歌舞伎俳優の中村勘九郎、中村七之助が16日、兵庫県姫路市で開催される『平成中村座姫路城公演』(5月3日〜27日)の大阪・カンテレ本社で行われた取材会に出席した。

  • 左から中村七之助、中村勘九郎

2000年に東京・浅草にて初公演、日本国内はもとより海外でも開催されてきた『平成中村座』が、世界遺産登録30周年を迎える国宝・姫路城で初上演される。天守閣を望む三の丸広場に江戸時代の芝居小屋を再現した劇場が設けられるほか、伝統工芸や姫路の特産品などの店が軒を連ねる“三十軒長屋”も出店。勘九郎は「江戸にタイムスリップして芝居を楽しんでいるかのよう」と話す。

今回は姫路城が舞台の「播州皿屋敷」、「天守物語」など『平成中村座』では初上演の演目も。なかでも七之助が演じる「天守物語」の妖かしの姫・姫路城の天守閣に棲む天守夫人富姫は、当代随一の女形といわれる坂東玉三郎が何度も演じてきた役とあり、「この姫路城公園がなければ、自分からやりたいと言えるような作品じゃなかった」と語る。そんな大きな覚悟を持って臨む今作品では、玉三郎が演出を担当。七之助は「玉三郎おじさまが付きっきりで稽古をつけてくださっている。そんな熱い思いを受け取っているので、身を引き締めてやらなければ」と意気込み、「僕の力だけでなく、姫路城のすばらしいパワーを借りて演じたい」と力を込めた。

『平成中村座』を立ち上げた2人の父で歌舞伎俳優の中村勘三郎さんが亡くなってからおよそ10年。「大きな喪失感を覚えていましたし、父がいない、後ろ盾がないことでいろんなことがありました」と振り返った勘九郎は「それでもめげずに突き進めたのは、父を愛してくれたみなさまのサポートがあってのこと。その恩返しのためにも、いいものを作り続けなければならない」としみじみ。「父が残してくれた『平成中村座』は、僕たちが一生をかけて発展させていかなければならないという宝物で、宿題をもらったと感じています」と公演にかける思いを語った。

今回の姫路城公演の前売りチケットはまもなく完売。今後立ち見席の発売も予定されているというが、勘九郎は「チケットをお持ちでない方に朗報です」と前置きし、『平成中村座』恒例のある演出について説明。「なので、タイミングを見計らって劇場の後ろに回ると……(笑)」と、思わぬものが見えてしまうかもしれない“裏技”をぶっちゃけて笑わせていた。