• 「ちいかわ」 (C)ナガノ/ちいかわ製作委員会

――近年の新たな試みとして、2022年にはアニメ『ちいかわ』が始まりました。

高橋:社内のアニメ制作部と原作のナガノさんのチームが、アニメ化に向けてご相談を始めた頃、『めざましテレビ』にお話がありました。すでにTwitterのショート漫画としてとてもバズっており、単にかわいい子ども向けのアニメではなくて、シニカルに大人の社会を描いた奥深さがあり、これは面白いと思い、1作品1分の尺で『めざましテレビ』でぜひやりましょうということになりました。「ちいかわ」たちを応援したくなる、誰もが感情移入できる物語で、『めざましテレビ』のテンポ感にもぴったり。正直、最初はここまでの社会現象になるとは想像できていなかったのですが、反響を受けてこの4月から週2回放送しています。

 やはり時代をつかんでいるコンテンツとコラボレーションすることによって、『めざましテレビ』を新陳代謝させることはとても大切だと思うんです。30年も続くと、普通にやっているままではどんどん古臭く見えていくので、その中でどう新しいアイデアを入れていくかが大切で、『ちいかわ』はすごくハマったなと思います。

――この4月からもう1つ新たな試みとして、番組キャラクターの「めざましくん」が最新のモーションキャプチャー技術を使って、バーチャルでスタジオに登場するようになりました。

高橋:社内のCGチームが「今こんなのを開発中なんだけど…」と見せてくれたのが最初だったのですが、それが2月の話だったんです。でも、やるなら4月からやったほうがいいという話になって、急ピッチで精度を上げていただいて、ギリギリ間に合いました。これも『ちいかわ』と同じで、古い番組に見えないようにしたいということで導入しました。めざましくんは30年出演しているのに、これまで出演者と絡むことができなかったのが、有機的に軽部さんや三宅(正治)さんにツッコんだりできて、番組としてはとてもいい武器を持ったなと思っています。

軽部:30年一緒にやってきているのは、コーナーだと「わんこ」と「占い」、キャラクター的には「めざましくん」と「軽部」ですから、同期だと思ってるんです。一緒にやってきた同胞・親友と、やっと番組内でコミュニケーションが取れるんですから、もう感激ですよ。30年かかったね…。

  • バーチャルめざましくん (C)フジテレビ

――テーマソングもこれまでいろんな曲がありましたが、4月からはVaundyさんが書き下ろしたAdoさんの「いばら」が流れています。

高橋:毎年アーティストの方に、「視聴者に寄り添って心のスイッチを毎朝入れてくれる楽曲」を制作してほしいとお願いしているんですけれど、この3年はコロナ禍だったので、そっと背中に手を当てるような温かく優しいテーマソングになっていたんです。今年はいよいよ制限が解除されていく中で、みんなそれぞれ我慢していたことを始めるタイミング。そんな中でVaundyさんと直接やり取りさせていただいたのですが、「ただ優しいだけではなくて、強くて優しいメッセージの形もあるのではないか」というお話を頂き、今回は熱くロックで、視聴者の心のエネルギーになる、とても前向きな楽曲を制作していただきました。

■“めざましらしさ”とは…

――改めて30年の節目を迎えて、今後どんな『めざましテレビ』にしていこうと展望されていますか?

高橋:家族や仲間とシェアしてほしい新しい情報をどんどん発信して、視聴者にインプットしていただくのがやっぱり一番大事なことで、その上で皆さんの時計代わりとなって、『めざましテレビ』を見ながら朝の準備をしているうちに、徐々に心のスイッチが入っていくことが、“めざましらしさ”なのかなと思っています。めざましを見ながら「今日も1日頑張ろう」と思っていただきたい。そこにブレは一切ありません。その上で、30周年イヤーは思い出に浸り過ぎると、過去を振り返ってばかりになってしまいますし、Adoさんのテーマソングもすごくロックで前向きな曲なので、未来に向かって新しいことをガンガン始めるポジティブな1年にしたいと思っています。

軽部:最初に八木さんと大塚さんと一緒に作った“めざましらしさ”は、今も脈々とあるわけですよ。いろいろ変わってきてはいるけど、やっぱり残ってる。それを30年続けている僕は、唯一の証人として継承する役割を担ってるんだろうなと思います。

――八木さんは、どんなところを期待したいですか?

八木:“めざましらしさ”って出演者同士が仲良しでファミリーな感じかなと思ったんです。でも、今日こうやって話をして思ったのは、多少の反対があってもやり続けるとか、恐れずにやるっていうチャレンジが、秘伝のタレみたいに同じ味のようで時代に合わせてちゃんと変化してる、そういうところが“めざましらしさ”として続いていることなのかなと。その進化を、これからも頼もしく拝見したいと思います。

  • (C)フジテレビ

●八木亜希子
1965年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学卒業後、88年フジテレビジョンに入社し、同期の有賀さつき、河野景子とともに“三人娘”と呼ばれて人気を博す。『めざましテレビ』で初代女性メインキャスターを務めたほか、『笑っていいとも!』『さんまのスポーツするぞ!大放送』『スーパーニュース』などを担当し、00年に退社してフリーに。その後、『BSフジLIVE プライムニュース』(BSフジ)、『久米宏のテレビって奴は』(MBS)などで司会を務めたほか、映画『みんなのいえ』で本格的に女優デビューを果たし、『あまちゃん』(NHK)、『カルテット』(TBS)などのドラマにも出演。現在は『八木亜希子 LOVE&MELODY』(ニッポン放送)、『八木亜希子のおしゃべりミュージアム』(BSフジ)、『AS-Lab(アスラボ)チャンネル』(東京大学エクステンション)、『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー』(フジ)などに出演する。

●軽部真一
1962年生まれ、東京都出身。早稲田大学卒業後、85年フジテレビジョンに入社。『おはよう!ナイスデイ』を担当後、94年に『めざましテレビ』がスタートして以来、一貫してエンタメコーナーを担当する。現在はほかにも、『MUSIC FAIR』、『男おばさん!!』(CS・フジテレビTWO)、『日曜邦画劇場』(日本映画専門チャンネル)、イベント『めざましクラシックス』を担当。22年7月から役員待遇エグゼクティブアナウンサー。

●高橋龍平
1978年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒業後、01年にフジテレビジョン入社。情報制作局で、『とくダネ!』『スタメン』のほか、『椎名誠のでっかい旅!』『ザ・ノンフィクション』『NONFIX』『FNSドキュメンタリー大賞』などを担当し、『ノンストップ!』『アゲるテレビ』総合演出を経て、『めざましテレビ』でプログラムディレクター、総合演出、19年7月から第8代チーフプロデューサー。