東京メトロは13日、南北線で使用している9000系の8両編成車両を報道関係者らに公開した。今回公開した9109編成は12月16日の運行開始を予定しており、今後、9000系の2~4次車13編成を対象に、大規模改修工事と8両編成化を行うとしている。
9000系は1991年にデビューした南北線用の車両。同社で初めて車いすスペースを採用した車両でもある。東京メトロ南北線は目黒~赤羽岩淵間を結び、目黒駅から東急目黒線、赤羽岩淵駅から埼玉高速鉄道(埼玉スタジアム線)と相互直通運転を行う。今年3月に相鉄・東急直通線が開業した後は東急新横浜線にも乗り入れ、新横浜駅までの広範囲で運行される。1次車の9101~9108編成はすでに改修工事を実施しており、6両編成として現在も引き続き活躍している。
南北線のホーム自体は8両編成に対応。2022年4月以降、他社所属車両が8両編成で運行するようになったが、輸送力増強によってさらなる混雑緩和を図るため、東京メトロの車両9000系も8両編成化を実施することとなった。9000系の中でも、2~4次車は1995年から順次運行開始した車両で、そこから数えて今年で28年経過している。車両設備を更新し、最新機器の搭載など行うため、大規模改修と8両化を順次進めていく。
今回、報道公開された9109編成は9000系の2次車にあたる。1号車(赤羽岩淵方先頭車)の「9109」から順に、8号車「9809」まで車番が割り振られ、4号車「9409」、5号車「9509」に新造車両を増結した。前面は1次車と同様、種別・行先・運用番号表示をフルカラーLEDに更新し、下部にスカート(排障器)を新設した。
車体側面はエメラルドグリーンと白のラインによるウェーブデザインに変更され、上部にもラインを追加。客室窓上にある種別・行先表示はフルカラーLEDに更新された。新造車両2両も既存車両と同様の外観デザインだが、ラインのデザインを変更した既存車両と、最初からウェーブデザインで製造された新造車両を見比べると、車体に使用感の違いが出ており、意外と見分けやすい。
他にも、既存車両と新造車両で車体側面から妻面にかけての処理が異なっている。車番に関して、既存車両はドア横と中央下部にそれぞれ表示されているが、新造車両はドア横のみ配置されている。上部の雨樋にも若干の違いが見られる。加えて、既存車両の台車はボルスタレス台車だったが、新造車両ではボルスタ台車が採用された。
電動車のVVVFインバータ制御装置にフルSiC(シリコンカーバイド)素子、主電動機に全密閉型高効率誘導電動機を採用し、消費電力量を削減。補助電源装置(SIV)も低損失化を図った新世代ハイブリッドSiC素子を適用し、キャリア周波数を高周波化することで、最新車両に搭載された電源装置と比較して床面積を40%削減、質量を25%削減し、省スペース化・軽量化を図った。SIVに関して、消費電力が少ない場合は2台のうち片方を自動的に休止させ、もう片方で負荷を負担し、高効率で運転する「並列同期・休止運転方式」を採用。編成全体で消費電力量を削減に努める。
既存車両の内装も更新し、床をエメラルドグリーンに変更。ドア上部の案内表示は、従来の文字だけのものから2画面のディスプレイに替わり、見やすく細かな案内と動画広告の表示が可能になった。座席の色は紫色(優先席は青色)のままだが、床の色が変わったことで、改修前と比べて雰囲気が変わっている。袖仕切りはパイプ形状に合わせてポリカーボネイト板を追加。改修前のものを生かしつつ、大型化を図っている。
フリースペースは1・2号車の目黒方、3~8号車の赤羽岩淵方に各1カ所設置された。座席の上にある荷棚は、引き続き鉄製の網棚を使用する。
続いて新造車両の4・5号車も車内を見ていく。こちらは床だけでなく、ロングシートのモケットもエメラルドグリーンを基調にしており、そこに白色と明るいエメラルドグリーンのラインをあしらったため、既存車両とは大幅に雰囲気が変わった。袖仕切りは木目とガラスを組み合わせたもので、既存車両より大型になっている。形状としては、東京メトロ千代田線16000系のものに近い。荷棚も既存車両と異なり、ガラス製となった。
優先席はオレンジ色に変更され、既存車両の優先席が青色であることを思えば、こちらも大幅な変更となった。4・5号車もフリースペースを各1カ所(赤羽岩淵方)設置。新造車両2両の手すりもエメラルドグリーンのモケットを使用している。
貫通扉には東京メトロ南北線のラインをあしらったガラス扉を使用しているが、新造車両は他の車両と比べてガラスの使用範囲が狭くなっている。既存車両の貫通扉の開口部に合わせているため、このようになっているという。
既存車両と異なるデザインだが、新造車両2両を増結したことで、1編成あたりの定員が882人から1200に増加。輸送力が向上し、混雑緩和が見込まれる。各車両に防犯カメラや脱線検知装置も設置し、安全性・安定性が向上。すべての車両にフリースペースも設置したため、車いす・ベビーカー利用者や大型の荷物を持った利用者も乗車しやすくなる。
最後に、東京メトロ車両部設計課課長補佐の渡部智也氏が報道関係者の取材に対応した。このタイミングで9000系を増結した経緯について質問があり、渡部氏は9000系の2~4次車が更新タイミングにあたることを挙げつつ、「埼玉高速線内や東急目黒線内なども含め、乗客が多くなってきたというところと、混雑率もかなり上がってきているとのことでしたので、混雑緩和のため、会社として8両化しようということで決めました」と回答した。
全編成を8両化するかとの質問もあったが、「いまのところまだ計画がありませんので、今後のお客様の動向も見ながら決めていく形になると思います」とのこと。今回のように更新した車両の使用年数に関して、20~25年程度を予定しているとの説明もあった。ただし、今後の改修・増結については、先に改造工事を行ってから8両化することもありうるため、必ずしも今回のように同時に行われるとは限らないという。
新造した中間車両2両は、車体形状・内装ともに既存車両との違いが見られた。そのベースとなる車両についても質問があった。渡部氏によれば、今回の新造車両2両は川崎車両が製造しており、同社が製造した直近の東京メトロ車両が千代田線の16000系だったため、「16000系を起点に今回設計させていただいております」とのことだった。
今回公開された9109編成を皮切りに、9121編成までの13編成において大規模改修工事・8両化を進めていく。8両編成化の第1号となる9109編成は12月16日に運行開始予定。これまで自社線を走る8両編成は東急電鉄または相鉄の車両による運行だったが、9000系が加わることでさらなる輸送力向上が見込まれる。鉄道ファンの視点からも、外観・内装ともに既存車両と新造車両の違いが表れているので、乗り比べてみると面白そうだ。