"旅を楽しくする"をテーマとして「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO(おも)」「BEB(ベブ)」の5ブランドを中心に国内外で66拠点の宿泊施設を運営する星野リゾート。4月18日に開催されたプレス発表会で今後の開業予定などを発表した。

  • 「星野リゾート LIVE 2023 春」オンラインプレス発表会

2023年は新たに5施設を開業

2023年は新たに5施設の開業を予定。リゾートホテル「リゾナーレ」では同ブランド初の海外施設となる「リゾナーレグアム」を4月1日にリブランドオープン。「街ナカ」ホテル「OMO」には、3月20日にOMO関西空港、4月6日に「OMO7高知」が仲間入り。4月25日に「OMO5熊本」、7月31日に「OMO3浅草」が開業する。

  • 星野リゾート2023年の開業予定

インバウンドは戻るが、アウトバウンドで失うマーケットも

星野佳路代表は観光業界の現状について次のように語った。

「コロナ禍においては、比較的活発に日本各地を旅行していただいたことがプラスに働きました。アフターコロナにはたしかにインバウンドは戻ってくるんですが、同時にアウトバウンドも戻る。海外旅行が復活するにつれて逆にそのマーケットは失う。現在ではまだ日本人のコロナに対する意識や円安による海外旅行の高騰によって、意外と伸びていません」(星野代表)

同社施設におけるインバウンド状況については、東京と大阪、京都で戻りが早いという。

「コロナ禍のような危機はいろんなかたちでやってきます。大事なのは、マイクロツーリズムで集客すること、国内の大都市から地方に来てもらうこと、インバウンドを成長セグメントにすること。どこかに特化するわけではなく分散して集客できる体制をとることです」(星野代表)

記者からの質疑応答でインバウンドのターゲットについても言及。「2019年に戻そうとしてアジアをターゲットにするのは簡単。でも近くて安いから行きたいと思われるのはいい方向ではない。観光情報の発信地は欧米なので、憧れの観光地になるためには欧米の発信にのる必要がある。欧米が来ていればアジアはついてくる。それが観光地として長期的にブランド力・競争力を高め、日本の観光のサステナビリティにつながる」(星野代表)

  • 星野リゾート 星野佳路代表。「顧客のマインドが変化したからといってそれに合わせていこうというのではなく、私たち側から能動的に理想の観光の姿を描いて力強く変化を促していくことが重要」とも語った

2019年型ではなく新たな観光のかたちを

「コロナ前の2019年の日本の観光がパーフェクトというわけではなかった」と星野代表。当時のインバウンドも特定の都道府県に集中しておりオーバーツーリズムが自然環境や住む人の暮らしにとって問題になっていたこと、それ以外の地域には経済効果がなかったことなどを解説した。

「2019年に戻ることを目指していると日本の観光は世界に置いていかれる可能性がある」とし、2019年型ではなく新しいかたちの観光を目指す「ステークホルダーツーリズム」を掲げた。

そのかたちの一つが「連泊」だ。「西表島ホテル」(沖縄県・西表島)では4月1日から宿泊予約を2泊以上の滞在に限定した。そのほかの地域でも連泊を優遇する施策を実施してきたという。電気自動車(EV)充電器も23施設に設置完了している。

「世界の観光産業が出しているCO2の半分が交通からきています。日本は泊数が少ない。海外旅行では連泊するわけですから、そのマーケットに日本の地方に来る時にも連泊していただく工夫をしていくことが大事だと考えています。連泊した方々は旅行の満足度も高い。

連泊していただくことで中日ができるので交通や旅行エージェントさん、我々ホテル事業者だけではなくて地域のさまざまなところにお金が落ちるようになる。コミュニティに対して経済貢献ができることもすごく大きなポイントです。全国で展開したいと思っています」(星野代表)

また、従業員の労働環境についても来年度からの初任給を24万円に引き上げるなどして投資していくという。地方での採用も強化していくそうだ。