CDやラジオなどの媒体はもちろん、今やサブスクで音楽を聴くのが当たり前の時代。TikTokが新たな音楽流行拠点ともなり、多様な形で音楽を楽しめるようになりました。しかし、あまりにもたくさんの楽曲が溢れていて、なかなか好みのアーティストに出会えなかったり、何から聴けばよいかわからなかったりということは誰しも経験があるはず。

そこで今回は、aikoやGLAY、Official髭男dismなど今日のJ-POPシーンを牽引するアーティストを数多く抱えるレコード会社・ポニーキャニオンに「2023年推しアーティスト」を独占取材。長年映像・音楽業界を支え、数々のヒットソングを世に輩出してきたレコード会社が太鼓判を押すのは一体どんなアーティストなのでしょうか。

ポニーキャニオンってどんなレコード会社?

ポニーキャニオンは、1966年に設立したフジサンケイグループの映像・音楽ソフトメーカー。日本で最初期にミュージックテープやビデオソフトを販売した会社であり、1975年に同社が販売し450万枚の大ヒットを記録した「およげ!たいやきくん」は、若い世代でも一度は耳にしたことがあるでしょう。


過去に、アイドル部門には田原俊彦や岩崎良美が、演歌・歌謡曲部門には山本譲二や石川さゆりなどが在籍。現在はメインレーベルのPONY CANYON内に2020年に新設されたIRORI Recordsなどのレーベルを有し、aiko・Official髭男dism・阿部真央・w-inds.・工藤静香・GLAY・BAND-MAID・ヒグチアイなど、シンガーソングライターからロックバンドまでバラエティ豊かなアーティストが数多く在籍しています。

ポニーキャニオンの2023年推しアーティスト5選

今回取材に応じてくれたのは、ポニーキャニオンの杜 浩亮 (もり ひろあき)さん。YouTubeやTikTokなどSNSによってチャートが大きく変動し、耳馴染みがよく印象に残りやすい楽曲がヒットする傾向にある現在の音楽業界。業界最前線の現場でさまざまなアーティスト・楽曲に触れるレコード会社のスタッフは、どんなアーティストのどんなところを魅力と感じるのでしょうか。杜さんには、各アーティストの魅力を存分に語っていただきました。

TOMOO

Official髭男dismの藤原聡をはじめ、YOASOBIのikura・Vaundy・森七菜・マカロニえんぴつのはっとり・三浦大知など数多くの著名なアーティストから支持を受けるTOMOO(トモオ)。今後の日本の音楽シーンを代表する存在になり得るポテンシャルを多分に秘めている、次世代アーティストの一人です。

キュートなルックスとは裏腹に、力強いアルトボイスと優れたソングライティングセンスが魅力の彼女。瑞々しい情景描写が光り、感情豊かに表現する歌詞も人気の要因のひとつ。ライブにも定評があり、2022年8月に行われたLINE CUBE渋谷でのライブはソールドアウト。2023年6月には、大阪と東京でNHKホールでの公演を控えているので、ぜひチェックしてみてください!


▶推し曲
・Cinderella
どことなくブラックな雰囲気が漂いながらも、TOMOOならではの詩的な表現で美しくまとめられたラブソング。年月を重ねることで価値観や考え方が変化していった自身の経験をもとに作られた曲で、ファンからはそのソングライティングセンスの高さを称賛する声が多数寄せられています。


・17
さまざまな意味を込めた「17」が印象的な本曲。大切な人との何気ない日常を回想しながら、大人になることに対する寂しさと嬉しさが同居する複雑な心情を綴ったバラードです。力強くも静かなアルトボイスでスッと聴き入ってしまう耳馴染みの良さも魅力的。

・夢はさめても
テレビ東京の「水ドラ25」枠にて2023年4月6日より好評放送中の『ソロ活女子のススメ3』オープニングテーマに起用されている「夢はさめても」。「抱き合えるならば骨まで抱きしめて」「重なってゆける(甘すぎた/愛おしい)夢はさめても」と歌う本曲は、TOMOOが10代の頃に書いたものだという。リリックセンスに溢れた彼女の世界観が十二分に感じられる「夢はさめても」を、ぜひドラマと一緒に味わって欲しい。

・オセロ
メジャーデビュー後初のシングルとしてリリースされた楽曲で、自身が持つ二面性をオセロになぞらえたTOMOOを代表する一曲。ポップなメロディのなかにもダークさが見え隠れし、力強い歌声と印象的なピアノのメロディに一度聴いたらクセになってしまうこと請け合いです。

超学生

11歳の頃に初めて「歌ってみた動画」を公開し、その後もコンスタントに動画を公開し徐々にネットでの人気・知名度が拡大。現在のYouTube登録者数は73万人にものぼり、若年層を中心に多くのファンを抱える若手人気No.1の歌い手です。2022年からは、精力的にオリジナル楽曲をリリース。Amazon Prime Video『仮面ライダーBLACK SUN』で初の大型ドラマ主題歌に抜擢されメジャーデビューを果たしました。オリジナリティ溢れる世界観とユニークなキャラクターで、世界で愛される歌い手になるポテンシャルを秘めています。端正な顔立ちからは想像できない”超絶ガナリヴォイス”で、どんな曲でも自分の色に染めてしまう歌唱力の持ち主なので、これからの作品にも要注目です!


▶推し曲
・ガトリングアジテイタア
1stアルバム「超」に収録されたシングル。心地よい疾走感が印象的なアップテンポのメロディに乗せて捲し立てるように早口で歌い上げる本曲は、超学生のポテンシャルの高さを強く印象付ける楽曲と言えるでしょう。イラストレーターの村カルキとコラボしたMVも話題に。

・Let's go
超学生自身が「POPでHAPPYな曲」と評する本楽曲は、爽快かつ軽快なメロディが印象的。思わず口ずさみたくなるようなキャッチーさと自然と体が動くようなダンサブルな一曲は、「嫌いだったコンプレックスさえも 側から見れば輝く個性」という前向きな歌詞も相まって大きな支持を集めました。MVのサビの振り付けにもぜひ注目してみて!


・Did you see the sunrise?
『仮面ライダーBLACK SUN』の主題歌に起用された、デビュー後初のシングル。力強さの中に切なさを孕むエモーショナルな歌い回しで、作品のダークな世界観や物悲しさを見事に表現した一曲です。

eill

eillは、高いソングライティングセンスと情緒豊かな歌声を併せ持つディーヴァ。日本はもとより、台湾でも大ヒットしたアニメ映画『夏へのトンネル、さよならの出口』の主題歌・挿入歌を筆頭に、大人気アニメ『東京リベンジャーズ』の主題歌など、これまで数々のタイアップに抜擢。BE:FIRSTへの楽曲提供なども行っており、その実力は折り紙つき。若い世代のリーダーとして、楽曲で、歌で、多くの人々を魅了する彼女は、今後老若男女問わず全世代から支持される圧倒的な存在になっていくことでしょう。


▶推し曲
・スキ
誰かを好きになると時々ふと切なくなったり胸が苦しくなったりする一方で、世界が鮮やかに輝いて見えるときがある…そんな恋心をストレートに表現した本楽曲は、特に若い女性を中心に多く共感を集めています。eillの透き通るような歌声が、ピュアな恋心を歌う楽曲と絶妙にマッチした一曲。


・フィナーレ。
アニメ映画『夏へのトンネル、さよならの出口』の主題歌であり、“色褪せない愛”を歌ったエモーショナルなラブソング。幻想的な雰囲気を感じさせる楽曲で、ひと夏の美しいストーリーを描いた作品のイメージにぴったりと言えます。


・ここで息をして
アニメ『東京リベンジャーズ』のエンディングテーマに起用された、eillの記念すべきメジャーデビューシングルです。歌詞にはヒロインの「真っ直ぐで素直な思い」が綴られていますが、繊細なピアノサウンドを効かせたジャジーな雰囲気の曲調からはヒロインの「芯の強さ」が感じられ、その二面性も魅力的。

Kroi

Kroiは、R&B・ファンク・ソウル・ロック・ヒップホップなど、多様なルーツを自分たちなりに解釈し、ミクスチャーな音楽性を提示する新進気鋭の5ピースバンドです。昨年はFUJI ROCKへ初出演を果たしたほか、国内の主要フェスや大型イベントにも多数出演。LINE CUBE渋谷公演を千秋楽とした全国17公演のツアーでは、1万人動員を達成。ライブバンドとしての立ち位置を確実なものとしつつあります。また、現在はNHKホール公演が千秋楽となる全国15公演のツアーの真っ最中。唯一無二のセンスとユーモアで大きな話題を集め、ブレイク間近のバンドの一組です。


▶推し曲
・Hard Pool
予測がつかないメロディ展開で聴けば聴くほどクセになる独特なリズムが印象的な本楽曲は、モダンなミクスチャー感を孕むKroiらしさ溢れる一曲。途中で挟むラップパートでは、言葉選びのセンスが光っています。ABEMAのニュース番組『ABEMA Prime』の1月度エンディングテーマにも抜擢されました。


・熱海
2ndアルバム「telegraph」収録の本楽曲は、“夏に似合う明るい曲”をイメージして作られました。弾けるような開放感に満ちた印象で、どこか郷愁感も同居するような爽やかな一曲です。


・Balmy Life
Billboard Japan Heatseekers Songで2週連続1位を獲得したり、全国47局以上のラジオ局でパワープレイを獲得したりと、リリース後たちまち注目を集めた「Balmy Life」。フジテレビ系ドラマ木曜劇場『silent』の劇中に使用されたことでも話題を呼び、Kroiの名前が広く知られるきっかけとなりました。キレキレのラップを効かせ次々に展開が変わるメロディラインは中毒性が高く、Kroiの魅力を存分に堪能できる一曲と言えます。

ツユ

ツユは3人組の音楽ユニット。作詞作曲・ギターの “ぷす” が織りなす斬新な楽曲構成と、可憐に、そしてたおやかに歌い上げるボーカルの “礼衣” の歌唱力、そして “miro” の煌びやかなピアノが楽曲に彩りをもたらすのが最たる魅力。ツユの楽曲は、「報われない負の感情」など劣等感をテーマにした楽曲が多く、10代など若年層を中心に人気拡大中。個性的なサウンドとアニメーションを駆使したMVが海外でも刺さり、YouTubeのチャンネル登録者数は120万人を突破。TVアニメ『東京リベンジャーズ』聖夜決戦編のエンディング主題歌に抜擢されたことでも着実にファンベースを増やしました。YouTubeに投稿しているMVには各国の字幕を設定しているため、国境を超えて共感されているのもブレイクする要因の一つといえるでしょう。


▶推し曲
・くらべられっ子
そのタイトルが示す通り、他者と比べることで誰しもが抱く「劣等感」を歌ったツユ4枚目のシングル。「周囲から比べられること」、「誰よりも自分が一番自分を傷つけていること」など、苦しみから開放されたいと切に願う心の叫びをありのままに表現、SNSでは共感の嵐が。痛みを分かち合い、励まされるような、感情に寄り添う一曲です。


・アンダーキッズ
行き場のない若者が居場所を求め、極限まで追い詰められる感情がリアルに表現した歌詞が印象的な本楽曲。自身が「極限までツユ感出した」と語る通り、苦しみやもがきをありのまま表現した「らしさ」溢れる一曲で、疾走感のあるメロディと力強い歌声も歌詞に絶妙にマッチ。多くの人が勇気づけられたことでしょう。 


・傷つけど、愛してる。
力強くエモーショナルな歌い出しから幕を開ける本楽曲は、TVアニメ『東京リベンジャーズ』聖夜決戦編の主題歌として書き下ろされた一曲。大切なものを守りたいと強く願う想いを綴った歌詞は、多くの共感を集めています。アニメのエンディング映像とは違った魅力のMVにも要注目です!

まとめ

ポニーキャニオンが推薦する新人アーティスト5選、いかがでしたでしょうか。今回ご紹介したアーティストに共通しているのは、 “新しさがありながらも耳馴染みのよいメロディを奏でる” こと、心の奥にある葛藤や模索など、さまざまに揺れ動く感情をありのまま言葉にしている楽曲が多いことです。特に近年は負の感情を赤裸々に綴った楽曲が強い支持を集める傾向にあり、愛や恋を歌う曲だけでなく、ありのままの自分を肯定しようと背中を押してくれる曲のヒットが多く見られます。令和の時代にヒットする楽曲というのは「聴く人にそっと寄り添い、勇気をもたらすこと」が大切なポイントであると言えそうです。

今後もシリーズ企画として、レコード会社が推薦するアーティストをご紹介していきますので、ぜひご期待ください。

(KKBOXライター:KKBOX編集室)