大河ドラマ初出演にして重要な役どころを演じ切った有村。本作への出演で改めて時代劇の難しさを感じたそうで、「どれだけ自分の佇まいで説得力や重みを持たせられるかと考えると、私にはまだ足りないものがあるなと感じましたし、毎日勉強の連続でした」と振り返る。

また、「古沢さんが『瀬名は現代の女性に近いのかもしれない』とおっしゃっていました。戦国時代と現代をうまく結ぶ役割を担わせていただいているのかなと私は勝手に解釈し、どこまで重みを持たせるのか、少し軽やかに見せるのかというバランスが自分の中で課題で、それを毎回探って瀬名という役と向き合いました」と自身に与えられた役割を把握。

「すべてを受け止める縁の下の力持ちのような女性に出会えて、今まで演じた役柄ともまた違った役に出会えたなという実感がありました。30歳という節目で大河ドラマに初めて出演させていただき、自分の中では大きな、振り返ったときに必ず思い出すであろう作品になったと思っています」としみじみと語った。

瀬名を演じたことで「本当の強さは穏やかでいることなのかな」とも感じたという。

有村自身、常に穏やかな印象があるが、「瀬名ほど穏やかではないです(笑)」と謙遜し、「どんなことがあっても穏やかにいようとするその心がすでに強いというか、私はまだそこまで心が強くないので本当にすごいなと。家康さんをビンタしたシーンが唯一瀬名が怒ったところです」をほほ笑んだ。

この先、「瀬名ロス」「有村架純ロス」になる視聴者も多いと思うが、有村は瀬名と家康の夫婦像を通して視聴者にどんなメッセージが届いたらいいなと思っているのだろうか。

「死と隣り合わせの時代ですが、殿と瀬名の空気感はあまりにもシンプルというか、お互いが安心して暮らせる家……その家族の形が今の私たちが求める形とも似ているなと思います。古沢さんが『瀬名は現代的な女性なのかもしれない』とおっしゃっていたのは、今を生きる自分たちとも通ずる空気感や心情がきっとあるのだろうと。私たちに心がある以上は、誰かを愛おしく思ったり大事に思ったりする。その普遍的なものがどんな時代にもあったという、その事実がこの物語の中で描かれたのではないかと思っています」

第25回を撮り終え松本もロスに陥ったようで、有村は「瀬名との別れのシーンを撮ってから『力が入らない。抜け殻みたい』とおっしゃっていて、松本さん的にも一つの節目が終わり、ここからまた次の章が始まっていくところだったと思います」と語る。

そして、「殿がこれからどう変化していくのか私も楽しみです」と期待しつつ、「私が大河ドラマを卒業したあと、松本さんがどんな風に取り組まれているのか、『大丈夫かな』という思いもありますが、なんとか家康さんとともにまた立ち上がって、平和な世を目指してほしいです」と、瀬名が家康に抱いていた母性のこもった優しさでエールを送った。

■有村架純
1993年2月13日生まれ、兵庫県出身。2010年にドラマ『ハガネの女』(テレビ朝日)で女優デビュー。2013年、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』で一躍注目を集め、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ/2016)で民放連続ドラマ初主演。NHK連続テレビ小説『ひよっこ』(2017)でヒロインを務めた。映画『花束みたいな恋をした』(2021)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。そのほか近年は、映画『るろうに剣心最終章 The Final/TheBeginning』(2021)、『月の満ち欠け』(2022)、ドラマ『石子と羽男-そんなコトで訴えます?』(2022/TBS)、Netflix映画『ちひろさん』(2023)などに出演。

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