北陸新幹線金沢~敦賀間の開業日が2024年3月16日と発表され、福井駅ではカウントダウンボードが設置された。新幹線の開業を祝う雰囲気が盛り上がってきた。

  • 北陸新幹線金沢~敦賀間の開業日が確定。9月23日から車両走行試験が始まる

ところで、JRグルーブは毎年3月にダイヤ改正を実施している。新しい新幹線が開業するとなれば、各社とも来年のダイヤ改正は3月16日に合わせるはず。北陸新幹線金沢~敦賀間の開業にともない、福井県の並行在来線を引き継ぐハピラインふくいが開業し、石川県の並行在来線を引き継ぐIRいしかわ鉄道も延伸開業する。他の地域でも、新型車両や新駅開業によるダイヤ改正がありそうだ。

そこで今回、北陸新幹線と並行在来線を中心に、2024年春のダイヤ改正について、現時点でわかっている情報と予想をまとめた。

■北陸新幹線「かがやき」現行の定期列車は一部を除き敦賀駅発着に

新幹線のダイヤ予想に関する考え方として、「運行時間は6~24時」「東京~大宮間は変更なし」に留意する必要がある。運行時間は全国の新幹線で共通しており、深夜0時から朝6時まで保守点検の時間帯となっている。

東京~大宮間はJR東日本の各方面へ向かう新幹線(東北・上越・北陸新幹線など)がすべて乗り入れる区間となっている。北陸新幹線のダイヤを変更すれば、他の各新幹線も変更する必要がある。在来線の接続列車を含めて広範囲に影響するから、なるべくこの区間は変えたくないだろう。

JR西日本とJR東日本が連名で発表した北陸新幹線金沢~敦賀間の運行計画によると、東京~敦賀間の「かがやき」は9往復だという。うち5往復は延伸区間で福井駅のみ停車する速達タイプ。4往復は福井駅の他に小松駅、加賀温泉駅、芦原温泉駅、越前たけふ駅のいずれかに停車するタイプで、各駅とも2往復ずつ「かがやき」が停まる。

JR東日本が公開しているデジタル時刻表(2023年9月)で確認すると、現在、東京~金沢間で平日に運転される「かがやき」は17往復だった。このうち9往復が東京~敦賀間になる。17往復のうち、どの列車が東京~敦賀間になるか。そのヒントは「列車番号」と「運転日注意」にある。たとえば、東京駅7時20分発「かがやき503号」の列車番号は「3503E」、続く東京駅8時12分発の「かがやき521号」の列車番号は「8521E」になっている。

東京駅からの下り「かがやき」は、「かがやき501号」「かがやき503号」というように、奇数の号数が割り当てられている。一方、列車番号は3000番台・6000番台・8000番台・9000番台で区別され、3000番台は定期列車、6000~9000番台は臨時列車だ。「かがやき521号」(8521E)について、時刻表では「11月30日まで運転」と期限が設定されている。「かがやき523号」(8523E)はもっと細かく、「8月26・28~30日・9月1・2・8・9・16・17・22・23・26・29日~10月1・5~9・12~29日・11月2~21・23~26日運転」とされている。

列車番号が3000番台の定期列車は8往復あった。北陸新幹線が金沢駅まで延伸開業した際、「かがやき」の定期列車は10往復設定されたが、コロナ禍の影響で2往復を臨時列車に変更したという。金沢~敦賀間の開業後、「かがやき」は東京~敦賀間9往復・東京~金沢間1往復と発表されているので、「臨時列車化された2往復も定期列車に戻して計10往復の運転とし、このうち新幹線の運行時間に影響しない9往復を敦賀駅発着にする」と予想する。

現行の定期列車のうち、下りは「かがやき501・503・505・507・509・513・515号」の7本が敦賀行の有力候補。これに現行の臨時列車2本が加わるだろう。「かがやき519号」は定期列車だが、金沢駅の到着時刻は23時32分。このまま敦賀行にすると深夜0時を超えるため、延伸開業後も金沢駅止まりになると思われる。

東京~敦賀間を走る「かがやき」の所要時間は最速で3時間8分。現行の下り最速列車「かがやき509号」(東京駅10時24分発)が敦賀駅までの最速列車となった場合、敦賀駅の到着時刻は13時32分になる。始発の「かがやき501号」に乗った場合、現在は東京駅6時16分発なので、敦賀駅到着は9時24分以降と考えられる。

現行の上り「かがやき」の定期列車は「かがやき500・502・506・510・512・514・516・518号」の8本。ただし、「かがやき500号」は金沢駅6時3分発だから、この時刻のまま敦賀発にすると、敦賀駅の発車時刻が5時台になってしまう。したがって、残り7本が敦賀発の候補で、さらに現行の臨時列車2本が定期列車に格上げされ、敦賀発になると予想する。

  • 北陸新幹線金沢~敦賀間開業後も、「かがやき」「はくたか」「つるぎ」は引き続きW7系またはE7系で運転される

報道を見ると、加賀市長は運行本数が少なくて不満のようだ。しかし、この運行本数は定期列車の数であり、開業時や多客期に臨時「かがやき」の敦賀延長もあるだろう。その機会に利用実績を増やすべく頑張ってほしい。

■「はくたか」は日中時間帯の「速達タイプ」を敦賀駅発着に

8月30日に発表された運行計画を見ると、東京~敦賀間の「はくたか」は5往復となっている。現在、東京~金沢間を走る「はくたか」の定期列車は14往復あり、他に長野~金沢間で定期列車1往復、上越妙高発長野行で朝に上り1本(土休日運休)が設定されている。金沢~敦賀間開業後も、東京駅発着の「はくたか」は14往復で変わらず、長野~金沢間の1往復も運行区間に変更なし。つまり、金沢駅発着の「はくたか」15往復のうち、3分の1が敦賀駅まで延長となる。

どの列車が敦賀駅発着になるか。そのヒントは現在の時刻表にある。東京駅の北陸新幹線の時刻表を見ると、平日の11~14時頃にかけて「かがやき」の定期列車が運行されない。そしてこの時間帯の「はくたか」は、他の「はくたか」と比べて長野県内を中心に通過駅の多い「速達タイプ」となっており、本数を調べたら5本だった。これがそのまま運行区間を延長し、敦賀駅発着になると予想する。これで東京発敦賀行の「はくたか」は日中時間帯に毎時1本の運行間隔を維持できる。

上り「はくたか」も、金沢駅10時58分発の「はくたか560号」から同駅14時48分発の「はくたか568号」まで、日中時間帯の5本が「速達タイプ」だった。これが敦賀駅発着に繰り上げられるだろう。

■「つるぎ」は「従」、「サンダーバード」「しらさぎ」は「主」の関係に

東京駅発着の「かがやき」「はくたか」に対し、「つるぎ」のダイヤは大きく変わるはず。現行の「つるぎ」は富山~金沢間を結ぶシャトルタイプの列車で、大阪駅発着の特急「サンダーバード」、名古屋駅・米原駅発着の特急「しらさぎ」から乗り継ぐ利用者向けに設定された。

北陸新幹線が金沢駅まで開業した際、「かがやき」「はくたか」は「サンダーバード」「しらさぎ」への乗継ぎにちょうど良い時間にならなかった。「サンダーバード」は湖西線で強風が発生すると、米原駅経由で迂回することがあり、所要時間が30分ほど延びてしまう。そのときに「かがやき」「はくたか」は「サンダーバード」から乗り継ぐ利用者を待てない。

逆に東京側のダイヤが乱れた場合も、「サンダーバード」「しらさぎ」は「かがやき」「はくたか」を待てない。大阪・名古屋エリアのダイヤを乱すからだ。つまり、「つるぎ」は関東・関西の列車の調整役といえる。関東側で東京~大宮間のダイヤを崩しにくいように、大阪・名古屋エリアのダイヤも崩しにくい。いわば「つるぎ」が「従」、「サンダーバード」「しらさぎ」が「主」という関係になる。

北陸新幹線が敦賀駅まで延伸することで、「つるぎ」と「サンダーバード」「しらさぎ」の乗換駅が敦賀駅に移る。「サンダーバード」「しらさぎ」のダイヤが現在と大きく変わらない場合、敦賀~金沢間は「つるぎ」に置き換わり、所要時間が短縮されるだろう。つまり、大阪・名古屋エリアから福井駅、金沢駅、富山駅に到着する時刻が繰り上がり、それぞれの駅から発車する時刻が繰り下がる。

  • 現在は大阪~金沢・和倉温泉間で運転される特急「サンダーバード」。北陸新幹線金沢~敦賀間の開業にともない運転区間が短縮され、大阪~敦賀間の運転となる

「つるぎ」は富山~敦賀間18往復、金沢~敦賀間7往復、計25往復を予定しており、これは現行「サンダーバード」の本数と一致する。特急「しらさぎ」は現在、名古屋~金沢間8往復、米原~金沢間8往復、計16往復運転され、こちらは北陸新幹線よりも東海道新幹線からの乗継ぎを考慮したダイヤになっている。敦賀駅で「しらさぎ」との乗換え時間が適切になるか注目したい。

米原~敦賀間の「しらさぎ」は45.9kmという短距離特急列車になる。しかし存続するだろう。新幹線乗継ぎの長距離利用客としては、指定席が重要になるからだ。

北陸新幹線金沢~敦賀間の開業後、「つるぎ」は富山駅発着の18往復中5往復と、金沢駅発着の7往復中4往復が速達タイプとなり、途中の小松駅、加賀温泉駅、芦原温泉駅、越前たけふ駅を通過する。速達タイプを設定するなら、新たに列車名「雷鳥」を復活させてほしかった。もしかしたら新大阪駅までの延伸開業時にデビューさせるつもりかもしれない。

その他、在来線特急列車と接続しない「つるぎ」も5本設定される。これは敦賀~金沢間の特急「おはようエクスプレス」「おやすみエクスプレス」、福井~金沢間の特急「ダイナスター」を置き換える目的だろう。

■ハピラインふくいの快速、区間運転の「つるぎ」と競争関係に?

北陸新幹線金沢~敦賀間の延伸開業によって、並行在来線のうち石川県区間(大聖寺~金沢間)はIRいしかわ鉄道が引き継ぎ、延伸開業となる。福井県内区間(敦賀~大聖寺間)は新たに設立された第三セクター鉄道「ハピラインふくい」が開業する。

IRいしかわ鉄道は2022年11月に公開した「石川県並行在来線経営計画(金沢以西延伸)」にて、福井県境をまたぐ列車は現行の普通列車44本を基本とし、具体的なダイヤ等は「ハピラインふくいと協議する」とした。一方、ハピラインふくいの運行計画は2021年10月の「福井県並行在来線経営計画」に示されている。

  • 敦賀~福井間 : 44本(6本増便)。このうち朝4本、夕4本は快速列車
  • 敦賀~芦原温泉間 : 9本(2本増便)
  • 敦賀~金沢間 : 3本(1本増便)
  • 武生~福井間 : 18本(13本増便)
  • 武生~芦原温泉間 : 1本(増減なし)
  • 武生~金沢間 : 1本(増減なし)
  • 福井~芦原温泉間 : 10本(3本増便)
  • 福井~金沢間 : 40本(1本減便)

特急列車がなくなる分、ダイヤに余裕ができ、全体的に増便して地域に貢献しようという考え方がうかがえる。快速列車は「おはようエクスプレス」「おやすみエクスプレス」を代替する列車となり、「つるぎ」の区間運転と競争関係になるかもしれない。

■福井鉄道とえちぜん鉄道、小浜線もダイヤ改正で注目すべき路線に

並行在来線関係では、越美北線の全列車が北陸本線の越前花堂~福井間で直通している。この運用はハピラインふくいに引き継がれる予定だ。現行の特急「サンダーバード」は、1往復だけ金沢駅から先、七尾線経由で和倉温泉駅まで乗り入れている。この列車は廃止されるが、代わって金沢~和倉温泉間の特急「能登かがり火」が1往復増発となる。

あいの風とやま鉄道はハピラインふくいと接していない。しかし、あいの風とやま鉄道はパターンダイヤを検討しており、列車の等間隔運転によるわかりやすいダイヤをめざしている。直通するIRいしかわ鉄道とも調整が必要で、その余波がハピラインふくいに影響するかもしれない。

福井県の福井鉄道とえちぜん鉄道にも注目したい。両社とも北陸新幹線金沢~敦賀間の具体的なダイヤが発表された後、新幹線との接続を念頭に置いたダイヤ改正を実施すると予想する。

  • 小浜線も北陸新幹線との接続を考慮したダイヤになると予想

小浜線も注目すべき路線に挙げられる。敦賀駅から小浜・東舞鶴方面へ向かう路線だから、北陸新幹線との接続を考慮したダイヤになるはず。JR西日本は2024年秋から、小浜線や京都丹後鉄道などを経由し、敦賀駅と城崎温泉駅を結ぶ観光列車の運行を計画している。過去には京都丹後鉄道の観光列車「丹後くろまつ号」が小浜駅・敦賀駅まで出張運転を行っていた。北陸新幹線金沢~敦賀間の開業後、天橋立~敦賀間などでの運行を期待したい。

■他の地域でも新型車両・新観光列車などダイヤ改正に向けた動き

ここまで北陸地方を中心に2024年春のダイヤ改正を予想したが、他の地域もJR・私鉄各社でダイヤ改正に向けた動きが見えてきた。

●JR東日本

山形新幹線「つばさ」に新型車両E8系を導入する予定。2026年までに現行のE3系を置き換える。山形新幹線でE8系の導入が完了し、東北新幹線のE2系(最高速度275km/h)が引退すると、東北・山形・秋田新幹線の全車両が新幹線区間を最高速度300km/h以上で走行可能になる。それに合わせ、JR東日本の新幹線で抜本的なダイヤ改正が行われるだろう。東京~大宮間のダイヤが変われば、北陸新幹線でも大きな変更があると予想される。

  • 山形新幹線の新型車両E8系。2024年春のデビューを予定している

東北方面の在来線では、今年冬にデビュー予定の「ひなび(陽旅)」に続き、来年春に新観光列車「SATONO」のデビューを予定している。どちらも青森県でおもに運行された「リゾートあすなろ」を改造した2両編成の観光列車で、「SATONO」は宮城県、福島系、山形県を中心に運行予定。ダイヤ改正までに詳細が明らかになるだろう。

●JR西日本

岡山~出雲市間を結ぶ特急「やくも」に新型車両273系が導入される。「セミコンパートメント」のインテリアデザインも公開され、シートをフラットにできるグループ向け座席だという。報道発表では、273系の営業開始時期を2024年春以降(予定)としていたが、3月16日に合わせるのではないかと思われる。273系の導入にともない、国鉄時代から使用していた381系は置き換えられる。273系の導入が完了すれば、国鉄特急形電車を使用する定期特急列車が消滅することになる。

また、JR西日本は中期経営計画で、2023年度までに201系をすべて引退させる意向を示している。これはJR京都線・JR神戸線(東海道・山陽本線)で225系を増備し、余剰となった221系で大和路線(関西本線)の旧車を置き換えるため。221系の動向にも注目したい。

●JR九州

2024年春の福岡・大分デスティネーションキャンペーンに合わせ、久大本線に新しい観光列車が登場する。名称は未定。車両は「いさぶろう・しんぺい」で使用された2両に、キハ125形を改造したラウンジ車両を組み込んだ3両編成と報道されている。運行ルートの博多~由布院・別府間は、すでに「ゆふいんの森」が3往復も運転され、人気のほどがうかがえる。「ゆふいんの森」の車両は、国鉄時代の気動車を改造したキハ71系と、JR発足後に新製したキハ72系の2種類。新観光列車は博多~由布院・別府間の4往復目になるか、それともキハ71系の置換えになるか、注目される。

●JR東海

JR東海は在来線通勤型電車315系の増備を進めており、2023年度末までに中央本線中津川~名古屋間の快速・普通列車をすべて置き換える。

●大手私鉄など

名古屋鉄道は先日、運賃改定や三河知立駅の移設開業、新駅「加木屋中ノ池駅」の開業など、いずれも3月16日に実施すると発表した。加木屋中ノ池駅は河和線の高横須賀~南加木屋間に設置され、東海市の要望で副駅名「公立西知多総合病院前」が設定される。新駅設置はダイヤ改正を伴う。北陸新幹線の開業日と重なったことは偶然だろう。

西日本鉄道は新駅「桜並木駅」の開業を来年3月に予定している。天神大牟田線の雑餉隈~春日原間に設置され、前後約5kmの連続立体交差化が完成した際、高架上に新駅のホームも姿を現していた。同じく来年3月、天神大牟田線の試験場前駅が「聖マリア病院前駅」に改称される。

  • 北大阪急行電鉄の9000形増備車「箕面ラッピングトレイン」。来年3月の箕面萱野~千里中央間開業に向けて導入された

3月16日の実施が有力となったJR・私鉄各社のダイヤ改正に加え、3月23日には北大阪急行電鉄の延伸区間(箕面萱野~千里中央間)が開業する予定。その一方で、3月31日の営業を最後に根室本線富良野~新得間が廃止される。春の実施になるかは不明だが、阪急電鉄は2024年に京都線で座席指定サービスを開始する。2022年12月のダイヤ改正で、それまで快速急行だった種別を準特急に変更しており、座席指定サービスは京都線の特急・通勤特急・準特急に導入される。

ダイヤ改正については、今後もJR線に乗り入れる私鉄路線や、新幹線・特急列車と接続する路線などで詳細が発表されるだろう。ダイヤ改正は鉄道利用者の生活リズムに変化をもたらす。普段利用している路線の動きに注目しよう。