1993年に登場したスズキの「ワゴンR」以来、軽自動車の標準的なスタイルは高いルーフに短いボンネットを備えたワゴン型に移行したが、現在はそれに後席スライドドアを備えたスーパーハイトワゴンが主流になっている。この中でもダントツの人気モデルがホンダ「N-BOX」だ。
その「N-BOX」は2011年の登場以来、新車販売でほとんどトップの座に君臨してきたが、現行の2代目はすでに6年目に入っている。噂されていた3代目は8月に公開されたが、モデル末期となった7月の販売台数はどうだったのだろうか?
今回も全軽自協(一般社団法人 全国軽自動車協会連合会)が発表した2023年7月の新車販売における人気車種トップ15を紹介しよう。
2023年7月軽自動車人気車種ランキング
順位 | ブランド通称名 | ブランド名 | 販売台数 |
---|---|---|---|
1 | ホンダ | N-BOX | 17,918 |
2 | ダイハツ | タント | 10,255 |
3 | スズキ | スペーシア | 9,804 |
4 | スズキ | ハスラー | 8,189 |
5 | ダイハツ | ムーヴ | 6,791 |
6 | スズキ | ワゴンR | 6,063 |
7 | スズキ | アルト | 5,519 |
8 | 日産 | デイズ | 4,336 |
9 | ダイハツ | ミラ | 4,301 |
10 | 日産 | ルークス | 4,033 |
11 | スズキ | ジムニー | 3,434 |
12 | 三菱 | デリカミニ/eK | 3,280 |
13 | 日産 | サクラ | 3,174 |
14 | ホンダ | N-WGN | 2,252 |
15 | ダイハツ | タフト | 1,678 |
※通称名についてはメーカーごとに同一車名のものを合算して集計(アルト、ワゴンR、ミラ、ムーヴ、eK、ピクシスなど)
※eKにeKクロス EVは合算せず
1位:ホンダ「N-BOX」
ホンダの稼ぎ頭でもあるスーパーハイトワゴンの王者「N-BOX」。ライバルとの大きな違いは、後席や荷室の低床化によって広い室内空間を実現している点が挙げられる。これはホンダの特許技術「センタータンクレイアウト」によるもので、一般的に後席や荷室の下にある燃料タンクを前席下部に配置するというアイデアだ。
「N-BOX」は2011年12月に登場の初代から現行の2代目まで安定した人気を獲得してきたが、ついに2023年秋にモデルチェンジする3代目が公開された。エクステリアは安定感のある四角いフォルムを踏襲しつつ、造形そのものから上質さを感じられるデザインに正常進化している。ベーシックの「N-BOX」では瞳のように丸く、上級のカスタムは横一文字というヘッドライトが作り出す表情も印象的だ。これに対して、インテリアはホンダ初となる7インチTFT液晶メーターの採用などで大きく刷新された。
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2位:ダイハツ「タント」
王者「N-BOX」を追うダイハツのスーパーハイトワゴンが「タント」。実は高い車高と後席スライドドアを最初に組み合わせた“元祖スーパーハイトワゴン”といえる存在だ。ライバルにはない最大の特徴は、助手席側の前後ドア間のピラーをドアに内蔵して巨大開口部を実現した「ミラクルオープンドア」。乗員の乗り降りや大きな荷物の積み込みといったシーンで高いユーティリティ性能を発揮する。
このように特殊な大仕掛けを持つボディのネガ要素を解消するため、現行の4代目ではDNGA(親会社であるトヨタTNGAのダイハツ版)を導入して自動車としてのトータル性能を向上させている。また、軽自動車では定番の上級仕様「カスタム」のほか、2022年10月にはSUVブームに対応した「タント ファンクロス」もラインアップに加えられた。
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3位:スズキ「スペーシア」
「スペーシア」は軽自動車を主業としてきたスズキのスーパーハイトワゴン。先代はダイハツ「タント」の対抗馬として2008年に登場した「パレット」だが、2013年のモデルチェンジでプラットフォームを90kgも軽量化し、減速エネルギー回生機構「エネチャージ」をはじめとした次世代環境技術の装備など大幅な変更があったため、広大な空間をイメージさせる現在の車名に変更された。
快適性や使いやすさは長年の軽自動車開発で培ったスズキのノウハウが詰め込まれているが、特筆すべきは全車にモーターアシストによる「マイルドハイブリッド」を採用して、パワーと省燃費、さらには静粛性を確立している点だろう。バリエーションは定番の上級仕様「カスタム」のほか、SUVテイストの「スペーシア ギア」と軽商用の「スペーシア ベース」がラインアップされている。
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4位:スズキ「ハスラー」
スズキには「ジムニー」という長い歴史を持つ本格派の軽クロカンモデルがあるが、乗用車としては標準的なモノコックフレームにFFの構造を持つ「ワゴンR」をベースに、実用性の高いクロスオーバーSUVに仕立てたのが「ハスラー」だ。2014年に登場する若々しくポップなデザインも好評で、2020年には現行の2代目にモデルチェンジした。
ラダーフレームにFRレイアウトの縦置きエンジンという「ジムニー」ほどの悪路走破性はないものの、運転のしやすさや室内の広さ、さまざまな収納アイデアなどは「ワゴンR」譲りで、休日のアウトドア趣味だけでなく、毎日使用する乗用車としてもストレスなく使えるはずだ。「スペーシア」同様、全車にマイルドハイブリッドを搭載するほか、さらに強力なターボ仕様もラインアップされている。
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5位:ダイハツ「ムーヴ」
「ムーヴ」はスズキの「ワゴンR」のライバルとして登場したトールワゴンで、ダイハツの中では1995年からの長い歴史を持つモデルだ。スーパーハイトワゴンとの違いは全高を1.6m程度に抑え、後席ドアも一般的なヒンジ型にしていることが挙げられる。価格も110万円台からに抑えられ、誰もが使いやすいベーシックな軽乗用車として展開してきた。
現行の6代目は2023年6月に生産が終了したが、後席スライドドアとレトロなエクステリアの派生モデル「ムーヴ キャンバス」の人気は高く、2022年7月にはDNGAとターボを導入してモデルチェンジされたため、本家「ムーヴ」もそのまま販売終了にはならず、普通車向けに開発したハイブリッド技術を実装して再登場するのではないかと噂されている。
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ついに姿を現した新型「N-BOX」は今秋発売
モデル末期の2代目「N-BOX」ではあるが、ふたを開けてみれば7月も悠々とトップを快走するという結果となった。噂されていた3代目の全貌も明らかになり、8月下旬から日本各地で先行展示会が開催される。
新型「N-BOX のデザインはキープコンセプトだが、自由度の高いLEDが普及したこともあり、クルマのキャラクターを印象づけるヘッドライトの意匠に工夫を見せている。スズキの「ハスラー」やダイハツの「ムーヴ キャンバス」、そして三菱の「デリカミニ」のヒットを考えると、軽自動車ユーザーには親近感を持てる愛らしい顔を好む層も多いようだ。
また、Nシリーズ初となるHonda CONNECTも装備し、スマートフォンからエアコンの操作やクルマの位置確認、緊急時はサポートセンターへの通報なども可能になった。最新の安全運転支援機能「HONDA SENSING」もさらに充実させるなど、盤石の仕上がりを見せている。
その一方、ダイハツは仕入れ先火災の影響により6月下旬から7月中旬まで工場の稼働が停止したため、主力の「タント」や「ムーヴ、「ミラ」などの販売台数が前月比でそれぞれ70.4%、61.6%、80.8%と落ち込んだ。「ムーヴ」は6月で生産を打ち切ったことも関係しているはずだが、待望のハイブリッド実装モデルで再登場し、これが「ムーヴ キャンバス」や「タント」にも装備されれば再び「N-BOX」を脅かす存在になるかもしれない。