帝国データバンクは2月7日、人手不足倒産における「従業員退職型」に関する調査・分析結果を発表した。調査期間は2022年~2023年2月時点まで、調査対象は負債1,000万円以上の法的整理企業。

「賃上げできず倒産」する企業の増加を懸念

  • 「従業員退職型」人手不足倒産件数推移

2022年に判明した人手不足倒産140件のうち、従業員や経営幹部などの退職・離職が直接・間接的に起因した「従業員退職型」は57件。前年(46件)と比べて11件増え、人手不足感がピークに達した2019年以来、3年ぶりに増加した。

人手不足倒産に占める「従業員退職型」の割合は40.7%と、前年(41.4%)に続いて高い水準となった。

業種別に「従業員退職型」人手不足倒産の割合をみると、建設業が最も高く50.0%。同調査によると、「設計者や施工監理者など、業務遂行に不可欠な資格を持つ従業員の離職により、事業運営が困難になった企業などが目立つ」という。以降、小売業が40.4%、サービス業が39.5%、製造業が38.5%、卸売業が37.5%と続いた。

2022年から続く値上げラッシュを受けて、労働者からは賃上げを求める声が強まっているが、同調査では「賃上げしたくても収益力に乏しく『無い袖は振れない』中小企業も多い」と指摘。その上で「厳しい経営に嫌気がさして役員や従業員が退職したケースもあり、動向は二極化の様相を呈している。転職市場などを筆頭に、賃上げによって良い人材を高給で囲う動きが強まるなか、満足に賃上げされないことを理由に従業員が辞めることで経営に行き詰まり、倒産する中小企業の増加が懸念される」と分析している。