日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’23』(毎週日曜24:55~)では、日本最後の清流と呼ばれる四万十川の異変を追った『四万十川と生きる~最後の専業川漁師~』(高知放送制作)を、きょう30日に放送する。

  • 川漁師の黒澤雄一郎さん

高知県西部を流れる四万十川。広大な流域には、今も手つかずの自然が多く残り“日本最後の清流”と謳われる。アユやウナギ、川エビなど様々な生き物が棲み、その恵みを享受する人々の営みが、昔から脈々と受け継がれてきた。しかし、今、川では急激な異変が起きている。

その象徴が、スジアオノリだ。四万十川の河口は、栄養分が豊富な汽水域が広がる。水温が下がる冬、川底には、ノリがびっしりと生える。1980年代は、水揚げが年間50トンに達し、日本一の産地を誇ったが、近年は水揚げ量が激減。2020年は、わずか0.4トン。そして2021年からは、3年連続でゼロとなった。

「このままでは本当に四万十川はダメになる」と訴えるのは、黒澤雄一郎さん(53)。埼玉から2011年に移住し、今の四万十川では唯一となった専業の川漁師だ。ノリの不漁で、年収は半減。「川底は、細かい土砂、泥に覆われてノリが生えない」と嘆く。その要因は、森林整備で山が荒れ、上流からの土砂が増えたと考えている。

河口から約40キロ離れた上流でも、現状を危惧する人がいる。地元漁協の組合長・金谷光人さん(68)は、建設業も営む。環境調査で川の中を撮影すると、河口と同様に、川底の石が土砂に覆われていた。漁協と建設業という2つの立場を生かし、2022年に河原の掘削作業を実施。細かい土砂を取り除き、大きな石だけ戻して、生き物が棲める隙間を作った。金谷さんは、川の復元に向けて今後も掘削作業を行う。

人々に生きる糧を与えてきた、命輝く四万十川。その輝きが失われる原因は何か。解決に何が必要なのか。黒澤さんや金谷さんの様子を通じて、四万十川の現状を伝える。

担当ディレクターは「きれいな風景で、全国的な知名度を誇る四万十川。しかし、川と生きる人々の営みは消えようとしています。これまでも、川の異変を様々な人々が訴えてきましたが、改善の動きはありません。黒澤さんや金谷さんが指摘する土砂の増加も、山林整備の弊害、支流のダム、温暖化による降水量の増加などが考えられています。また、スジアオノリの不漁については、海水温の上昇を挙げる研究者もいます。様々な要因が重なり、川の異変が生じたと考えられるなか、『できるところから始めないとダメになる』と行動を起こした金谷さん。金谷さんの働きかけで、行政もようやく動き始めた状態です。黒澤さんは『私ができるのは、メディアで訴えて関心を持ってもらうこと』と言います。企画を通じて、四万十川や全国の河川を考える一助になればと思います」とコメントしている。