【7】日本一の急カーブは?

鉄道における日本一の急カーブ(最小半径)はどこにあるだろうか。軌道線(路面電車)を含めた場合、豊橋鉄道の井原停留場付近にある半径11mの急カーブが最小である。鉄道線に限定すると、黒部峡谷鉄道の黒薙駅に半径21.5mのカーブがあるが、同線は軌間762mmの特殊ゲージを用いている。

軌間1,067mm以上の一般的な鉄道としては、江ノ島電鉄の江ノ島~腰越間の半径28mが最小である。江ノ島電鉄は道路併用区間があるので軌道線のイメージがあるかもしれないが、1944(昭和19)年以降、鉄道線として営業している。

  • 軌間1,067mm以上の鉄道で日本一の急カーブ区間(龍口寺前交差点付近のS字カーブ)を走る江ノ島電鉄の列車

  • 龍口寺交差点付近に設置されている江ノ電の土木遺産認定の銘板。「普通鉄道としては最小であるR=28mで敷設されている」と記されている

なお、江ノ島電鉄の鎌倉高校前駅付近にある「鎌倉高校前1号踏切」(通称「スラムダンク踏切」)は、「日本一有名な踏切」かもしれない。

【8】日本一短い鉄道事業者は?

営業キロが日本一長い鉄道事業者はJR貨物である。同社のサイトによると、2023(令和5)年4月1日現在の営業キロ数は7,829.1kmだという。ただし、JR貨物は原則として他の鉄道事業者から線路を借用して列車を運行する第二種鉄道事業者であり、線路を保有して列車を運行する第一種鉄道事業者としての区間は、わずか35.3kmにすぎない。

第一種鉄道事業者で営業キロが最長の鉄道事業者は、JR東日本の7,401.2km(BRT=バス高速輸送システム区間を含む)である。

逆に最短の事業者は、鋼索線や貨物専用線を除く第一種鉄道事業者に限れば、千葉県の芝山鉄道である。東成田駅(旧・成田空港駅)から芝山千代田駅まで2.2kmしかない。

  • 芝山鉄道の芝山千代田駅。芝山鉄道は、成田空港建設による地域交通の東西分断を避けるために建設された第三セクター鉄道である

芝山鉄道は京成電鉄の東成田線(京成成田~東成田間)と直通運転を行っており、京成電鉄の車両も使用しているため、独自の路線という印象は薄い。ところが、芝山千代田駅で下車したときに交通系ICカードが使えないため、200円の運賃を窓口で精算しなければならない。そのときに独立した会社であることを思い知らされるのである。

なお、芝山千代田駅から2.5kmほど離れているが、航空科学博物館に初の国産旅客機YS-11(試作1号機)などが屋外展示されている。せっかくここまで来たならば立ち寄りたいスポットだろう。

【9】日本一長い懸垂型モノレールは?

モノレールが「鉄道」に含まれるのか、疑問に思う人もいるかもしれないが、遊園地の遊戯物扱いのものを除けば、モノレールも鉄道事業法もしくは軌道法にもとづいて運行されている。1972(昭和47)年に「都市モノレール法」が公布される以前は鉄道事業法(当時は地方鉄道法)にもとづいて建設され、同法の公布以降はモノレールを道路の構造物の一部として建設(インフラ補助制度を活用)するケースが増えたため、原則として軌道法にもとづいて建設されるようになった。

モノレールには東京モノレールや大阪モノレールのような線路(走行桁)にまたがって走行する跨座(こざ)型モノレールと、来年7月までに廃止されることが公表されている上野動物園モノレール(上野懸垂線)をはじめ、線路からぶら下がって走行する懸垂型モノレールに分けられる。

跨座型・懸垂型の両方を含めたモノレールで、営業キロ最長は大阪モノレールであり、本線(大阪空港~門真市間21.2km)・彩都線(万博記念公園~彩都西間6.8km)の2路線合わせて28km。これは中国の重慶モノレールに抜かれるまで世界最長だった。

  • 世界最長の懸垂型モノレールである千葉都市モノレール

懸垂型モノレールに限ると、世界最長は千葉都市モノレールであり、1号線(千葉みなと~県庁前間3.2km)・2号線(千葉~千城台間12km)の2路線合わせて15.2km。ギネスにも「Longest monorail - suspended type(最長の懸垂型モノレール)」として記録されている。

ただし、懸垂型モノレールは世界的にも珍しく、日本国内を見渡しても、前述の上野動物園モノレールや湘南モノレール、広島のスカイレール(2024年4月に営業終了予定)しかなく、かなりニッチな記録と言わざるをえない。ちなみに、上野動物園モノレールは日本一歴史の古い「地方鉄道法にもとづいて建設されたモノレール」でもある。

【10】日本一線路が多い複々線区間は?

日本一線路が多い複々線区間、つまり同一事業者の線路が最も多く併走している区間は、JR東日本の上野~日暮里間で10線だという。京浜東北線、山手線、高崎線、宇都宮線(東北本線)、常磐線の線路が併走する様子は、上空から眺めれば壮観だが、普段、電車に乗っているときには誰も気にしない日本一かもしれない。

  • 日暮里駅付近の跨線橋上から見た10本の線路

今回は山手線から2時間以内で行ける鉄道「日本一」を見てきたが、探せば他にも「日本一」があるはずだ。最近の話題であれば、「日本一新しい路面電車」である芳賀・宇都宮LRTも、上野駅から2時間以内(上野~宇都宮間は新幹線で約45分、普通列車で2時間弱)で行けるのである。