歌手・タレントとして活動する森口博子が「大人のためのアニソンカバー」をコンセプトとしたアルバム『ANISON COVERS』をリリースした。本作では80~90年代のアニソンをセレクトし、生楽器を中心としたリアレンジ で10曲をレコーディング。自身のセルフカバー「サムライハート ?2022?」をボーナストラックとして含めた全11曲が収録されている。今回、本アルバムについてのインタビューが到着した。

歌詞の意味がより伝わるようアレンジしたアルバム

──今回『ANISON COVERS』をリリースされようと思ったきっかけを教えてください。

2019年から「機動戦士ガンダム」シリーズの楽曲をカバーしたアルバム『GUNDAM SONG COVERS』を立て続けにリリースし、おかげさまでシリーズ3作ともオリコンウィークリー3位以内にランクインしました。そのアルバムは「3」を持って最終章を迎えたのですが、「他にも色々なアニソンを聴きたいです」というファンの方々からの声がたくさん届きまして。

加えて、私がBS11のレギュラー番組「Anison Days」でアニソンを毎回歌っていることもあり、それならアニソンカバーアルバムを制作してみては、という話になりました。

──アルバムのコンセプトは「大人のためのアニソンカバー」。収録曲は80~90年代のアニソンがラインナップされています。

ことしで7年目に突入する「Anison Days」でカバーしたアニソンが、気が付けば250曲近くになっていたんです。番組で歌うたびに「こんなに素敵なアニソンが地球上には溢れていたんだ」と、感動で震えるんですよね。そんな私が出会った楽曲の感動をみなさんにもお届けしたい、一度っきりのオンエアだけでカバーするのはもったいないと思って。そこで、番組でカバーした曲を中心に、まずは80~90年代の名曲たちをピックアップしました。

──名曲を後世に残すという観点からも、意味のある一枚になりそうです。

そう思っていただけると、非常にうれしいです! 名だたる豪華ミュージシャンの方々とのコラボ三昧で、アニソンや森口博子に興味のない方にも音楽的に楽しめる要素が溢れています!今回は原曲の魅力や「そこは聴きたい!」というお決まりのフレーズは残しつつ、特に歌詞の意味がより伝わるようなアレンジをしました。メロディはもちろん、改めてよりアニソンの魅力が身に染みると思います。

──アルバムに収録される各楽曲について教えてください。まずはリード曲の「悲しみよこんにちは」。

86年リリース当初にこの楽曲を聞いたとき、なんで悲しみに「こんにちは」するのか疑問だったんです。できれば「さよなら」したいじゃないですか。ただ、大人になって色々な経験をしてくると、消せない傷や悲しみとか、生きているとあるんだなぁと分かって。その消せない傷との向き合い方、やっと笑顔が出た自分のスタートをこの曲で歌っていると分かったとき、号泣しました。ふいにやってくる悲しみ、それを受け入れて次の扉を開けようとしている健気さに、心が震えたんです。

──曲に込められた思いを改めて聞くと、『めぞん一刻』の主題歌にふさわしい一曲ですね。

そうですね。森 雪之丞さんの深い歌詞と玉置浩二さんの寄り添うメロディ、武部聡志さんのイントロからインパクトあるアレンジ、斉藤由貴さんの健気な歌唱力を含めて、パーフェクトな楽曲です。そんな名曲を今回は、ミッキーこと酒井ミキオさんが夢の扉を開けたくなるようなアレンジにしてくださいました。私がジャズ好きだという事をミッキーが知っていたこともあり、ポップとジャズを織り交ぜたテイストになっています。幸せなサウンドに満ちているので、カラフルなMVと共にたくさんの方に聴いていただきたいですね。

音楽的に楽しめる要素も詰まった一枚

──アルバム2曲目に収録されているのは、『機動警察パトレイバー』オープニングテーマの「そのままの君でいて」。

私、4歳の頃から歌手になりたくて、ずっと夢に生かされてきたんです。でもレギュラー番組でカバーさせていただいた時、心身ともにすごく落ち込んでいて。歌詞の「夢は君の武器のはずだよ」という言葉に背中を押されたんです。「そうだ!そうやって生きてきたんだ」って涙がこぼれて初心に返れました。

──勇気をもらえる曲ですよね。アレンジもカッコいいです。

そうなんです!ユーミン(松任谷由実)のコンサートの音楽監督・武部聡志さんにピアノロックでとリクエストさせていただきました。デモテープの段階から感動が止まらなかったんです。イントロから洗練されたスタイリッシュな武部さんの演奏に引き込まれました。20代からお世話になっていますが、楽曲の魅力や、そのアーティストに合うテイストを引き出すセンス、流石だと思います!

──続いて、『ガサラキ』のエンディングテーマ「LOVE SONG」。

番組でカバーしたとき、種ともこさんの想像力を掻き立てられるような胸が締め付けられる歌詞、新居昭乃さんの民族的で広大な世界が素晴らしいと思った一曲です。この曲では、こぶしをコロコロ回しました。実は私、小学生のころに通っていたボイストレーニングで演歌も歌っていたとき「ポップスの歌手になりたいなら癖がつくから、演歌はダメ」と禁止令が出たんです。それからもう何十年も経っているから時効かなと思い、思い切りこぶしを回しました。

──4曲目は『ドラゴンボール』のエンディングテーマ「ロマンティックあげるよ」。

凡人では思いつかないような技ありの楽曲を、あえて押尾コータローさんのギター1本というシンプルなアレンジで挑戦してみました。押尾さんは1人で演奏しているときでも、大勢で音を鳴らしているように感じるテクニック・熱量・音色を持っていて本当にカッコイイ! パーカッシブなサウンドが印象的な押尾さんが、いつもに増してキラキラなサウンドが響いているので、そこにも注目しながら名曲を楽しんでください。

──5曲目は「風のノーリプライ」。

「ガンダム」ファミリーの鮎川麻弥さんの楽曲で、私もふだんから鼻歌でよく歌っているくらい大好きな曲です。作詞は私のデビュー曲も手掛けてくださった売野雅勇さん、そして作曲は、幼少期に多大なる影響を与えてくださった筒美京平先生。このおふたりの日本人の琴線にふれる美しい、宇宙に上昇するような世界観がたまらないですね。

──本曲では、ジャズヴァイオリニストの寺井尚子さんとコラボされています。

ボーカルと演奏同時レコーディングだったんです。バンドリハの尚子さんの演奏を聴いて涙が…。メロディーを弾いていらっしゃったんですが、私がこれから歌おうとしている呼吸・表現と全く一緒だったんですよ。この曲への解釈が一致していたことに感動しました。まさに歌心のある素晴らしいヴァイオリン。寺井さんの情熱的でドラマティックな音色は、多くの方が心を掴まれることを確信しています。