――子供の頃から小説家になりたいという願望はあったのでしょうか?

小説家になりたいと思うほど小説のハードルは低くなかったので、夢のまた夢でした。でも、ずっと詩を書いていたり、いろいろな歌詞に救われたり、いつでも言葉は寄り添ってくれていて、生きる糧になっていたなと思います。

――何がきっかけで小説が好きに?

森絵都さんの『カラフル』など、小説を読んで涙を流したり、考え方がガラッと変わったり、小説だけの強みがあると子供の頃に身をもって知り、小説が好きになりました。そして、妄想癖があったので物語を自由に作ることは昔からすごく好きでした。

――ご自身に特に大きな影響を与えた本は『カラフル』になりますか?

『カラフル』もそうですが、さくらももこさんの『ひとりずもう』というエッセイも影響を受けました。さくらももこさんはもともと少女漫画が描きかったけどその方向は挫折したということをこのエッセイで知り、あのさくらももこさんでも叶わなかったことがあったというのはすごく勇気をもらいました。

――ワタナベエンターテインメント所属を発表された際に、「社会に誰かに少なからず影響を与えられる存在として生きていきたい」とコメントされていましたが、ご自身もいろいろな作品から影響を受けているからこそ、そういう人になりたいと思ったのでしょうか。

そうですね。東京ドームに立ったときに、誰かになる必要はないなと思ったので、自分のままで生きていきながら影響を与えていけたら。それはBiSHに教わったことでもあり、唯一無二の存在を目指したいなと。小説に関しても、受け入れられそうなことを書くというわけではなく、自分が書きたいことを書いていこうと思います。

――小説第2作『悪魔のコーラス』は由緒あるミッション系の学園を舞台にしたサスペンスですが、この物語を書こうと思ったきっかけを教えてください。

「信じる」とか「人とのつながり」といったふわっとしたものを書きながら考えたいと思って書いた小説で、作家として本格始動という意味でも特別な意味合いを持つ本に。解散後一発目の作品はすごく大切だと思いますが、「信じる」ということをテーマに選びました。

――解散後一発目の作品にこのテーマを選んだ理由とは?

BiSHとして活動し、いろんな人と関わっていく中で、血のつながり以外で人と人をつなげているものって何だろうと考えるようになり、信じることが人と人とをつなげているのかなと思いました。そして、BiSHという大きな過去を背負って生きていく意味も考え、清掃員の目の前から6人そろったBiSHはいなくなったわけですが、残るものは絶対にあるはずで、そういうつながりも考えて、「信じる」や「人とのつながり」をテーマにしました。

――書いていく中で、「信じる」というテーマについて何か気づきはありましたか?

どれだけつらいことがあってもこれがあるから自分は生きていくんだという光がそれぞれにあるのかなと。言葉にするのは難しいから小説にしたというのもあって、読んだ人に感じてもらいたいです。

――人それぞれに信じているものがある中で、モモコグミカンパニーさんとしては、BiSHの活動もご自身の中で信じているものとしてずっとあり続けるのでしょうか。

そうですね。あれだけ自分たちをさらけ出し、それでもついてきてくれた人がいるということは、自分にとって自信になりましたし、その人たちを一緒に東京ドームまで連れて行けたというのは、これからも自分の中で誇りになっていくと思います。

――改めてこの2作目はご自身にとってどんな経験になりそうですか?

半年前頃から解散直前までのとても忙しい時期に書いていたのですが、ソロになった自分へのプレゼントになったかなと。何も出さなかったらこういった取材をしてもらうこともなかったと思いますし、次なる道へつながるファンの人への安心感にもなると思うので、未来へのプレゼントだなと思います。