第71期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は、挑戦者決定トーナメント1回戦の豊島将之九段―本田奎六段戦が6月2日(金)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、105手で勝利した豊島九段が斎藤慎太郎八段の待つ2回戦への進出を決めました。

豊島九段の三間飛車穴熊

振り駒が行われた本局、先手となった豊島九段は三間飛車穴熊の態度を表明します。居飛車党として知られる豊島九段の意表の作戦選択にもかかわらず、後手の本田六段は淡々と駒組みを進めて自玉を銀冠に収めました。本田六段が金銀四枚の堅陣を組み上げたのに対して豊島九段も左辺に石田流の理想形を築き、局面はともに不満ない持久戦に落ち着きます。

駒組みが頂点に達したところで後手の本田六段は角交換を迫って戦端を開きます。続いて8筋に打ち込んだ角で香取りをかけたのは石田流の弱点を突く手筋の攻めですが、豊島九段もここは読み筋。強気の飛車交換で大さばきに持ち込めば穴熊の堅さが生きると見た大局観がよく、形勢は互角ながらもここから徐々に豊島九段がペースをつかみ始めます。

豊島九段の大局観が光った一局

必然手の応酬が続いたのち、本田六段が5筋の歩突きで先手の銀を取った局面が中盤のポイントとなりました。駒損が確定し困ったように思われた豊島九段ですが、じっとこの歩を取り返したのが手厚い好手。この歩を拠点として次に桂を打つ手が、後手の馬の利きを止めつつ銀冠の金を狙う一石二鳥の手になるのを見越しています。

手番を握った豊島九段は歩の手筋を駆使して反撃を開始します。5筋に打った垂れ歩がお手本通りの「と金の遅早」の攻め。こうなればあとはと金作りが間に合うように後手から攻めを受け流せばよく、方針がわかりやすくなりました。終局時刻は20時44分、本田六段の猛攻をかわし切った豊島九段が快勝で2回戦進出を決めました。

勝った豊島九段は次戦で斎藤慎太郎八段と対戦します。

  • 豊島九段はかつてタイトル戦で振り飛車を採用して勝った経験を持つ(写真は第6期叡王戦五番勝負第4局のもの 提供:日本将棋連盟)

    豊島九段はかつてタイトル戦で振り飛車を採用して勝った経験を持つ(写真は第6期叡王戦五番勝負第4局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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