会社に提出する年末調整の書類や、税金関係の書類、学校に入学する際の提出書類などには、家族構成を記載する欄があります。

この記事では、家族構成の書き方について、本人や続柄、順番など記載時のポイントを解説します。親と同居中や、単身赴任の家族がいる場合はどうすればいいのかや、書き方の見本、採用面接で家族構成を聞かれた際の対処法なども紹介します。

  • そもそも家族構成とは

    書類の家族構成の欄には、何をどう書けばいいのかを解説します

そもそも家族構成とは

家族構成を問われた際に、真っ先に思い浮かべる存在は同じ家で暮らす家族ではないでしょうか。しかし、離れて暮らす兄弟や、同居するルームメイトなどは、家族構成に含めるのか判断に迷いますね。

まず、家族構成が示す範囲と、どのような場面で必要とされるのかを解説します。

「家族構成」が指す範囲

実はどこまでを「家族」とするのかについては、法律で明確な規定はありません。

しかし一般的には、親や子、配偶者など、血縁者や婚姻関係にある人を「家族」と呼びます。その中でも同一世帯、つまり同じ家で暮らし生計を同一とする親族同士のことを指すことが多いです。

なお「親族」の範囲については、民法第725条で下記のように定められています。

第七百二十五条 次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族

(e-Gov法令検索「民法」)

「家族構成」を問われる場面

家族構成の記入を求められる場面はさまざまですが、代表的なものとして以下が挙げられます。

  • 入社後の手当や税金、健康保険などにまつわる手続き書類
  • 保育園や幼稚園、学校、教育(保育)機関へ提出する書類
  • 住まいを借りる際の申込書類
  • クレジットカードの申込書類
  • 家族の入院や、介護福祉施設への入所の手続き書類

家族構成の書き方における基本のポイント

  • 家族構成を書く際の気になるポイント

    家族構成を書く際に気を付けるべきポイントを見ていきましょう

では実際に書類に家族構成を書く際には、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。ここでは家族構成を書く際の一般的なポイントを紹介します。

基本は指定されたフォーマットの指示に従う

前提として、家族構成の書き方は書類によって異なるため、書類に記載されている注意書きや記載例をよく読み、指示に従って記入することが大切です。

続柄はシンプルに

続柄については、父親は「父」、「配偶者」は「夫」や「妻」、子どもは「長男」「次女」などではなく「子」とするなど、シンプルに記入するのが基本です。

世帯主の名前の位置

特に指定が無い場合、家族構成欄の最初には世帯主の名前を記入します。世帯主とは、住民票を届け出る際に決めた、世帯の中心となる人のことです。

性別や年齢、収入にかかわらず、世帯主として届け出た人が世帯主になります。通例としては、その世帯で最も収入の多い人を世帯主とすることが一般的です。

誰が世帯主なのかが不明なときは、住民票で確認できます。

世帯主以外の家族の記載順

世帯主以外の家族は、世帯主の下に年齢順に記入するのが一般的です。家族で年齢が同じ人がいる際は、生まれた日付や時間が早い順です。

ただし、世帯主の配偶者・子以外に、両親や親族などと同居している場合は、世帯主夫婦、子の後に記載するのが一般的です。

例えば世帯主が自分の夫で、子供が2人、自分の父母と暮らす家族の場合は、

  • 夫→自分(妻)→第一子→第二子→年齢順に自分の父母

のように記載します。

また上記に加えて夫の姉と弟が同居する場合は、

  • 夫→自分(妻)→第一子→第二子→年齢順に自分の父母→夫の姉→夫の弟

といった具合です。

続柄の起点

家族構成を書く際の続柄をどのように書くのかは、何についての書類なのかで異なります。

例えば履歴書や年末調整書類であれば、提出する本人が続柄の起点です。また、書類によっては世帯主が続柄の起点となるものもあります。

同一人物を指す場合でも、誰を起点にするのかで続柄の書き方が異なることがあります。記入する書類に記載されている「あなた(申告者)からの続柄」や「世帯主との続柄」などの文言をよく読み、書き方をしっかりと確認して記載しましょう。

また、途中で続柄の起点が変わってしまうことのないように、注意して記入しましょう。

職業の書き方

職業は、特に指定がなければ、会社員や公務員、自営業など雇用形態を記入します。原則として、勤務先の会社名や役職名などは不要です。

パートやアルバイト、学生の方は、そのまま雇用形態や立場を記入します。また、専業主婦や浪人生は無職と記入します。

家族構成に記載者本人は含める?

提出する本人の情報は別枠に記載し、家族構成欄には記載しない書類も多いようです。

もし家族構成欄に提出する本人を記載する必要がある場合は、続柄には「本人」と記載するのが基本ですが、書類に記載されている指示をよく確認しましょう。

家族構成の書き方の見本

  • 家族構成の書き方の例

    具体的な家族構成の書き方の例を見てみましょう

例えば、山田二郎さんが書類を提出する場合に、世帯主である父、母、兄、祖父母の6人家族で暮らしているときの家族構成は、基本的には以下のように記入します。

【名前】    【続柄】    【年齢】   【職業】
山田 太郎    父       55     公務員
山田 花子    母       53     パート
山田 一郎    兄       28     会社員
山田 良一    祖父      78     アルバイト
山田 和子    祖母      75     無職

上記と同じ家族構成の場合に、もし世帯主を続柄の起点にするよう指示があったときは、基本的に以下のように記載します。

【名前】    【続柄】    【年齢】   【職業】
山田 太郎    世帯主     55     公務員
山田 花子    妻       53     パート
山田 一郎    子       28     会社員
山田 二郎    子       22     学生
山田 良一    父       78     アルバイト
山田 和子    母       75     無職

あくまで見本となりますので、実際の書類に指示があればそれに従ってください。

【パターン別】家族構成の書き方

  • 【パターン別】家族構成の書き方

    パターンごとに家族構成の書き方を見てみましょう

ここからは、1人暮らしや、配偶者が単身赴任しているときなど、家族構成の書き方をパターン別に紹介します。

1人暮らしのときの書き方

1人暮らしの場合は、基本的に住民票に本人のみが記載されており、本人が世帯主です。

そのため、本人欄と家族構成欄が分かれている場合、家族構成欄には何も記入せず、空白のまま提出します。

配偶者がいるときの書き方

本人に配偶者がいるときの続柄は、「夫」または「妻」と記入します。

一方、同居している恋人や婚約者、内縁の夫・妻は戸籍上の配偶者ではないため、続柄は「同居人」と記入するのが一般的です。結婚式が済んでいても、婚姻届を出していなければ同じく「同居人」です。

同居人の名前を家族構成欄へ記入する際は、血縁者の名前を書き終えた下に記入します。

ちなみに内縁の夫・妻について、住民票の続柄は、手続きを経れば「夫(未届)」「妻(未届)」とすることができます。

自分に子どもがいるときの書き方

自分に息子や娘がいるときの続柄は、男女の区別なく全て「子」と記入します。

また複数の子どもがいるときでも、長男や長女、次男や次女など生まれた順番を示す書き方は不要です。

また、養子がいるときも続柄に「養子」と書く必要はなく、実子と同じく「子」と記入します。

親と同居しているときの書き方

親と同居している場合、続柄は「父」「母」です。

順番としては、例えば父が世帯主の場合は最初に父、次いで母の順番に記載します。自分が世帯主の場合は、自分の妻や子の後に親を記載します。

兄弟姉妹がいるときの書き方

自分に兄弟姉妹がいるときの続柄は、「兄」や「姉」、または「弟」や「妹」と記入します。

長男や次男、長女や次女など、何番目の兄弟姉妹であるのかを区別する必要はなく、兄が2人いるのであれば続柄は両方とも「兄」です。

兄弟姉妹が複数人いるときは、性別に関係なく年齢順に名前を記入します。

祖父母がいるときの書き方

祖父母がいるときは父方か母方かを区別する必要はなく、続柄は「祖父」や「祖母」です。

記入の順番は、誰が世帯主かによって異なります。

別居で住民票を移している場合の書き方(単身赴任や進学など)

単身赴任や進学などで家族と離れて暮らしているときに、住民票を現在住んでいる場所へ移している場合、新しい住民票に記載されている人は、単身赴任や進学をしている本人だけです。

例えば夫が単身赴任で大阪に住んでいて、東京の家に妻と子どもを残している場合、夫が大阪に住民票を移していれば、夫は1人暮らしとしての家族構成になります。東京の家の世帯主は妻になり、別世帯です。

ただし、手当や健康保険などの書類では、別世帯でも生計を同一にしている場合は家族構成に含めることがあります。その際、仕送り証明書が必要といった条件があるのが一般的です。会社の総務担当者などへ確認しましょう。

別居だが住民票を移していない場合の書き方(単身赴任や進学など)

単身赴任や進学などで家族と離れて暮らしているときでも、住民票を現在住んでいる場所へ移していない場合は、別居の家族をそのまま家族構成欄へ記入します。

別居していたとしても、住民票を移していない限り同一世帯とみなされるため、世帯主の名前を筆頭に家族の名前と続柄を年齢順に記入します。

家族構成を聞かれたときの対処法は?

  • 家族構成を聞かれたときの対処法

    履歴書に家族構成を書く必要はあるのでしょうか?

家族構成を聞かれる、主な理由として考えられるものは以下の通りです。

  • 身元の保証
  • 税金や保険、手当などための扶養家族の確認

ここでは、履歴書や採用面接で家族構成を聞かれたときの対処方法や、入社後に家族構成を伝える必要がある理由などについて解説します。

履歴書に家族構成を書く必要はある?

まず原則として、就職や転職などで提出する履歴書などの資料に、家族構成の記入は不要です。

厚生労働省の「公正な採用選考の基本」によると、採用選考は応募者本人の適性や能力で判断し、家族状況(家族構成や家族の職業・学歴など)や生活環境を尋ねないよう求められています。

また、個人情報保護の観点からも、個人情報を収集することは原則禁止されています。

古いタイプの履歴書には、扶養家族の人数などの記入欄がありました。しかし厚生労働省が2021年に作成した履歴書の様式例には、配偶者や配偶者の扶養義務、扶養家族数の記入欄は存在しません。これにのっとり、最近は家族構成にまつわる記入欄が存在しない履歴書が増えています。

採用面接で家族構成を聞かれたときは?

前述のように厚生労働省の「公正な採用選考の基本」では、家族構成や家族の職業・学歴などについて、履歴書などへ記入させること以外に、面接で質問することも避けるように求めています。

応募者本人の適性や能力と関係ない事柄を把握すれば、採否決定に影響を与えて職業差別へつながりかねないことが理由です。

それでももしも採用面接で家族構成を聞かれたときは、差し支えないと思った場合にのみ、何人家族か程度を答えてもいいでしょう。答えたくない場合は、丁寧に断るか、質問の意図を聞いてみるのもいいでしょう。ただ、うそをつくのは避けます。

入社後は家族構成を伝える

入社後に家族構成を聞かれる理由は、家族手当や税金、健康保険などの手続きに利用するためです。

このような手続きには正確な情報が必要なため、書類へ記入する際に不明な点があれば、会社の総務担当者などへ確認しましょう。

家族構成のジェノグラムは、看護などの現場で活用されている

  • 家族構成のジェノグラムとは

    ジェノグラムとは家族や周りの人間関係を記号などで表したものです

最近、ジェノグラムが看護や保育、介護福祉の現場などで活用されることが多くなりました。

ジェノグラムとは、家系図、家族相関図、家族構成マップなどのことで、性別や年齢、関係などを図式化して、家族との関係を一目で理解できるようにしたものです。

基本的な書き方としては、男性を四角、女性を丸で表し、図形の中に年齢を記入します。本人は、男性なら二重の四角、女性なら二重の丸で表します。婚姻関係は図形と図形の間を実線で結びます。キーパーソンは、星マークで表します。

ジェノグラムは、適切な援助のため、児童福祉の現場でも役立てられてられています。

基本的なルールや例を覚えれば、家族構成は簡単に記載できる

家族構成は、基本的なルールを覚えれば簡単に書くことができます。本記事を参考に、焦らず正確に記載しましょう。

続柄の起点や、本人を記載するのかなど、書類の注意書きは必ず確認するようにしてください。