今回は、「趣がある」の意味や「風情がある」との違い、使い方・例文や類語を解説します。

よく見聞きする一方で、正しい意味が分かりづらい言葉なので、最後までチェックして理解を深めましょう。

「趣がある」とは? 意味と由来

  • 「趣がある」の意味とは

    「趣がある」の意味をご紹介します。

ここでは、「趣がある」の意味や由来を解説します。

「趣がある」の意味

「趣がある」という言葉は、「傾向や工夫が感じられる様子」「しみじみとした風情が感じられる様子」「興味をそそられ、心惹かれる様子」を意味します。

「美しい」などのストレートでシンプルな表現もありますが、「さらに奥深さを感じるとき」「ストレートな言葉に表すのは物足りないとき」に使いたいフレーズです。

「趣」の古語の意味

「趣」という言葉は、古典『源氏物語』や『大鏡』の作中でも用いられる古語の1つです。 古語としての「趣」は、「意向・趣意・心の動き」を表します。物事の様子や内容、風情、情趣を表現するときに使われています。 物事そのものの状態を詳しく表現したいというよりも、「その様子を見た側が何かを強く感じたこと」に焦点をあてるときに使われるニュアンスがある言い回しです。

「趣がある」の由来

「趣」という漢字は、小さな歩幅でせかせかと歩く様子を表す漢字とされています。古くは「走」の字と同じくして使われることがあったため、「早く赴く」という意味も含まれていました。

目的地に急いで向かう様子、ある目的に心が向かう様子を表します。 「趣」は漢字一字で表されていますが、もともとは「おも」と「むき」、2つの単語から成り立つ言葉です。「おも」は「心」、「むき」は「方向」という意味で、心がその方向へ向くような、面白みや興味を引く事柄を表します。

「趣がある」と「風情がある」の違いは?

「趣がある」と「風情がある」は、基本的にどちらも「言い表すのが難しいような深み・味わいがある様子」といったように、同じような意味で使用されます。ニュアンスの違いとしては、「趣がある」の方が「心惹かれる」という意味合いで使用される印象です。

「趣がある」の使い方・例文

  • 「趣がある」の使い方・例文

    「趣がある」の例文と使い方をご紹介します。

「趣がある」は、風景や景色、それを収めた写真や動画を見たとき、それらから醸し出されるしみじみとした味わいや、独特の落ち着いた雰囲気を表すときに使用できます。それらに心惹かれている様子を、やわらかい印象で伝えられる言い回しです。 例文を見ながら使い方を学びましょう。

  • 趣がある庭園を眺めながら、観光を楽しんだ

  • 都会ではなかなか味わえない、趣のある雰囲気を堪能した

  • 美しい景色が描かれた趣のある作品である

  • この作家の書く文章には、ある種の趣がある

  • 彼の舞台での演技は、その役柄の悲哀を演じられるところに趣がある

「趣がある」の類語・言い換え表現

  • 「趣がある」の類語・言い換え表現

    「趣がある」の類語と言い換え表現をご紹介します。

「趣がある」と同じ意味を持つ類語や、言い換え表現をご紹介します。

風情

  • 「この眺めには落ち着くような風情がある」

  • 「この絵画からは風情を感じる」

「風情」とは、独特の趣や味わいを指す言葉です。言葉で表しがたい、得も言われぬ良さを表せる点で共通しています。

情緒

  • 「情緒あふれる街並み」

  • 「情緒が感じられる作品」

情緒とは、喜び、怒り、悲しみ、恐怖、不安などのような、感情の動きを指します。同時に、それらを呼び起こすきっかけとなるものの雰囲気を表します。

味わい深い

  • 「味わい深い色合いの服」

  • 「細かいタッチが味わい深い絵画」

味覚だけでなく、心で感じる味わいの深さを表すときに使いたい言い回しです。噛み締めるほどに味が出てくる様子も表現できるため、「飽きが来ない良さ」も伝えられます。

優艶

  • 「優艶さが際立つ色彩の着物」

  • 「優艶な女性」

優しさと艶やかさ、2つの漢字から成り立つ「優艶」という言葉も言い換え表現として使えます。美しく上品、しとやかな様子を表します。

風流

  • 「風流な趣味」

  • 「風流ですね」

上品な趣があること、先人たちの遺した伝統となる流儀のことを指します。昔は「都の洗練された美」を表す華やかな言葉でしたが、現代ではしっとりと落ち着いた美しさを表現するときに使われます。

エモい

  • 「思い出の写真を見てエモくなっている」

近年、若者を中心に使われるようになった「エモい」という言葉。これも「趣がある」の言い換えとして使用できるでしょう。「エモい」とは、英語のEmotional(意:感情的な)の「エモ」に、日本語の形容詞の語尾にあたる「い」を付けた言葉です。

「感動的な」「感情が強く動かされる」状態を一言で表すときに使われます。 他にも「しみじみする、ノスタルジックである、情緒がある、感傷にひたる、物悲しい」などの感情・印象を含む意味合いもあります。

若者の間では、友人との思い出の写真、夕焼けなどの壮大な景色などを見たときに使われることが一般的です。

「趣がある」の意味を理解して適切に活用しよう

  • 「趣がある」の意味を理解して適切に活用しよう

    まとめ

心の動きを人に伝えるとき、それを逐一具体的に表現することだけが正しいとは限りません。得も言われぬ感動が、激しくも静かに巻き起こったとき、ストレートな表現では表しきれない、複雑さを感じることもあります。

そのようなときに、「趣がある」という言い回しを使ってみましょう。