未来のスター選手獲得に奮闘するプロ球団の剛腕スカウトを主人公に、スポーツの裏側の熾烈な争いと濃厚な人間ドラマを描いた同名コミックを豪華俳優陣で実写化した連続ドラマW-30『ドラフトキング』が、4月8日(土)午後10時からWOWOWで放送・配信スタートする(全10話、初回無料)。独善的で毒舌家だが、数々の隠れた原石を並外れた"眼"を武器に見い出していく剛腕スカウト郷原眼力を演じたムロツヨシに、制作の裏側や撮影現場での独自の着眼点、「思わずスカウトしたくなる役者」について語ってもらった。

ドラマ『ドラフトキング』に主演するムロツヨシ

ムロツヨシ
ヘアメイク:池田真希 スタイリング:森川雅代

――WBCで日本中が野球というスポーツの面白さに魅了されたこの絶好のタイミングで、いつかスター選手になるであろう才能を、誰より早く見抜くプロ球団のスカウトを描いた『ドラフトキング』というドラマが放送されるとは、まさに漫画のような展開ですね。

僕はいま47歳なんですけど、子どもの頃から『ドカベン』とか『タッチ』みたいな野球漫画をたくさん読んできたんです。きっとどの世代の人たちにもハマった野球漫画があると思うんですが、『ドラフトキング』はプロスカウトの視点で描かれていて。「その着眼点でいったいどうやって物語が進んでいくんだろう?」と思いながら読んでみたら、夢を持つこと、諦めること、才能を磨くこと、そして、それすら難しくなってしまった人たちのこと。そんなすべての世代に通じるであろう物語が見事に描かれていた。もし僕が20代の頃にこの漫画と出会っていたら選手側の視点で読んだと思うんですけど、スカウト目線で読めたのも大きかったですね。まさにいまの自分だからこそ、刺さったところもあって。

――普段はプレイヤー側であるムロさんが、裏方に光を当てた作品に惹かれた理由とは?

それこそ僕にも、自分の覚悟不足や努力不足のせいで選んでもらえず、アルバイトしかしていなかった時期もありますし、 誰かが選んでくれたからこそ今があるんだということを、この作品を通じて思い出させてもらったところもありました。また、「muro式.」という僕が主宰する舞台に限っては、僕自身が選ぶ側でもあったりするので、そういった時に感じる責任の重さみたいなものは、このドラマの話ともどこかしら通じる部分もありますよね。

――野球や原作ファンはもちろん、野球を知らない人が観ても引き込まれる素晴らしいエンタメ作品になっていましたが、製作側としてはどんなドラマを目指していたんですか?

『ドラフトキング』において大切なのは、野球そのものよりもプロ野球の世界を巡って繰り広げられる濃厚な人間ドラマの方ですが、そもそも野球のシーンがリアルじゃないと説得力が出ないじゃないですか。だからこそ製作陣にも野球に詳しい人に入ってもらって、「スケジュールを理由に原作へのリスペクトを怠らないようにしましょう」という共通認識を持って撮影に臨んだので、「僕らはいくらでも待てますから、野球のシーンを最優先してください」というスタンスでいられたんです。スタッフの動きも素晴らしかった。

――共演者についてはどんなことを感じましたか?

僕は今回初めてご一緒する方も多かったんですけど、宮沢氷魚くんはすごく素敵な俳優さんで。ちゃんと野心も見え隠れするし、お芝居に柔軟性があって、綺麗でカッコよかった。 藤間爽子さんという、踊りも演劇もやっていらっしゃる、可愛らしさと強さを併せ持つ女性の役者さんにも出会えましたし。伊武雅刀さんの前で自分の芝居をぶつけられる日がついに来たんだな、という喜びもありました。きたろう師匠とも、またお芝居できてよかったなとも思いました。

――スカウトは、若い選手の何を見て、どう判断しているのか。そういった視点を学べるドラマでもあると思うのですが、ムロさんは何を大事にして仕事をしていますか?

作品選びに関して言えば、やっぱり自分がやりたいことをやれるかどうか、といった視点は大事にしてると思います。あとは、ちょっと変な言い方だけど、そろそろ僕らの世代が率先していろんな前例を作っていかなきゃいけないんだろうなっていう、ある種の使命感みたいなものも湧いてきて。というのも、なんちゃらウィルスがこの世界にやってきて3年くらい経ちますが、モノづくりの現場で密なコミュニケーションが取れないという現実に、僕らの側もどこか慣れてしまった部分もあるような気がしていているんです。ウイルスが拡散しないように、ハラスメントが起きないようにしていくのはもちろん当たり前のことなんですが、それと同時に新しい発想で僕らの世代が前例を作っていく必要もあるんじゃないかと思うようになってきたというか。10代、20代、30代といった若い世代が、この仕事にやりがいを感じられる現場を作っていくことを僕自身の生きがいにしていくためにも、まずはどんな状況でも僕らがのびのび楽しんでやるのを絶対条件にしなくてはと。