千葉県の久留里駅前にある「生きた水久留里 酒ミュージアム」は、千葉の酒蔵の地酒を試飲したり購入したりすることができる場所だ。君津市の久留里観光交流センター内に2022年10月1日にオープンした。

千葉県内で唯一「平成の名水百選」に選ばれた久留里の水

千葉県の久留里地区は「平成の名水百選」に選ばれており、久留里地区内には約200か所の井戸がある。この井戸は君津市発祥の「上総掘り」という手法で掘られたもので、軟水でクセがない水質が特徴だ。

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    「生きた水久留里 酒ミュージアム」前にある井戸には地元住民が水を汲みに来る

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    名水「生きた水 久留里」は「生きた水久留里 酒ミュージアム」でペットボトル詰めされたものを購入することも可能

「上総掘り」とは日本を代表する掘り抜き井戸工法。細長い鉄管を竹製のヒゴでつるし、地上から鉄管の自重を利用して地面を突き、直径5~10mを掘り進むことで機械を使わずに職人2~3人で150~500mもの井戸を掘ることができる。明治中期に上総で生まれると、地上にいながらにして井戸が掘れるその画期的な手法はすぐに全国に広まった。

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    「上総掘り」のイメージ

この上総掘りで掘削された自噴井により君津市久留里周辺の水は、2008年に環境省の「平成の名水百選」に選ばれた。

千葉の地酒が一堂に! 試飲もできる

そんな「平成の名水百選」に選ばれた水を使用した千葉の地酒を一堂に会するのが「酒ミュージアム」。

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    「生きた水久留里 酒ミュージアム」(千葉県君津市)の中は天井が高く、ジャズが流れオシャレな雰囲気

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    君津市在住の書家・幕田魁心氏の作品が展示されている

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    蔵ごとに代表銘柄が展示されている

君津市・富津市内にある以下の酒蔵の日本酒が展示されている。

1624年に創業し、千葉県最古の酒蔵と言われる「吉崎酒造」は優しく柔らかい口当たりの日本酒が特徴。

「須藤本家」は「酒造りは事業にあらず、家業なり」を家訓に持つ酒蔵。代々受け継がれてきた技術と新しい酵母のお酒の開発や先進的な設備の導入で、伝統×革新の酒造りを行う酒蔵だ。

明治時代初期に創業した「森酒造」は愛宕山の伏流水を敷地内の浅井戸からくみ上げ、千葉県産の酒米を使った酒造りを行っている。軟水の伏流水により柔らかですっきりとした味わいに仕上がった「飛鶴」が代表銘柄。

酒造りにおいて洗米と蒸米が重要な工程と考える「藤平酒造」は、洗米は秒単位で吸水管理を行い、蒸米工程では五感を研ぎ澄まし香りと蒸気量を調整している。代表銘柄は「福祝」。

1866年創業の「宮崎酒造」では「うまい酒は白い米から」という信条が代々の当主に受け継がれてきた。

「和蔵酒造」では「竹岡蔵」と「貞元蔵」の両蔵で日本酒と本格焼酎・SAKEカクテルの製造機能を分担。「基本に忠実であること」「手間を惜しまないこと」を信念にしつつ、微生物と向かい合う姿勢が特徴。

「小泉酒造」は自社の田んぼで酒米の「五百万石」を栽培し、さらに鹿野山水系の良質な水を使うこだわりが。代表銘柄の「東魁盛(とうかいざかり)」は200年余りの歴史を持つ。

そんな解説を見ているうちに、その味を確かめたくなった。「酒ミュージアム」では有料試飲が可能。一覧表に書かれた地酒の中から1種試飲する場合は200円、3種類なら600円。3種類の試飲にはペットボトルに入った「生きた水久留里(150円)」がついてくるのでお得。オーダー表にチェックを入れたらカウンターに持参し、料金を前払いしよう。

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    15種類の中から一度に3種まで試飲することができる

筆者が試飲した3種類は、どれも初めて飲む味わいでびっくり! 軟水というからもっとライトな口当たりをイメージしていたものの、個性的な渋さがある。千葉の日本酒らしさなのだろうか。

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    それぞれに酒蔵の名前と銘柄名、日本酒度と酸度が記載されているので飲み比べもはかどる

3種類それぞれ特徴があり、その違いが面白かった。スタッフの方も「天乃原は皆さんその特徴的な味に驚かれますね」と話していた。

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    試飲して気に入った日本酒はそのまま購入できる

ミュージアムを訪れたらぜひ試飲して自分の好みの日本酒を見つけてみてほしい。和らぎ水には「平成の名水百選」に選ばれた美味しい水を贅沢に堪能しよう。