島根県鹿足郡津和野町は「山陰の小京都」と呼ばれる場所。まるでタイムスリップしたかのような情緒あふれる街並みや景色が魅力だ。人口は約7,000人で山に囲まれた盆地の地形ゆえにゆっくりと歴史が醸成されてきた。森鴎外の出身地としても知られるが、森鷗外は10歳まで津和野で過ごしたのち上京。それでも死ぬ間際に「津和野に戻りたい」と話したという。今回はそんな津和野の魅力をお伝えする。

150年前から変わらない景色

まずは景色。高い建物はひとつもなく、数十年・数百年前の景色と変わっていないかのようなのどかな風景に癒される。多くの家の屋根は赤瓦(石州来待瓦)が使用されている。

  • caption

    赤瓦を使用したオレンジ色の屋根が多い

丸い形状が特徴の青野山は津和野のシンボル。津和野出身者は「津和野に帰ってきて、青野山を見るとホッとする」と口を揃えて話すほど心の拠り所になっているようだ。

  • caption

    津和野のシンボル青野山

今回の旅で同行者がずっと「日本昔話の景色みたい!」と言っていたのが印象的だった。まさにその通りな景色が並び、その風景がずっと続く。全く裏切られることがない。

  • caption

    まさに「日本昔話」みたいな風景

SLと記念撮影ができる津和野駅

津和野の玄関口、津和野駅は開業100周年を迎えた。2022年8月にはリニューアルオープンし、外観は津和野の木を使用したシックな雰囲気に赤瓦を使用したものに変わった。

  • caption

    2022年8月にリニューアルした津和野駅

JRとしては無人駅だが、津和野観光協会が委託され、切符販売など管理をしているという。津和野駅はSLやまぐち号の終着駅で3月から11月まで土日祝日を中心に運行している。(現在は故障中のため、ディーゼル車が運航中、夏以降に復活予定)

  • caption

    無人改札

駅前には「D51型194号機」が展示されており、記念撮影をしたり、その大きさを目の当たりにしたりすることができる。

  • caption

    迫力満点のSLが展示されている

運転席に入ることも可能で、その複雑かつ重厚なつくりをじっくりと堪能できる。イベント時など特別なタイミングで汽笛を鳴らすことができることも。走っていた当時と変わらない迫力にびっくりするかも!?

  • caption

    イベント時などには汽笛を鳴らすこともできる

千本鳥居が「映え」な太皷谷稲成神社

太皷谷稲成神社は江戸時代後期に七代藩主・亀井矩貞によって創建された神社。日本五大稲荷の一つに数えられる。島根県内では出雲大社の次に参拝客が多く、特に願望成就の神様として知られる。

  • caption

    太皷谷稲成神社本殿

まずは入り口でお供え物の油揚げとろうそくセットを購入。「四ケ所参り」が習わしで、その順番も決められている。「意外と本殿だけをお参りして帰ってしまう観光客の方も多い」とのことで、正しいお参りの仕方を知っておこう。

  • caption

    お供え物の油揚げとろうそくセットは200円

まずは「元宮」にお参りをする。一礼二拍手一礼。

  • caption

    奥の建物が元宮

続いては「命婦社」。たくさんの「おきつねさま」がいる場所だ。ここで購入した油揚げをお供えし、ろうそくに火をつけるのがベスト。その後「本殿」にお参りする。

  • caption

    神の使いである「おきつねさま」の絵馬がたくさん

  • caption

    「おきつねさま」の像が最も多い場所が命婦社

その後は「本殿裏」なのだがなんとこのような裏道を進んだ先にある。

  • caption

    狭い道を進んだ先に……

  • caption

    「本殿裏」

「四ケ所参り」を終えたら有名な千本鳥居を見てみよう。

  • caption

    本殿側から千本鳥居へ降りていく階段

このように赤い鳥居が連なっており、約300メートルほど鳥居のトンネルが続く。

  • caption

    赤い鳥居が連なる

  • caption

    写真映えもする鮮やかな赤色

地元のお茶園「秀翠園」で煎茶体験を

津和野の体験型観光のプログラムの中のひとつ「茶畑一望『お茶テラス』で愉しむ煎茶体験」に参加した。創業1949年の地元お茶園「秀翠園」の茶畑の中にある「お茶テラス」で、美味しい煎茶の淹れ方をレクチャーしてもらいつつ津和野銘菓を楽しめるプランだ。1人2,800円で約2時間ゆったりと過ごすことができる。

  • caption

    「秀翠園」の茶畑の中にあるお茶テラス

通常は「秀翠園」の茶畑の中にあるお茶テラスで青空の下お茶を楽しむことができるが、今回はあいにくの雨だったため室内での開催となった。そこはまるで祖父母の家に来たかのような懐かしさあふれる場所。なんだか無性に居心地が良い……。

  • caption

    目の前にはお茶畑が広がる!

  • caption

    雨の場合は室内でお茶をいただく

そうして教えてもらった煎茶の淹れ方。まずは茶葉を急須に入れ、伏流水を茶器に入れ冷ます。熱ければ熱いほど良いと勝手に思っていたが、お湯を冷ました方が美味しいお茶になるということに驚き。

  • caption

    煎茶はお湯が熱すぎると良くないため、まず冷ます

茶葉がふわ~っと開いていく様子を見られるのは楽しい。茶葉が開いたらお茶を淹れていく。

  • caption

    茶葉が開く様子

  • caption

    濃さが均等になるように淹れるのがポイント

  • caption

    色味も美しい

飲んでみると、爽やかな苦みの後味に旨味を感じる。これはテアニンというアミノ酸の一種。じっくりと時間をかけ、煎茶を淹れ、そして旨味を感じながら飲むお茶は格別だ。

その後、和菓子とともにじっくり味わったり、まめ茶・つわ乃紅茶・ほうじ茶・つわ乃緑茶の4種のお茶の飲み比べを体験したりして、ゆっくりとした時間を過ごすことができた。秀翠園のお茶をお土産に購入することもできる。

  • caption

    この日いただいたのは桜餅

昔ながらの景色、映える神社、そしてゆったりと流れる時間……。「過ごす」という言葉がぴったりな旅になるのが島根・津和野だと感じた。華やかな観光名所を分刻みで巡る旅に疲れてしまったら、津和野でリラックスできる時間を過ごしてみるのもよさそうだ。

取材協力: ゆとりろ津和野