、ムッチ先輩は自動車整備工場で働いているようなのだが、純子が訪ねてきたときはちょうど、日産自動車「スカイライン」の下にもぐって作業中だった。たぶん、劇中に出てきたのは「スカイライン ハードトップ 2000 ターボRS」というクルマだ。
ムッチ先輩の愛車は?
発売当時のリリースによると、「CBX400F」は「新設計DOHC・16バルブ・4気筒(マルチ)エンジン搭載 世界初のインボード・ベンチレーテッドディスク・ブレーキシステムなど 数々の新技術を採用した自動2輪車」なのだという。発売は1981年(昭和56年)11月。当時の価格はソリッドカラー仕様で47万円だった。
そのCBX400Fに追加となったのが、1982年(昭和57年)7月発売の「CBX400Fインテグラ」である。当時の価格は54.9万円、年間販売計画は2万台だ。
CBX400Fインテグラは「日本で初めてフェアリングや方向指示器キャンセル機構を標準装備」したバイクだったという。
「フェアリング」というのはバイクの前の方に付いているドライバーを守るためのパーツ。CBX400Fインテグラのフェアリングは、ホンダがロードレース活動で得た空気力学を積極的に取り入れて設計した。特にスクリーン部は、通常の乗車姿勢でも直接的にライダーが風の影響を受けにくいよう、上端を立てて、走行中の風の流れをスムーズにライダー上方に流すアップ型を採用している。このスクリーン部とフェアリング本体により、長距離ツーリングや高速走行時の風圧から生じるライダーの疲労を軽減し、快適な走行を可能にしているそうだ。
方向指示器キャンセル機構はハンドル切り角センサー、車速センサー、コンピューターなどを活用し、右・左折時のウインカーの戻し忘れを防止する装置。2輪車ではCBX400Fインテグラが初めて採用した。
これは余談だが、ムッチ先輩はニックネームからもわかる通り“マッチ”こと近藤真彦さんに憧れを抱くキャラクターで、その熱の入れようは自分の息子に「真彦」(磯村勇斗さん、二役)と名付けるほど。CBX400Fは、近藤真彦さんが主演映画『ハイティーン・ブギ』で乗ったバイクでもある。