■“トキューサ”の愛称で人気に「呼びやすいのかな(笑)」

3度目の大河ドラマ出演となった『鎌倉殿の13人』でトキューサこと北条時房を演じ切った感想も聞いた。

「最後まで生きていられたのはうれしいです。これまでは前半で死んでしまう武士を演じていて、最後まで生きていたのは初めてだったので。そして、ニックネームまでつけていただいてありがとうございますという気持ちです(笑)」

時房が登場するたびに、SNSでは「トキューサ」という愛称があふれたが、ここまでの反響は「全く想像してなかったです」と言い、「違う作品をやっていても『トキューサ』とつぶやいてくださったり、ほかの現場でもそう呼んでいただいたり。呼びやすいのかな(笑) 三谷さんの愛を感じます」と笑顔を見せる。

以前のインタビューで、脚本を手掛けた三谷幸喜氏について「僕が出ている全シーン笑かしてくださいって言われています(笑)」と明かしていた瀬戸。もちろん、シビアなシーンもあったが、くすっと笑える瞬間を多く生み出し、三谷氏の期待に応えた。

ここまで愛される人物を作り上げたことは俳優として自信になったのでは? と尋ねると、「なっているといえばなっていますが、なっていても5%くらいですね」と答え、「まだ全然自信ないですよ、この仕事に」と意外な発言が飛び出した。今後もずっと「自信はつかないと思います」と述べ、とにかく一生懸命一つ一つの役と向き合っていくつもりだという。

現在は三谷氏が作・演出を務める舞台『笑の大学』の真っただ中だ。この舞台は、一度も心から笑ったことのない厳格な検閲官・向坂睦男(内野聖陽)と、上演許可をもらうべく奮闘する喜劇作家・椿一(瀬戸)の攻防を描いた二人芝居で、瀬戸は「お芝居って面白い」と改めて感じているという。

「二人芝居は究極だなと。会話だけでずっとやっていて、とても楽しいです。セリフは同じですが、お客さんが入って空気が出来上がるので毎回違って飽きないですし、今日の向坂さんはこういうテンションかとか、そういうのが楽しいですね」

■舞台『23階の笑い』でも三谷幸喜の愛を実感

2020年の『23階の笑い』で初めて三谷作品に参加し、しっかりと三谷氏の信頼を得て、出演が相次いでいるが、三谷氏の愛をこの舞台でも感じているという。

「1996年初演の本作は、今回三谷さん自身が初めて演出されるということで、僕や内野さんの役者としての性質や、その人が持っている色にあわせて、ラストが変わっていたりするので、ちゃんと僕たちのことを見てくれているんだなという信頼感と安心感で作りました」

三谷氏は、内野と瀬戸のことを「今、僕がもっとも信頼している二人」と称し、瀬戸については「ああ見えてとても大胆」としていたが、瀬戸自身も、『私小説』について語っているときに「思い切るところは思い切って演じました」という発言があったように、「思い切りはいい」と思っているそうだ。

同じく三谷作品である『日本の歴史』の再演(2021年)に出演した際に、共演の宮澤エマと秋元才加から「鬼のメンタルしてるね」と言われエピソードも披露。「一生懸命やっていただけなんですけどね。こう演じると決めているというより、とりあえずやってみる。それで指摘されたら変えればいいし。それが思いっきりのよさなのかなと思います」と話した。

また、『鎌倉殿の13人』について三谷氏から何か言葉をかけられたか尋ねると、「『終わりましたね。お疲れ様でした。大人気じゃないですか』と言っていただき、『ありがとうございました』と返しました」と、その光景が目に浮かぶやりとりを教えてくれた。

■瀬戸康史
1988年5月18日生まれ、福岡県出身。2005年に芸能界デビュー。近年の出演作に、ドラマ『ルパンの娘』『霊媒探偵・城塚翡翠』『鎌倉殿の13人』、映画『コンフィデンスマンJP英雄編』『愛なのに』、舞台『日本の歴史』『彼女を笑う人がいても』『世界は笑う』など。『愛なのに』で第44回ヨコハマ映画祭主演男優賞を受賞した。今年2月には地元・福岡県嘉麻市と手を組み「SETO×KAMAプロジェクト」として地方創生プロジェクトを発足し、PR動画に出演。舞台『笑の大学』が上演中。4月7日・8日に主演を務めるテレビ朝日系スペシャルドラマ『私小説-発達障がいのボクが純愛小説家になれた理由-』が放送される。