日産自動車が「R32型スカイラインGT-R」を電気自動車(EV)で復活させようとしている。同社はこのほど、「R32 GT-R EVコンバージョンコンセプトモデル」の製作開始を発表した。日産はなぜ今、名車をEVに作りかえようとしているのだろうか。

  • 日産「R32型スカイラインGT-R」

    日産「R32型スカイラインGT-R」がEVに?

名車を後世に残したい!

8代目スカイライン(R32型)の発売は1989年5月。それから3カ月後の8月には16年ぶりの復活となる「GT-R」が登場し、大きな話題を呼んだ。GT-Rのために専用設計された2.6L直列6気筒DOHCツインターボエンジン「RB26DETT型」は、当時の国産車で最強の280馬力を発生。駆動方式はFRベースながら路面状況に応じた高度な電子制御で前後輪に自在に駆動力を配分する電子制御トルクスプリット4WDシステム「アテーサ E-TS」を採用していた。サスペンションは新開発の4輪マルチリンク方式に一新。セダン派生型のスポーツカーとしては世界トップクラスの運動性能を実現した。

  • 日産「R32型スカイラインGT-R」
  • 日産「R32型スカイラインGT-R」
  • 日産「R32型スカイラインGT-R」
  • 今でも人気の高い「R32型スカイラインGT-R」

日産によれば、同社には「GT-R」や「フェアレディZ」などが持つ「走り」「運転の楽しさ」「パワフルなエンジン」の魅力に憧れ、情熱を持って入社した多くの技術者がいる。彼らは入社当時と同じ情熱で最新の電動化技術の研究を行い、より安全でワクワクするドライビング体験を世の中に届けるためクルマづくりに邁進しているそうだ。

今回のEVコンバージョンプロジェクトは、彼ら日産技術者の「最高に好きなクルマに、今、自分が最高と思う技術を掛け合わせたら、世の中の人がもっとワクワクするクルマを作れるのではないか」という思いをきっかけにスタート。ベース車は日産の技術者が愛し、国内外の数々のレースで勝利を収め、今もなお世界中のファンから高い支持を得ている「R32型スカイラインGT-R」を選択。そこに日産の最新電動化技術を盛り込み、世界に1台のEVコンバージョンコンセプトモデルを製作するという。作業の進捗は日産公式Twitterで発信していく。

それにしても、なぜ今、「R32型スカイラインGT-R」をEVにするのか。日産自動車の日本マーケティング本部は理由として以下の3点を挙げている。

  • 往年のクルマファン・ガソリン車を愛するオーナーにもEVの楽しさを知ってほしい。クルマファンへ向けた電気自動車の新しい可能性を提案したい。

  • 日本車のスポーツカーは価格が高騰しており、ガソリン価格高騰、EV化の波、年式も古くなると維持が大変になってくる可能性もある。EV化することで「スカイラインGT-R」というクルマを後世に残していく。

  • 日産が好きな技術者が「最高に好きなクルマに、今、自分が最高と思う日産のEV技術」を融合させ、世の中の人がもっとワクワクするクルマを作りたいという熱意。

最近ではトヨタ自動車も名車「AE86」(カローラレビン)のEVコンセプトを発表している。このままクルマの電動化が進んでいくにせよ、何らかの理由でブレーキがかかるにせよ、過去の歴史的なクルマをEV化して残していこうという機運が高まるのはワクワクする流れだ。そのうち86とGT-RのEVバージョンが速さを競う世の中がやってくるかも? そんな期待も膨らむニュースだ。