正直なところ、『ブリテンズ・ゴット・タレント』の全盛期は過ぎ、制作を見送る事態に追い込まれたコロナ禍を乗り越えたものの、復活した今も番組存続の危機に見舞われている。だが、サイコ・エンタテインメントが制作する王道のテレビエンターテインメント番組はなかなかにしぶとい。若年層からも支持を集め始めている。

サイコ・エンタテインメントの代表番組の1つにある音楽オーディション番組『ポップ・アイドル』のオーストラリア版が、4月に開催されたフランス・カンヌの世界最大級の番組コンテンツ見本市・MIPTVで若年層から支持される番組として報告された。フランスの大手番組リサーチ会社・グランスによると、18~34歳の年齢層から20%以上のシェアを獲得しているという。

競争が激しい世界のエンターテインメント業界で生き残り続けるサイコ・エンタテインメントの創設者は、『ブリテンズ・ゴット・タレント』にも出演している。審査員席の画面右端に座り、審査員長を務めるサイモン・コーウェルである。とにかく明るい安村に最初こそ手厳しい目線を送っていたが、最終的には立ち上がって彼に拍手を送っていた人物だ。

「君は、今シーズン一番面白い出場者だ。本当に面白くて独創的だ」と、とにかく明るい安村に対して最上級の褒め言葉で称えていたサイモン。あくまでも想像の範囲に過ぎないが、彼は言語や人種の壁を越えて、笑いを作り出す魅力の底力を改めて感じたのではないか。

『ブリテンズ・ゴット・タレント』はもともと歌やダンスに限らず、スタンダップ芸や手品など幅広い芸事を扱い、出演者のタレント性にフォーカスしてきたことからも、とにかく明るい安村のユニークさが認められたのは必然的なことである。さらに、ダイバーシティがトレンドの時代を味方につけて、独創的な日本人スターの出現がまだまだ続いていくことに期待できそうだ。