「住民税非課税世帯」には、さまざまな優遇措置があります。最近では、電気、ガス、食料品などの高騰を受けて、政府による緊急支援給付金がありました。住民税非課税世帯とは、世帯の収入がない、あるいは少ない世帯を指しますが、貯蓄がたくさんあっても該当するのか気になるところでしょう。そこで、住民税非課税世帯になる条件を改めて確認したいと思います。さらに、貯蓄額が影響する制度についてもお伝えします。

  • え、1億円の貯蓄があっても住民税非課税世帯になるの? その対象条件とは

    「住民税非課税世帯」とは - 1億円貯蓄があっても該当するの!?

■住民税非課税世帯の条件

住民税非課税世帯は、「生計を一にしている家族全員の住民税が非課税である世帯」です。住民税はその年の1月1日に日本国内に住所がある者に対して、前年の所得を基準に課税されます。

住民税には非課税制度が設けられていて、「所得割」「均等割」それぞれに非課税となる条件がありますが、住民税非課税世帯は両方が非課税である必要があります。

●所得割・均等割とも非課税になる条件
ア. 生活保護を受けている人
イ. 障害者や未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下の人
ウ. 前年の合計所得金額が市区町村の条例で定める額以下の人

<東京23区内の場合>
・同一生計配偶者または扶養親族がいる場合
35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下

・同一生計配偶者および扶養親族がいない場合
45万円以下

前年の合計所得金額の基準は市区町村によって異なりますが、条件はこれだけなので、東京23区でひとり暮らしをしている(扶養家族がいない)人であれば、所得が45万円以下であれば、住民税非課税世帯に該当します。

つまり、貯蓄の多いか少ないかは問われないので、前年の所得が基準以下であれば、たとえ1億円の貯蓄があっても、住民税非課税世帯になります。

■貯蓄はあるけど収入がないってどんな人?

貯蓄はたくさんあるのに収入があまりないといえば、どんな人を思い浮かべるでしょうか。現役時代にたくさん稼いで多額の預貯金がある年金生活者は当てはまりそうですね。自営業者などで年金が基礎年金だけの場合は、満額がおよそ80万円なので、公的年金等控除によって、住民税は非課税になります。扶養している配偶者がいれば、年金収入が211万円以下(※)であれば、住民税が非課税になります。

※65歳以上で収入は年金のみ、東京23区などの1級地に住んでいる場合

他にも、宝くじで高額当選した無職の人、多額の資産を相続した無職の人などが当てはまります。ちなみに、こうした資産を運用して、利子や配当金、値上がり益などを得れば、それは、利子所得、配当所得、譲渡所得になるので、これらの合計所得金額が基準を超えれば、住民税非課税世帯には当てはまらなくなります。

■住民税非課税世帯の優遇措置

住民税非課税世帯になると次のような優遇措置が受けられます。

・0歳から2歳までの保育料無料
・大学無償化(高等教育の修学支援新制度)
・国民健康保険料の減免
・介護保険料の減免
・介護保険施設の費用の軽減(介護保険の負担限度額認定)
・高額療養費の自己負担額の軽減
・高額介護サービス費の自己負担額の軽減
など

ただし、これらの中には「資産」の要件がある制度もあります。次の項で詳しく見ていきましょう。

■資産の要件がある制度

資産の要件とはどんなものなのでしょうか?

大学無償化(高等教育の修学支援新制度)

高等教育の修学支援新制度には、次のような要件があります。

学生等およびその生計維持者の保有する資産※の合計額が、以下の基準額に該当すること

<基準額>
生計維持者が2人の場合 2,000万円未満
生計維持者が1人の場合 1,250万円未満
※ 対象となる資産の範囲: 現金およびこれに準ずるもの、預貯金ならびに有価証券の合計額(不動産は対象としない)

住民税非課税世帯であっても、2,000万円以上(父母の場合。ひとり親などの場合は1,250万円以上)の貯蓄がある場合は、無償化は受けられないことになります。

介護保険料の減免

65歳以上の介護保険料の減免は、保険料の支払いが困難な場合に、一定の要件のもとに、減免を受けられる制度です。低所得者向けの減免では、「資産等を活用してもなお生活に困窮していること」が条件となるので、1人あたりの預貯金額が200万円以下などの基準があります(市区町村によって、基準額は異なります)。

介護保険施設の費用の軽減(介護保険の負担限度額認定)

特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの介護保険施設を利用する際に、住居費と食費の負担が軽くなる制度が介護保険の負担限度額認定制度です。これは、ショートステイでも利用できます。この制度は住民税非課税世帯が対象となっていますが、所得以外に預貯金の基準が設けられています。

負担限度額が認定されるには、次の条件にすべて当てはまる必要があります。

1. 本人、配偶者、同世帯者の全員が住民税を課税していない
2. 所得と預貯金が以下表の基準に当てはまる

  • 住民税非課税世帯の優遇措置には資産の要件がある?

    表:負担限度額認定のための所得と預貯金条件 / 出所:厚生労働省「介護保険施設における負担限度額が変わります」をもとに筆者作成

預貯金とは、預貯金(普通・定期)、有価証券(株式・国際・地方債・社債など)、金・銀などの貴金属(購入先の口座残高によって直評価額が容易に把握できるもの)、投資信託、現金などです。

住民税非課税世帯であっても、預貯金が基準よりも多ければ、負担限度額認定は受けられません。そうなると、住居費、食費の負担軽減はなくなります。また、住居費と食費は介護サービスには含まないので全額自己負担となります。

しかし、介護サービスを受けたときの自己負担割合は1割であり、また自己負担額が高額になっても、高額介護サービス費によって、住民税非課税世帯は上限額が低く設定されているので、負担を軽くできるのです。

■まとめ

住民税非課税世帯となるための条件は「所得」であるため、「資産」が多くても「所得」が少なければ、住民税非課税世帯になることができます。つまり、"お金持ちの住民税非課税世帯"は存在するわけです。なんとも腑に落ちない話ですが、今後は介護保険の預貯金基準のように、その他の制度にも資産の要件が加わることは十分考えられます。支援が必要なところに適切な支援が行き届くことを願います。