日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’23』(毎週日曜24:55~)では、『危険木 D-6 ~100万本の景観の犠牲~』(福岡放送制作)を、きょう3日に放送する。

  • 折れた松

佐賀県唐津市にある国の特別名勝・虹の松原。400年の歴史があり、地元の人や観光客にも愛される地域の宝だ。2019年7月、ここで折れた松と県道を走行中の車が衝突。この事故で、母親の運転する車の助手席に乗っていた小学5年の川崎辿皇くんの胸に木の枝が突き刺さり、辿皇くんは死亡した。

母親の明日香さんは去年、国・佐賀県・唐津市を相手取り、損害賠償を求めて提訴。国有林である虹の松原の所有は、国。松原を通る県道や道路に危険が及ぶ場所の安全管理は佐賀県。唐津市は、国に権限を委譲される形で危険な木の伐採許可を行っていて、それぞれが「虹の松原」での役割を担っている。

事故が起きる6年半前、佐賀県は県道沿いの26本の木の伐採許可を唐津市に求めた。その中には、辿皇くんを死に至らしめた、通し番号で「D-6」とされた木も。しかし、木の伐採は許可されず、危険は放置された。なぜなのか。

裁判の中で県が提出した記録には、市の担当者が「特別名勝に指定されているため、景観も重要」という考えが記されていた。松原の県道沿いには“撤去が望ましい”と判断された木が多数残っている。

番組が現地確認を依頼した樹木医は「伐採したほうがいい木が多く、放置すべきではない。大切なのは人の命を守ること」と言い切る。現状について、唐津市長に尋ねると、「世界一の松原を、市民と一緒に守ってきた自負がある。その保護とともに、安全に対する責務を果たしていかなければならない」という返答だった。

かつて潮風から田畑を守るために植えられた松が、今、人々を脅かす存在であるとしたら…。このままでは、100万本の景観のための犠牲が繰り返されてしまうのではないかと訴える。