伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は、挑戦者決定リーグ白組の渡辺明名人―佐々木大地七段戦が4月10日(月)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、135手で勝利した佐々木七段がリーグ成績を3勝0敗としました。敗れた渡辺名人は2勝1敗となっています。

渡辺名人の趣向は雁木

王位リーグ白組は2回戦終了時点で渡辺名人と佐々木七段の2人だけが無敗をキープ。6人の総当たりで行われる短期決戦だけに、この直接対決は早くも勝負所です。先手の佐々木七段が角換わりの出だしを提示した本局、後手の渡辺名人は角道を止める趣向を見せました。渡辺名人としては、前週に行われた名人戦第1局に続く雁木系の採用です。

局面は矢倉対雁木の力戦形に進んでいます。佐々木七段が右銀を中央に腰掛けてから角を大きく右翼に転換したのに対し、渡辺名人は颯爽と右桂を跳ね出して戦いを仕掛けました。佐々木七段がゆっくり自陣を整備したいのを見越した渡辺名人は、先手の陣形が不安定なうちに攻め切りたい姿勢です。直後、4筋で角交換が行われて激しいねじり合いは続きます。

佐々木七段が攻め切って快勝

反撃を目指したい先手の佐々木七段は、渡辺名人の玉が3筋の中途半端な場所にいるのに注目して狙い筋を決行します。跳ね出していた後手の右桂を銀で食いちぎったのがそれで、後手の歩をおびき出すことで王手飛車取りをかける狙いがあります。狙い通りに角と飛車の交換に持ち込むことに成功した佐々木七段がペースをつかんで戦いは終盤に突入しました。

飛車を手にした佐々木七段はこれをすぐに後手陣に打ち込んで攻めを続けます。渡辺玉を危険な三段目に誘い出しておいてから、自陣の飛車の下に香を打ったのが攻めの好手。この「二段ロケットの香」によって後手の渡辺名人は盤上右方を明け渡すよりなくなった形です。終局時刻は19時50分、最後まで攻め切った佐々木七段が快勝で大一番を制しました。

勝った佐々木七段は3勝0敗、敗れた渡辺名人は2勝1敗となっています。

  • 佐々木七段は渡辺名人との対戦成績を2勝0敗としている

    佐々木七段は渡辺名人との対戦成績を2勝0敗としている

水留 啓(将棋情報局)