住宅街の路地裏に佇むお店、看板のないお店など、いわゆる“隠れ家”と言えるような飲食店が増えてきた。2022年11月26日、西麻布にオープンしたブティック&カフェ「MONSTAR COCO(以下、モンスターココ)」もまさにその一つだろう。

■徳島のショップやお取り寄せでしか買えなかったスイーツや人気商品をブティックで販売

店名の「MONSTAR」は、怪物にあらず。フランス語で「MON STAR」は、わたしの星=生産者や作り手という意味だ。「モンスターココ」とは、生産者・作り手を「ここから」紹介していきたいという願いを込めて名付けられている。

お店があるのは、ミシュランガイドと並び、強い影響力を持つフランス発祥のレストランガイド『ゴ・エ・ミヨ2022』に選出された⻄麻布のフランス料理店「フレンチモンスター」の2階。マンションの一室にも思われる扉を開けると、カラフルな絵画とともにブティックが現れる。

ブティックには、フレンチモンスターの“お持たせ”で人気となった、徳島の鳴門金時を使用したクリームサンド「月へ鳴門へ」(2本×5袋入り1,944円)のほか、徳島由来のスイーツやアイテムが並ぶ。

「月へ鳴門へ」は、生産農家・喜瀬氏のお芋を、じっくり高温のオーブンで焼きペーストにして、自家製の生キャラメルなどでまろやかなクリームにし、手焼きのサブレでサンドしたフランス菓子。2018年瀬戸内おみやげコンクール最優秀賞も受賞している。

鳴門最古の酒蔵・本家松浦酒造の大吟醸の酒粕、阿波の和三盆、そしてイタリアのチーズ・グラナパダーノの三重奏が後を引く「NARUTO DAI2 BOUTON」(20個入り1,404円)も見逃せない。コロンと丸いボタンのようなフォルムの大吟醸の酒粕のサブレで、お茶菓子としてだけでなくシャンパンにも合うことから、JAL 国内線ファーストクラスにも採用されている一品だ。

「フレンチモンスター」の食後のお茶としても提供されている「フレンチモンスター阿波番茶」(1袋2,900円)は、木の樽を使った伝統的な製法を今でも継承している宮口園によるもの。ほのかな甘みと酸味が特徴だ。

このほか鳴門の海塩、鳴門の粟田漁港で摘んだわかめ、そして新月をイメージしてブレンドしたオーガニックのアロマ5種を配合したアロマソルト「Amour de Monstar 鳴門の新月」(150g3,300円)や、工房ふた藍の藍染めテーブルウェア、工房ささの器など、徳島ゆかりの品が並ぶ。

■隠し扉の向こうに広がる大人のためのラグジュアリーカフェ

ブティックから「さて、カフェへ入ろう」と入口を探すが特にない。あれこれ周りを見回していると、「どうぞ」という声とともにブティックの奥の商品棚が扉となって動き出し、隠されていたもう一つの部屋が現れた。

天井にはシャンデリア吊るされ、ヨーロピアンテイストのアンティークチェストやチェア、テーブルが配置されたカフェは、まるで中世ヨーロッパのお屋敷を思わせる。13〜18時にカフェとして営業しており、全8席の予約制というプレミアシートだ。

  • 「パスカードM」1,650円と「グラスシャンパーニュ Delamotte Brut」1,700円

このカフェの名物は、フレンチモンスターのシェフ・小山健太郎氏のスペシャリテである「パスカード」。シェフがフランスで修業をしていたオーベルニュ地方の郷土料理だ。注文後に、焼き立てを提供してくれる。ふんわり丸いフォルムの少し塩気のある甘い生地で、表面は香ばしく、中はフレンチトーストのようなフワシュワ食感が印象的。トリュフオイルの芳しい香り、小さく刻んだネギがアクセントに入っていて、スイーツとしてだけでなく食事としても楽しめる。実際、現地ではパスカードの中にサラダやお肉を入れたり、さまざまな食べ方がなされているようだ。この「パスカード」にぴったりなのがシャンパンや白ワイン。カフェでありながら、お酒の品揃えも豊富で、シャンパンとパスカードで優雅な昼下がりを過ごすこともここでなら叶う。

  • 「フレンチモンスターカヌレ」1 個275円と「カプチーノ」880円

コーヒーと合うスイーツを嗜みたいなら「フレンチモンスターカヌレ」もおすすめだ。「フレンチモンスター」の食後の小菓子としても提供されている、コーヒーとトンカ豆の香りがする小ぶりのカヌレだ。毎朝シェフが焼き上げる作り立てのカヌレはテイクアウトも可能。外側はカリッと香ばしく、中はしっとりとした生地感で、コーヒーとトンカ豆のオリエンタルな香りが鼻をくすぐる魅惑の一品だ。

フレンチモンスターのスイーツに合わせてブレンドしたスペシャリティコーヒーの「郷コーヒー」は、コロンビア南部地方にある海抜 1,950メートルの地で育てたカスティーヨ豆をメインで使用している。寒すぎて生きるか枯れるか限界ぎりぎりの過酷な自然環境が、甘いコーヒー豆を育てるそう。キャラメルやチョコレート、カカオのような甘い香りと柑橘系の酸味があり後味の甘さやクリーンさが特徴だ。コーヒーやカプチーノは、エスプレッソマシーンで 1 杯ずつ抽出してくれる。

このほか、徳島のすだちの最盛期にひとつずつ皮を剥き、タネを取り漬け込んだシロップを使った、完全ホームメイドの「すだちレモネード」や「フレンチモンスター阿波番茶」、ブティックのお菓子なども味わえる。

■徳島県鳴門市にあるお菓子工房&カフェ「フレンチモンスター 瀬戸内フードアート」でスイーツを生産

今回「モンスターココ」がオープンしたのは、お持たせとして人気となった「月へ鳴門へ」などの銘菓や、徳島の素敵な品々をより身近に提案できる場所を作りたかったからだとオーナーの錦織氏。ブティックで販売されているスイーツたちは、2020 年に徳島県鳴門市にオープンしたお菓子工房&カフェ「フレンチモンスター瀬戸内フードアート」で作られたもの。「モンスターココ」は、鳴門・⻄麻布のレストラン、両店のエッセンスを楽しめるブティックなのだ。

「レストランより日常的に、鳴門へ旅行するより手軽に」をモットーにこれまでより多くの人に、故郷・徳島をはじめ、オーナーやシェフたちが旅する中で出合った素敵なもの、「フレンチモンスター」のセンスを伝えていく場所に「モンスターココ」がなれたら、と錦織氏は話す。

ゆくゆく夜は常連客をメインに会員制のサロンとしての営業も予定している「モンスターココ」。気の利いた手土産を購入するブティックとして、港区周辺で静かに腰を据えてお茶ができる大人のカフェとして重宝しそうだ。