マネ―スクエアのチーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話しします。今回は、米国のクリスマス商戦について解説していただきます。
クリスマス商戦はブラックフライデーから本格スタート
11月23日木曜日は米国の感謝祭(サンクスギビングデー)。そして、翌24日はブラックフライデー(※1)。この日からクリスマス商戦が本格的にスタートするとされています。さらに、ネット通販が最も活況を呈するとされる、週末を挟んだサイバーマンデーも注目されます。
※1: ブラックフライデーの由来には諸説あります。一般的には、小売店の多くが特別なセールを行って売り上げを伸ばし、この日から年間で黒字に転じるから、との説が有力です。ただ、60年代初頭に買い物客が殺到して、これに頭を痛めた地元フィラデルフィア警察がそう呼び始めたとの説もあるようです。
最近の日本でも流行(はやり)になっていますが、感謝祭の前週あたりからオンラインなどを中心にブラックフライデーのセールが展開されます。一方で、感謝祭の夜に開店して、お買い得商品を求めてお客が殺到するという光景はみられなくなったようです。それでも、お買い得商品をそろえて、24日朝6時には開店するという小売店や百貨店は多いようです。
米国景気のカギを握る10月以降の個人消費
米国の7-9月期の実質GDP(国内総生産)は前期比年率4.9%増と、びっくりするぐらい好調でした。とりわけ、個人消費は同4.0%と高い伸びで景気をけん引しました。10-12月期のGDPは減速が避けられそうもありませんが、そのなかで全体の7割近くを占める個人消費がどれだけ頑張れるかが重要なカギを握っていそうです。
クリスマス商戦の行方
さて、今年のクリスマス商戦はどうでしょうか。高金利下で景気の先行きが懸念される状況で好調は期待できないかもしれません。NRF(全米小売連盟)は今年11-12月の小売売上高(自動車・ガソリン・レストランを除く)を3-4%増と予想しています。これは19年の3.8%以来の低い伸びです。ただ、コロナ禍で20年、21年と売り上げが大きく伸びたのは、政府が支援金や減税によってサポートしたからでしょう。その反動があってもおかしくない22年も5.4%増でした。コロナ前の10年間の平均が3.6%なので、今年も悪くないと予想されているようです。
家計の貯蓄は潤沢!?
コロナ禍での支援金や減税の効果はすでにはく落していそうですが、家計の資金は潤沢にありそうです。17年末からの貯蓄(※2)の累積をみれば、コロナ禍で大きく膨らんだ後もコロナ禍以前のトレンドを上回って推移しています。
※2: ここでの貯蓄はフローの概念。月々の個人所得から税などの支払いを除いたものが可処分所得。可処分所得から消費や利払いなどの支出を除いた残差を「貯蓄」と定義しています。
気になる消費マインドの低下
それでは家計の消費意欲はどうでしょうか。ミシガン大学とコンファレンスボードの消費者信頼感指数をみると、水準感に差はあるものの、波形は比較的似ています。すなわち、20年春のコロナショックで落ち込んだ後、いったん持ち直したものの、21年夏から22年夏まで下降(政府支援の効果はく落?)。その後は上昇トレンドにあるが、直近3カ月程度は低下しています。したがって、今後さらに低下しないか注意する必要はあるようです。
クリスマス商戦に関する報道は、ショッピングモールの客足やクレジットカードの利用額など断片的なものがほとんど。上で紹介したNRFのようなクリスマス商戦の全体像が判明するころには市場の関心は他に移っていそうです。それでも、どんな報道のされ方をするのか、興味深いところでしょう。