結成16年以上の漫才師が参加する新たなお笑い賞レース『THE SECOND~漫才トーナメント~』の「グランプリファイナル」が、フジテレビ系で20日(19:00~)に4時間超にわたり生放送される。

大会の開催発表当初、『M-1グランプリ』を卒業した漫才師たちが再び賞レースに巻き込まれることにネガティブな反応も懸念されたが、バラエティの第一線で活躍する人気者たちが軒並みエントリー。生放送への進出を決める「ノックアウトステージ」は、生配信のみにもかかわらずTwitterで関連ワードがトレンド入りするなど、盛り上がりを見せてきた。

組合せ抽選会も終え、いよいよ最後の本番を迎えるところで、チーフプロデューサー・石川綾一氏と、「グランプリファイナル」で東野幸治とともにMCを務める宮司愛海アナウンサーにインタビュー。宮司アナがこの大会から学ぶこと、そしてジャンルの違う報道キャスターの仕事に生きることとは――。

  • 『THE SECOND~漫才トーナメント~』グランプリファイナルMCの宮司愛海アナ(左)とチーフプロデューサーの石川綾一氏 (C)フジテレビ

    『THE SECOND~漫才トーナメント~』グランプリファイナルMCの宮司愛海アナ(左)とチーフプロデューサーの石川綾一氏 (C)フジテレビ

■異例の起用も報道局と円満合意「全社を挙げた新しい賞レースなら」

――今回、宮司さんをMCに起用された狙いは何でしょうか?

石川:女優さんにお願いするという考え方もあると思うのですが、日置(祐貴氏、総合演出)とも話して意見が一致したのは、フジテレビの漫才賞レースなので、視聴者の方がひと目で見てフジテレビの番組だと分かっていただけるようにしたいということで、MCはアナウンサーで行こうと。ですからまず、フジテレビの看板アナウンサーであること。また、4時間超の生放送なので、帯番組を経験していること。それと、意外性のある人であること。この3つの条件が出てきて、年明けには「宮司しかいないね」となりました。夕方のニュースを担当しているので平日のゴールデンだと出演できないのですが、その段階でOA日も土曜日と決まっていたので、千載一遇のチャンスだと思って依頼したんです。

――報道番組のメインキャスターがお笑い賞レースのMCをやるというのは、異例のことだと思います。

石川:本来ならこういうケースはないんですけど、報道局も「セカンドチャンス」という今の時代にマッチした趣旨に賛同してくれたそうで、「フジテレビが全社を挙げて開催する新しい賞レースなら、ぜひ宮司で行きましょう」と、円満な合意のもと実現しました。その結果、『Live News イット!』で『THE SECOND』の話題をニュースとして扱ってくれていますから。

宮司:なかなかこんなことないですよね。

石川:情報番組だったら珍しくないんですが、宮司がMCを担当することが決まったとき、ベスト8が決まったとき、そして「グランプリファイナル」の組合せ抽選会の会見と、3回も取り上げてくれて、報道にも本当に感謝しています。

宮司:実は私、19日まで広島のG7サミットの現地取材に行っていて、トンボ返りして20日の「グランプリファイナル」で司会なんです。本当にいろんな方々に調整していただきました。

――G7からお笑い賞レースというのは、すごい振り幅ですね! 優勝者が『イット!』のスタジオに生出演するとか、面白そうですよね。

宮司:報道番組のスタジオに(笑)。でも、本当にそうなったら楽しいですね!

  • (C)フジテレビ

■自分の中にある焦り…きっかけにしたいという気持ちも

――宮司さんは今回のお話がきたときの心境としては、いかがでしたか?

宮司:すごくうれしかったです。スポーツ番組を担当していたとき、お笑いの賞レースってスポーツと近いものがあるなと思って、アスリートの方々と芸人の皆さんをちょっと重ね合わせて見ているところがあったんです。特に『M-1(グランプリ)』は、タイトルがあるのとないのでその後の人生が変わるというのが、すごいことだけど、残酷なことでもあると思って。そういうところがスポーツに似てるなと思いました。

石川:そこも、宮司にお願いした決め手でした。「漫才師ファーストの大会にしよう」とずっと言っているんですが、宮司はオリンピックの取材もしているし、特に東京五輪が1年延びたことも経験しているから、いろんな思いを抱いたアスリートを見てきています。まさに「アスリートファースト」の取材をしていたので、「セカンドチャンス」という趣旨にも通じるし、「漫才師ファースト」の大会に適任だと思いました。

宮司:その「セカンドチャンス」という趣旨が、また素敵だなと思ったんです。たとえば、すごく良いものを持っているけど、これまで大輪の花を咲かせるチャンスにうまく巡り合えなかった、といった方々が、この大会をきっかけに大きく大きく花開いて、さらに活動の幅を広げていく。その手助けができるというのがうれしくて。あと、どこかシンパシーを感じる部分もありました。

――シンパシーですか?

宮司:はい。生意気ながら、中堅くらいの年次に差しかかって、これまでいろんなことを経験させてもらい、何となく世の中の方々に知っていただくようになったのではないかと思うのですが、一方で個人的には少々悩んでいるところもありまして…。自分の中にある焦りのような気持ちを、この大会に重ね合わせているところがあるんです。だから、芸人さんたちがこれをきっかけにチャンスに巡り合うということと同時に、自分としても何かきっかけにしたいという気持ちも正直少しあったりするんです。でもそれは、この大会を“利用したい”ということではなく、まだまだ“学ぶことがたくさんある”という思いですね。

  • 「ノックアウトステージ16→8」のMCを担当した(左から)宮司アナ、トレンディエンジェル・たかし、斎藤司 (C)フジテレビ

――これだけのキャリアがありながら、厳しい賞レースに再び参加する漫才師さんの姿に、「諦めないことの大切さ」というのも感じます。

石川:誰しも人生において後悔ややり直したいことってあると思うんですよ。そんな中で、今まさに「人生100年時代」と言われて、「セカンドキャリア」とか「リカレント」という言葉もあるくらいですから、諦めなくてもいい世の中になっている気がするんですよね。『THE SECOND』に出場してくれた漫才師さんは、諦めていない人たちの代表で、そういう方々が活躍することは、今の時代にすごく意味があることだなと思うんです。

――報道番組のメインキャスターのお仕事に、全くジャンルが違うお笑い賞レースの司会の経験というのが生きることはありそうですか?

宮司:たくさんあると思います。ジャンルは違えど、根本にある仕事への向き合い方は一緒ですよね。芸人さんたちは笑いに対してひたむきに、いろんな角度からいろんな人たちがその中核みたいなところに迫っていくということをされているわけで、それこそがプロの仕事をするということだと思うんです。プロとしてどういう振る舞いをして、どういうふうに仕事に臨んでいくのか、それを舞台上でも舞台裏でも見られるので、すごく勉強になります。

――舞台裏でもですか。

宮司:どれだけ緊張していても、密着のカメラにはいつもの感じで対応するとか、あとは、スタッフさんに対して優しいですし、私にも話しかけてくださる方が多いんです。プロとしてどう仕事をするのかという姿勢と、舞台上・舞台裏での振る舞い、そこから学んだことは、報道の仕事にも生かしたいなと思います。