フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00～ ※関東ローカル)で26日に放送された『新・上京物語 2023 前編 ～二十歳 夢の迷い道～』。人気洋食店「レストラン大宮」に入社した若者たちの奮闘を追った作品で、期待の若手が店を辞めるというところで「前編」のエンディングを迎えた。
取材したラダックの村田正勝氏と天田小百合氏は、彼が「辞めたい」と言い出したことに衝撃を受けたそうだが、同時にその決断を見守ることに。さらに、70歳を超えた大宮勝雄シェフとの世代間ギャップが浮き彫りになるなど、取材をしていく中で、これは「日本の社会の縮図ではないか」と感じたという――。
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レストラン大宮の調理場に立つ、ちはるさんとらいちさん (C)フジテレビ
■「辞めたい」予兆は全く感じ取れなかった
前編のハイライトは、次の若きエースとして期待されていたらいちさんが、レストラン大宮を去ることになってしまったことだ。その予兆は、取材した2人も全く感じ取れなかったという。
「今回の取材では、大宮シェフが『もうすぐ新丸ビル店をらいちに任せられるようになるかもしれない』と言っていたので、その成長記を取材しようと思っていたんです。2～3年目でシェフになれる可能性があるなんて、すごいなと」(天田氏)
それだけに、大宮シェフのショックは大きかったが、村田氏は「夢はあるけど、仕事は仕事と割り切って、自分のプライベートは充実させたいというところが、今の若い人たちの考えなんだろうなと思いました」と理解。
その上で、「大宮シェフの世代は“職人はこうやって育つもんだ”というのがあるから、これは働き方に対する価値観の違いですよね。年の差50歳の価値観や人生観がぶつかり合った。今回の番組は人気洋食店の話ではあるんですけど、どの世界にもある話だと思っています。日本が今置かれている少子化による人手不足とか、働き方改革と言われる中で人材を育てることの難しさ…社会の縮図がここにあると感じました」と受け止めた。
■“挫折”ではなく“決断”
また、天田氏は「料理人になることが夢だったちはるさんが接客にやりがいを見いだすのもアリだし、ブレずに黙々と調理場の仕事をこなすあかりさんもアリだと思います。同期3人の中で“誰が正解か”ということではなく、3人それぞれが違う道を選びながら成長していくのが伝わってきました。まだまだ夢半ばですし、店を辞めてしまったことが“失敗”ではないんです」と強調。
村田氏も「こういう結果になったとき、辞めたことを“挫折”と言いがちだと思うのですが、視聴者の方にもそういうふうに捉えてほしくないんです。これは彼が20歳で決断した形なのですから」と訴えた。
それを裏付けるように、4月2日放送の「後編」では、らいちさんがレストラン大宮を辞めた後も継続して番組の取材を受け、店に顔を出すシーンも映し出される。
「らいちさん本人が『これは自分が考え抜いて出した結論で何も隠すことはない。せっかくここまで取材もしてもらったので、辞めた後も自分は出たい』と決めてくれました。レストラン大宮では、過去にいきなりいなくなってしまう、いわゆる“バックレる”辞め方をした人もいたそうですが、らいちさんは自分の言葉できちんと大宮シェフに考えを伝えて、その後も辞めるまで1カ月しっかり働いて去っていったわけですから、彼は本当に立派だと思います」(村田氏)
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同期3人と東京スカイツリー (C)フジテレビ
■若者たちの決断を見て学んだこと
今回の取材は主に、天田氏が女性のちはるさんとあかりさんを、村田氏が男性のらいちさんを担当し、それぞれ同性に密着する形をとっている。これによって、より自然と彼らの悩みに寄り添うスタイルで気持ちを引き出すことができた。
「本当は取材しながら『こうしたほうがいいんじゃない?』って相談に乗ってあげたくなるんですけど、ここは観察者となることに徹しました。結局、彼らの中で答えを見つけ出すので、おせっかいする必要はなかったんです」(村田氏)
夫婦である村田氏と天田氏は、自身の子どもたちが高校生と中学生のため、数年後にはレストラン大宮の若者たちのように、悩み、決断することがあるのだろうと、取材時に重ねる部分もあったという。
「親の立場だったら『もうちょっと頑張りなさいよ!』って言っちゃうかもしれないな、とも思いました。でも彼らを見ていて、自分で決めた決断じゃないと前に進めないんだということを学びましたし、私自身も二十歳の頃はそうだったと思い出しました。何があっても、様々な経験を通じて大人になっていくのだから、信じなきゃダメですよね」(天田氏)
4月2日放送の『新・上京物語2023 後編 ～二十歳の決断～』より (C)フジテレビ
