里見香奈女流王位に伊藤沙恵女流四段が挑戦する第34期女流王位戦五番勝負は、第4局が6月7日(水)に徳島県徳島市の「JRホテルクレメント徳島」で行われました。対局の結果、121手で勝利した里見女流王位がスコアを3勝1敗として女流王位5連覇を飾りました。

第2局のリベンジなるか

開幕戦こそ落としたもののその後の連勝でスコアを逆転した里見女流王位は、本局でも得意の先手中飛車の出だしを明示します。後手の伊藤女流四段が向かい飛車で対抗したのを受けて居飛車に振り戻したのは今シリーズ第2局と同様の戦型選択で、盤上は居飛車対向かい飛車の対抗形に落ち着きました。先手は5筋、後手は2筋の位が主張点です。 その対局で銀冠に組み替えて敗れていた後手の伊藤女流四段は、本局では守りの右銀を6筋に上がる工夫を披露します。放っておけば中央に手厚い好形を作る狙いながら、実戦ではここをチャンスと見た里見女流王位がすぐさま4筋の歩を突いて戦端が開かれました。この瞬間、右金が離れ駒となっている伊藤女流四段は慎重な対応を求められます。

里見女流王位が攻め切って5連覇達成

4筋に飛車を回った里見女流王位は勢いよく跳ねだした右桂を起点に攻めを継続。この桂を成り捨てて空いたスペースに銀を繰り出したのが継続の好手で、うまく4筋の駒をさばきながら敵陣に飛車を成り込んだ里見女流王位がペースをつかむことに成功しました。伊藤女流四段は飛車を4筋に転換して勝負を迫りますが、やや遅きに失した感は否めません。 豊富な持ち駒を手にした里見女流王位はここから最後の攻勢に出ます。6筋に桂を打ったのが攻防の好手で、これで後手の角の活用を抑えます。終局時刻は18時52分、後手の粘りに苦戦しながらも最後は飛車を犠牲にする軽やかな寄せを決めた里見女流王位が勝利。開幕黒星から怒涛の3連勝で通算9期目となる女流王位戴冠を決めました。

  • 里見女流王位は「似た形が多かったが細かい駆け引きがあり充実していた」とシリーズを総括(写真は33期女流王位戦五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

    里見女流王位は「似た形が多かったが細かい駆け引きがあり充実していた」とシリーズを総括(写真は33期女流王位戦五番勝負第2局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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