アイドルグループ・なにわ男子の道枝駿佑が主演を務めるテレビ朝日系ドラマ『マルス-ゼロの革命-』(毎週火曜21:00~)がきのう23日にスタートし、放送開始30分と経たずXの世界トレンド1位を獲得するなど話題を呼んでいる。ドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(19年)などを手掛けた脚本家・武藤将吾氏の完全オリジナルである今作は、道枝演じる謎多きカリスマ転校生“ゼロ”こと美島零と、落ちこぼれ高校生たち7人が大人社会に反旗を翻す、前代未聞の「青春“クーデター”サスペンス」。

マイナビニュースでは、今作のほか、ドラマ『桜の塔』、『スイッチ』、『ノッキンオン・ロックドドア』などを手掛けたテレビ朝日の中川慎子ゼネラルプロデューサーにインタビュー。第1話放送を終えての現在の心境や、人生初の金髪でカリスマ高校生という難役に挑む道枝の魅力、現場のスタッフが思わず涙した「道枝駿佑と板垣李光人の熱演」について話を聞いた。(本記事には第1話のネタバレを含みます)

  • 道枝駿佑

    『マルス-ゼロの革命-』で主演を務める道枝駿佑=テレビ朝日提供

通常の倍以上の撮影日数をかけた覚悟の第1話

――きのう23日に『マルス-ゼロの革命-』がスタートしました。現在の率直な心境を教えてください。

武藤さんが書かれた第1話はもう盛りだくさんの内容になっていて、通常のドラマの倍以上の撮影日数がかかりました。さらに「動画配信」を表現するにあたって、CGを盛り込んだりと技術的な手間もかかり、本当にギリギリまで編集作業をしていたので、まずは無事に放送できたことにほっとしています。

――異例の日数や作業量をかけた渾身の第1話だったんですね。プロデューサーとして、そこまでの熱意を込めた背景を教えてください。

一緒にお仕事をしたいとずっと思っていた武藤さんと、念願叶ってご一緒できたのが2021年の『桜の塔』というドラマでした。テーマとしてはテレビ朝日らしい、警察組織を舞台にした下剋上を描いた作品で、本当に脚本が素晴らしかったんです。その経験を経て、次は武藤さんのパッションを、若いエネルギーを持ったキャラクターたちが代弁するような作品をやってみたいという思いが生まれたことから『マルス』の構想を練り始めました。武藤さんにとっては『桜の塔』以来の連ドラで、2年くらいかけて実現した形です。

武藤さんから届いたのは、映像にするのは並大抵なことじゃないぞと感じる台本でしたが、武藤さんの思いをしっかりと具現化したい、武藤さんとの新しいチャレンジの可能性を広げてくれる方に監督をお願いしたいと思い、平川雄一朗監督という演出のトップランナーに、初めてテレ朝作品に来ていただきました。武藤さんと平川さんにタッグを組んでいただいた以上、こちらも絶対に妥協できないという覚悟の第1話でした。

――その思い実って、Xでは世界トレンド1位を獲得しました。

武藤さんの熱量、平川さんの演出、役者さんたちの熱演が三位一体となった結果だと感じます。

道枝駿佑の根底にある貪欲さ「もっとできる、もっとやりたい」

――カリスマ的なリーダー・ゼロという主人公に道枝さんをキャスティングした理由は。

高校生はもちろん、大人たちも巻き込んでドラマを牽引していくゼロの存在やファンタスティックな言動は、どこか“この世ならざる者”のようで。ドラマの中に存在しているけど、どこまでが本当でどこまでが嘘なのか見えない、視聴者を揺さぶる非現実的な存在です。ゼロのキャラクター自体はご本人のパブリックイメージとは全然違いますが、道枝さんも、トップスターでありながら、どんな生活を送っているのかその裏側が見えない、いい意味でどこかリアリティが見えないようなところがゼロのようだなと感じたんです。それに加えて道枝さんサイドも、これまでとは全然違う、経験したことのないような作品に飛び込みたいという熱意を持っていたので、双方の思いが合致してこのキャスティングが実現しました。

――完成した第1話を見て、道枝さんのゼロはどう映りましたか。

会見でも、板垣(李光人)さんが道枝さんのことを「命を削ってゼロをやっている」と話していましたが、道枝さんは今、グループ以外の活動では常にゼロを頭に置いて、身を削って、自分と同化させて役に挑んでいると感じます。第1話ラストで、板垣さん演じる渾一と対峙する場面も、ゼロなのか道枝さんなのか、同一化していて分からないくらいで。一緒に作品を制作している立場として、この領域まで持っていけたのはすごいなと感動しました。

――道枝さんの、役者としてすごいと感じるところは。

「もっとできる、もっとやりたい」と、常に自分に満足せず、貪欲なところです。完成した第1話を見たときも、第一声はまだまだ満足していないことを感じさせるコメントだったので、ここまでの“自分への厳しさ”があるからこそ道枝さんはトップスターなんだろうなと感じました。

スタッフ一同が涙した道枝駿佑と板垣李光人の熱演

――放送終了とともに第1話の見逃し配信がスタートしましたが、改めて見返してほしいシーンを教えてください。

武藤さんの青春サスペンスにはどんでん返しがあるので、第1話から、最後の最後まで見逃せない展開になっています。特にラスト10分の、道枝さんと板垣さんのシーンですね。

――「渾一が実は」という展開は、武藤さんならではのどんでん返しだと感じました。

ゼロの右腕になっていく渾一が第1話であんなことをしてしまうという展開の危うさは、台本を読んだ時点で「視聴者に受け入れられるだろうか、渾一が嫌われないだろうか」と心配だったのですが、板垣さんが演じてくれたことで救われました。板垣さんが作り上げたキャラクターとあの演技力で、追い込まれてどうしようもなかった、あの選択をせざるを得なかったという高校生の苦悩を見事に表現してくれて、本当に感謝しています。

ゼロと渾一が対峙するラスト10分は、1日かけて撮影しました。道枝さんと板垣さんは以前から親交があって、現場でもベタベタはしていないけど、支え合ってこの作品を作ってくださっているのが日々伝わってきます。2人の関係値があったからこそ、お互いに魂をむき出しにして演じることができたシーンになったと思います。彼らと同じく命を削って撮っている平川監督も、モニターを見ながら思わず涙ぐんでいたんです。あれだけ厳しい平川監督、そしてスタッフも皆涙して見届けたシーンなので、2人の熱演を改めてご覧いただきたいです。

あと第1話には、今後につながる“考察ポイント”もいくつか盛り込んでいます。ゼロがなぜここに来たのか、なぜ高校生たちを集めたのか、それは本当に無作為なのか作為なのか、彼らと江口洋介さん演じる國見亜門を結ぶものは何なのか、という点について仕掛けがあるので、ぜひ見返して、考察していただけたらうれしいなと思います。

――最後に、今後の展開の見どころを教えてください。

国見との過去、ゼロの思惑が明らかになっていくのと同時に、マルスがどんどん力をつけて世の中を賑わせている事件や自分たちの身近な事件に立ち向かい、民意を得ていきます。世の中の閉塞感を、大人にはできないけどマルスだからこそ打破できるというストーリーに毎話なっているので、マルスがSNSと若いエネルギーで自分たちの代わりに世界を変えていく痛快さは、若い方はもちろん、大人の方にとっても世代を問わず面白く見ていただけると思います。彼らと対峙するキャストにも、豪華で演技力に長けている役者さんたちが次々と登場してくるので、そこもぜひ楽しみにしてください。

【編集部MEMO】30日放送『マルス-ゼロの革命-』第2話あらすじ
スクールカウンセラーの毛利(野間口徹)が校内で違法薬物の原材料となる植物を栽培し、さらには生徒をクスリ漬けにしていたことを世に暴き出すというセンセーショナルな配信で、新生【マルス】として活動を始めることになった美島零=ゼロ(道枝駿佑)率いる7人の高校生たち。大好きだった動画配信者の【マルス】の正体がゼロだったことを知り、驚きとうれしさの中にいる逢沢渾一(板垣李光人)は、貴城香恋(吉川愛)や二瓶久高(井上祐貴)らに【マルス】の過去の動画を見せて”予習”させる。そんな中、配信でゼロが発した「これは宣戦布告だ、必ずお前たちの闇を暴いてみせる」という発言の真意を問う呉井賢成(山時聡真)。するとゼロは1年前に【マルス】が大人の圧力によって活動中止を余儀なくされた過去を明かし、「奴らの闇を暴いて、オレ達が新しい時代を創る」「これは革命だ」と宣言する。革命への第1段階として【マルス】がまずは若者の支持を集めて知名度を上げるべく、ゼロが最初に選んだ案件は、日本新記録を打ち立てるも、殺人未遂事件を起こして陸上界を追われた不破壮志(日向亘)の事件の裏に隠された真相を暴くこと。スポンサー契約を結んでいた会社と金銭問題で揉め、不破が重役の火野武夫(勝村政信)を殺害しようと首を絞める動画が拡散された事件をもう一度検証するため、ゼロ、渾一、そして桐山球児(泉澤祐希)は、同級生である不破の元を訪ねる。しかし、不破は頑なに当時のことを話そうとはしない。やがてゼロたちは、不破の樹立した日本新記録に隠されたある秘密にたどり着き、事件の真相を暴く動画の配信を予告するが……。