スペインで大活躍を演じた久保建英(レアル・ソシエダ)が、日本代表でも眩い輝きを放った。15日に愛知・豊田スタジアムで行われたエルサルバドル代表との国際親善試合で、最も得意とする右ウイングで先発した久保は1ゴール2アシストをマーク。日本を6-0の快勝に導き、第2次森保ジャパンが3試合目であげた初白星の原動力になった。2019年6月のデビューから4年あまり。22歳になったばかりの久保がソシエダに続いて、いよいよ日本代表の中心でも居場所を築き上げようとしている。

  • サッカー日本代表の久保建英(レアル・ソシエダ)

こんな受け答えができる22歳は、サッカー界に限らず、日本社会全体でも稀有といっていい。

MF三笘薫のパスに聞き足の左足を合わせ、日本代表で約1年ぶりとなるゴールを決めたエルサルバドル代表戦後の取材エリア。笑顔で三笘と抱き合ったシーンを聞かれたときだった。

「(メディアの)みなさんにしても多分、表紙にしやすいんじゃないですか」

終わったばかりのヨーロッパのシーズンで、久保はスペインで9ゴール、三笘はイングランドで7ゴールをマーク。両方のリーグ戦における日本人選手のシーズン最多得点記録を塗り替えていた。

特に今年に入ってからのパフォーマンスは、まるで競い合うかのように突出し、スペインとイングランドを席巻した。その2人による歓喜の抱擁は絵になるでしょうと、質問する側が欲しい答えを先読みする形で久保はあえて「表紙――」と言及。逆にメディアの笑いを誘った。

このとき、スペインのサッカーファンを魅了したやり取りを思い出さずにはいられなかった。

例えば自身が放った鋭いクロスが、相手のオウンゴールを誘った2月のエスパニョール戦。勝利した直後のピッチ上で行われた即席インタビューで、久保はオウンゴールにこう言及している。

「主審と話したよ。可哀想だから僕のゴールにしてくれないかなって」

必死にプレーした相手選手への敬意を込めて「可哀想だから」と言及しながら、自分のゴールにならないかと、とっさにユーモアも織り交ぜた。実際に主審と話したかどうかは定かではない。それでも所属するレアル・ソシエダの公式ツイッターは、こんなつぶやきで久保を後押ししている。

「タケの得点だと思う人はリツイート」

強豪レアル・マドリードから先制ゴールを奪い、最終的には2-0で快勝する金星獲得のヒーローになった5月。久保は試合後の記者会見で、スペインのスポーツ紙の名前を唐突に取り上げた。

「少なくとも今夜は、僕の名前がニュースに出るのでうれしいですね。明日の『AS』か『MARCA』には僕の写真が載るはずなので、思い出に残すためにも買いに行こうと思います」

10代前半にバルセロナの下部組織に所属していた久保は、スペイン語を自在に操れる。とっさの機転を利かせて、ウィットに富んだジョークで周囲も笑わせる思考回路も持ち合わせている。

しかし、これだけではソシエダに関わるすべての人々から愛される存在にはなれなかった。

レアル・マドリードから1年目はマジョルカ、2年目はビジャレアルとヘタフェ、3年目は再びマジョルカと期限付き移籍を繰り返した過去3シーズン。久保は苦戦を強いられ続けた。

通算で94試合出場と経験は積んだ。しかし、合計ゴール数は「6」にとどまり、すべてのシーズンで残留争いを経験してきた久保は、不退転の決意を込めてマドリードとの決別を決めた。期限付き移籍ではなく完全移籍でソシエダに加入した昨年7月。久保はこんな言葉を残している。

「期限付き移籍にはいい面も悪い面もある。悪い面はたとえ100%の力を出し尽くしたとしても、周囲からは『どうせレンタルだろう』と見られてしまうこと。今シーズンはそうではなくなるし、このクラブで腰を据えてプレーすることができる点で、僕は非常にポジティブに考えています」

ただ、受け入れる側、特にソシエダのサポーターは久保の実力へ懐疑的な視線を向けていた。入団会見ではサポーターの思いを代弁するように、スペイン人記者から厳しい質問も飛んだ。

「今回の移籍がスペインで覚醒するチャンスになると思うか」

記者をしっかりと見すえながら、久保は静かにスペイン語を紡いでいる。

「そうなるために、僕はここへ来ました」